概要

Abstract Standing Sculpture(抽象自立彫刻)は、ポール・エヴァンスが1960年代に制作した自立型の彫刻である。溶接鋼とブロンズを用い、トーチによる切断と溶接で構築される。

家具と異なり用途に応じた寸法の制約がないため、形状は自立に必要な条件だけで決まる。

特徴とコンセプト

ブルータリスト美学の探求

溶接痕や金属の切断面をあえて露出させ、制作の過程そのものを視覚要素として取り込んでいる。素材の性質を隠さずに提示するこの手法は、ブルータリズムの考え方に沿ったものである。

抽象形態と空間構成

直線的な鋼材の骨格に、曲線を描くブロンズが組み合わされる。塊としてつくれば内部は見えないが、部材のあいだに空隙を残せば向こう側が透ける。見る角度によって、重なり合う部材の関係が変わる。

工業技法の転用

溶接やトーチによる切断は、もとは工業の接合と加工の技法である。これを造形の手段として用い、機能から離れた形をつくっている。

技法と素材

溶接技術の応用

溶接を主要な技法として用い、厚みや特性の異なる金属を接合して三次元的な構造を組み上げている。溶接ビードは接合部にとどまらず、表面のテクスチャーを形づくる要素としても働く。

トーチカットによる切断は、金属の縁に不規則で有機的な質感を残す。高温で金属を部分的に溶融させるため、機械加工では得られない表情が生まれる。計画的な構成と即興的な操作の両方を可能にする手法である。

鋼材とブロンズの対比

骨格をなす溶接鋼は、作品に強度と安定性を与えるとともに、工業的な表情をもたらす。これに対しブロンズは、鋼材の硬さに柔らかさと温かみを添える。鋳造または板材として加工されたブロンズは、より流動的な形態を可能にし、作品に視覚的な変化を与える。

表面処理と仕上げ

化学的なパティネーション、研磨、着色顔料の適用など、複数の表面処理が用いられている。酸による処理は金属表面に色彩の変化をもたらし、自然の風化に近い効果を人為的に与える。パティネーションは経年でも表情を変えるため、時間の要素が作品に組み込まれている。手作業の工程のため、各作品はそれぞれ固有の表情を持つ。

部分的な研磨や金箔の適用は、光の反射と吸収の対比を生む。マットな面と光沢のある面の対比が、作品の立体感と空間での存在感を高める。

評価と影響

同じ溶接の技法は家具にも用いられる。スタラグマイト・ベース・ダイニングテーブル(溶接鋼鉄ベース)では天板を支えるベースとして、ブルータリスト・ウォールスカルプチャー(溶接鋼)では壁面に取り付ける面として構成される。本作は用途を持たないため、自立に必要な条件だけで形が決まる。

4館の公開データでは、本作の収蔵は確認できていない。

基本情報

作品名 Abstract Standing Sculpture
デザイナー ポール・エヴァンス(Paul Evans)
分類 自立彫刻
制作年代 1960年代
素材 溶接鋼、ブロンズ
技法 溶接、トーチカット、パティネーション
様式 ブルータリズム、抽象表現主義
制作地 アメリカ(ペンシルベニア州ニューホープ/ニュージャージー州ランバートビル)