Molteni&C(モルテーニ)
Molteni&C(モルテーニ)は、1934年にイタリア北部、ブリアンツァ地方のジュッサーノで創業した家具ブランドです。小さな工房から始まり、90年以上にわたって家具づくりを続け、現在は世界各国で展開する国際的なメーカーへと成長しました。技術的に難度の高い構造を実現する開発力に定評があり、システム収納からテーブル、ソファまで幅広い製品を手がけています。1994年と2020年には、イタリアデザイン界の賞であるコンパッソ・ドーロのキャリア賞を受賞しています。
ブランドの特徴
モルテーニの家具に共通するのは、都会的で端正な造形です。特に収納家具では、取っ手やフレームといった要素を抑え、収納されるものを引き立てる「壁を構成する装置」としてのアプローチを確立しました。ガラス扉のフレームを細く保ち、薄い棚板で広いスパンを支えるといった構造上の工夫が、すっきりとした見た目を支えています。
テーブルの天板を薄く、チェアの脚を細く仕上げるなど、装飾を加えるのではなく要素を削ぎ落とすミニマルな方向性が、モルテーニのデザインの特徴です。
ブランドヒストリー
創業から工業化へ(1934〜1960年代)
1934年、アンジェロ・モルテーニ(1912年生まれ)が、家具産地として知られるジュッサーノで家具工房を立ち上げました。手作業による家具製作から始まった工房は品質で評判を集め、1950年代には従業員が60人を超える規模へと成長します。1955年には、スイス人建築家ヴェルナー・ブレイザーが設計したチェストが、第1回カントゥ国際家具コンクールで一等賞を獲得し、モダン家具への転換点となりました。1961年、アンジェロ・モルテーニは14社とともにミラノサローネ国際家具見本市の創設に参加します。1968年には、ルカ・メダによる収納ユニット「Iride(イリデ)」を発表し、クラシックからモダンへの転換を本格化させました。
システム収納と国際展開(1970〜1990年代)
1972年には、ルカ・メダによるシステム収納「505」が誕生します。「壁を構成する装置」として開発されたこの収納システムは、以後50年以上にわたりアップデートを重ねながら生産が続いています。1970年代にはアフラ&トビア・スカルパ夫妻との協働が始まり、約30年にわたって家具や建築のデザインを手がけました。1979年には高品質キッチンブランド「Dada(ダーダ)」がグループに加わります。1994年には、イタリア家具文化の主要な担い手としての評価を受け、コンパッソ・ドーロのキャリア賞を受賞しました。
グローバル展開と現代(2000年代以降)
2000年代には、パトリシア・ウルキオラ、ロドルフォ・ドルドーニといったデザイナーとの協働が本格化しました。2012年のミラノサローネでは、20世紀イタリアデザインの巨匠ジオ・ポンティの家具を限定生産する「ヘリテージコレクション」を発表し、ポンティの遺族と独占契約を結びました。2016年4月には、ベルギーの建築家・デザイナー、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンがクリエイティブディレクターに就任。2020年には二度目のコンパッソ・ドーロ(キャリア賞)を受賞し、2024年に創業90周年を迎えました。
主要な製品
505システム収納(1972年〜)
ルカ・メダが手がけたモルテーニを代表するシステム収納です。扉、引き出し、シェルフなど多様なパーツを組み合わせ、幅・奥行き・高さを選んで空間に合わせられます。仕上げは木材、塗装、ガラス、レザーなどから選択でき、自由度の高さが特徴です。2021年には、ニコラ・ガリツィアのデザインによる「505 UP」へとアップデートされました。
ジオ・ポンティ ヘリテージコレクション
ジオ・ポンティの遺産を継承するコレクションです。1950年代に構想されながら量産化されなかった家具を、現代の技術と素材で再現し、限定番号付きで提供しています。マンハッタンのタイム&ライフ・ビルのためにデザインされたD.859.1 テーブル、カラカスのヴィラ・プランチャートのために手がけられたD.154.2 アームチェアのほか、D.555.1 テーブル、D.357.1 ブックケースなどが含まれます。
その他のコレクション
このほか、フォスター・アンド・パートナーズによる「Arc」テーブル、パトリシア・ウルキオラによる「Diamond」テーブル、ロドルフォ・ドルドーニによる「Chelsea」ソファ、ワードローブシステム「Gliss Master」など、住空間を構成する幅広い製品を展開しています。
主要デザイナー
- Vincent Van Duysen(ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン)
- 2016年よりモルテーニとダーダのクリエイティブディレクターを務めるベルギーの建築家・デザイナー。抑制の効いたエレガンスを特徴とし、ブランド全体のイメージと製品開発を統括しています。
- Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)
- スペイン出身のデザイナーで、モルテーニと長年にわたり協働しています。「Diamond」テーブルをはじめ、収納家具やテーブルなど多くの製品を手がけ、東京の旗艦店のインテリアデザインも担当しました。
- Rodolfo Dordoni(ロドルフォ・ドルドーニ)
- ミラノ生まれの建築家・デザイナー。「Chelsea」ソファをはじめ、ダイニングやベッドのコレクションを手がけました。Artemide、Cappellini、Minottiなど多数のブランドでアートディレクションも担ってきました。
- Luca Meda(ルカ・メダ、1936-1998)
- ウルム造形大学に学んだデザイナー。1968年の収納ユニット「Iride」、1972年のシステム収納「505」など、モルテーニのモダン化を支えた重要な製品を残しました。
- Gio Ponti(ジオ・ポンティ、1891-1979)
- 20世紀イタリアデザインの巨匠。モルテーニは遺族との独占契約により、ポンティがデザインした家具を「ヘリテージコレクション」として展開しています。
- Afra & Tobia Scarpa(アフラ&トビア・スカルパ)
- イタリアを代表するデザイナー夫妻。1970年代から約30年にわたりモルテーニと協働し、家具や建築のデザインを手がけました。
このほか、フォスター・アンド・パートナーズ、アルド・ロッシ、ジャン・ヌーヴェル、ロン・ジラッド、ヴェルナー・ブレイザー、伊藤寧彦らが、モルテーニの製品開発に関わってきました。
モルテーニグループ
モルテーニは、分野ごとに4つのブランドを擁する家具グループです。
- Molteni&C(モルテーニ)
- 住宅用家具を扱う中核ブランド。システム収納、テーブル、チェア、ソファ、ベッドなど住空間全体をカバーします。
- Dada(ダーダ)
- 1979年にグループに加わった高品質キッチンブランド。
- Unifor(ユニフォ)
- 1969年創業のオフィス家具ブランド。シリーズ製品とカスタム家具を提供しています。
- Citterio(チッテリオ)
- オフィス家具とパーテーションシステムを扱うブランド。
モルテーニグループは、創業以来ジュッサーノに生産拠点を置き、原材料の調達から最終製品までイタリア国内で一貫生産する数少ない家具グループの一つです。
品質とサステナビリティ
モルテーニは、低CO2排出、水性塗料の使用、FSC(森林管理協議会)認証材の使用、再生可能エネルギーの活用など、環境に配慮したものづくりに取り組んでいます。ブリアンツァ地方に受け継がれてきた木工の伝統技術と、最新の生産技術を組み合わせている点も特徴です。各製品には、正規品であることを示すカードが付属します。
ミュージアムとショールーム
本社敷地内のMolteni Museum(モルテーニ・ミュージアム)は、グループの歴史を伝える常設展示空間です。2015年にミラノのガッレリア・ダルテ・モデルナ(ミラノ近代美術館)で開催され、ジャスパー・モリソンがキュレーションを担当した創業80周年記念展の資料を中心に、製品やプロトタイプ、アーカイブを収蔵しています。
モルテーニは、ロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、ミラノなど世界の主要都市に旗艦店と専門店を展開しています。東京の旗艦店は、パトリシア・ウルキオラの設計により、和の要素とイタリアンモダンを組み合わせた空間となっています。
基本情報
| ブランド名 | Molteni&C(モルテーニ) |
|---|---|
| 設立 | 1934年 |
| 創業者 | Angelo Molteni(アンジェロ・モルテーニ)、Giuseppina Molteni(ジュゼッピーナ・モルテーニ) |
| 本社所在地 | Via Rossini 50, 20833 Giussano (MB), Italy |
| 主要製品 | システム収納、テーブル、チェア、ソファ、ベッド、ワードローブ |
| グループブランド | Molteni&C(家具)、Dada(キッチン)、Unifor(オフィス家具)、Citterio(オフィス家具・パーテーション) |
| 主要受賞歴 | コンパッソ・ドーロ(キャリア賞・1994年、2020年) |
| クリエイティブディレクター | Vincent Van Duysen(ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン) |
| 公式サイト | https://www.molteni.it/ |