概要
ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン(1962年生まれ)は、ベルギーの建築家・デザイナーである。1989年にアントワープで事務所を開き、住宅や店舗の設計と並行して家具を手がけてきた。石灰岩、木、革といった経年で表面が変わる材料を選び、部材の見付けを細く保つ構成をとる。2016年からモルテーニのクリエイティブディレクターを務めている。
バイオグラフィー
1962年8月13日、ベルギー・ロケレンに生まれた。ゲントのシント・ルーカス建築学校で建築を学び、1985年に学位を得ている。
卒業後はミラノでエットレ・ソットサスの事務所に勤め、その後アントワープでジャン・デ・メルダーのもとで働いた。1989年、27歳でアントワープに自身の事務所を設立している。
住宅、店舗、ホテルの設計を手がけながら、家具の設計も並行して行った。イタリアのラ・リナシェンテやフェラガモの店舗などを担当している。
2016年、イタリアの家具メーカー、モルテーニとダダのクリエイティブディレクターに就任した。2018年から2020年まではクヴァドラット傘下のサフコのアートディレクターも務めている。フロス、B&Bイタリア、ケッタルとも協働してきた。
デザインの思想と方法
ヴァン・ドゥイセンの設計は、要素を足すのではなく減らす方向で進む。建築と家具のいずれでも、必要な機能を保ったまま見えるものを減らし、残った面と稜線の比率で全体を決める。この進め方をとると、材料の表面と接合部の精度が結果を左右することになる。
見えるものを減らす
収納の把手を面の切り欠きに置き換え、扉の枠を最小限にとどめ、脚の断面を細くする——こうした処理はいずれも、部屋の中で目に入る線と面の数を減らす。減らした結果として残るのは、材料そのものの表面と、部材同士が接する稜線である。
経年で変わる材料を選ぶ
ベルギー産の青みがかった石灰岩、無垢の木、革は、いずれも時間の経過とともに表面が変化する。装飾を加えない構成では、この変化が唯一の変数になる。新品の状態を最良とせず、使い込まれた状態を前提とする材料の選び方である。
建築と家具を同じ寸法体系で扱う
家具は建築的な視点から構成され、部屋の壁面や開口と同じ比率で分割される。収納の高さ、扉の分割、棚の奥行きが、部屋の寸法から導かれるため、置いたときに独立した物として浮かない。設計を一つの事務所で扱うことで成立する進め方にあたる。
光を前提として面を決める
面の凹凸や仕上げの粗さは、光の当たり方によって見え方が変わる。装飾を持たない構成では、この差が表情の大半を担う。ヴァン・ドゥイセンは自然光の入り方を先に決め、それに応じて面の仕上げを選ぶという順序をとる。
モルテーニの歴史や他の製品について詳しくはモルテーニ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
グリス・マスター(モルテーニ)
壁面を構成する収納システムである。扉の分割と面の割付を部屋の寸法に合わせ、把手を持たずに開閉する。収納を家具としてではなく壁の一部として扱う構成にあたり、モルテーニでのクリエイティブディレクションの方向を示している。
パブロ アームチェア(2019年、B&Bイタリア)
座面と背もたれの体積を確保しながら、脚部を細く抑えた椅子である。座面の下に隙間が残るため、体積の割に床が見通せる。快適さに必要な厚みと、部屋での占有感を分けて扱うという処理が現れている。
ジロ コレクション(ケッタル)
縄を縫い合わせて面をつくり、それ自体を椅子の形とする屋外家具である。フレームに張るのではなく、縄の集合が構造と表面を兼ねる。スコットランドのオークニー諸島に伝わる編みの椅子を参照している。
オブリーク(2020年、フロス)
レンズを組み合わせ、細い開口から指向性の高い光を出す照明である。器具の断面を小さく抑えられるため、天井や壁への取り付けが目立たない。照明器具を空間から消すという方向にあたる。
ホテル・オーガスト(2019年、アントワープ)
19世紀の修道院を改修したホテルである。既存の煉瓦造の躯体と開口を残し、内部の仕上げと什器を入れ替えた。新旧の要素を対比させるのではなく、同じ材料の系統でそろえることで連続させている。
評価と影響
ヴァン・ドゥイセンは一般に、ベルギーの建築とデザインを国際的な文脈に置いた設計者の一人と評価されている。ジョン・ポーソンやデイヴィッド・チッパーフィールドと並べて語られることが多いが、材料の触感を残す点で区別される。
2016年からのモルテーニでのクリエイティブディレクションは、製品の設計だけでなく、製品群全体の構成と見せ方を含む役割にあたる。屋外家具の系列を新設するなど、扱う範囲の拡張にも関わった。
建築、内装、家具を一つの事務所で扱う体制は、ベルギーの設計事務所の形式としても参照される。住宅の改修から店舗、ホテルまで、規模を問わず同じ方法を適用している。
受賞・収蔵
受賞
- フランドル文化賞 デザイン部門
- ベルギー最優秀デザイナー賞
- ヘンリー・ヴァン・デ・ヴェルデ賞
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 2016年〜 | 収納 | グリス・マスター | Molteni&C |
| 2016年〜 | キッチン | VVD キッチン | Dada |
| 2019年 | 椅子 | パブロ アームチェア | B&B Italia |
| 2019年 | 建築 | ホテル・オーガスト | アントワープ、ベルギー |
| 2020年 | 照明 | オブリーク | Flos |
| 2020年代 | 屋外家具 | ジロ コレクション | Kettal |
| 2020年代 | 屋外家具 | タイムアウト コレクション | Molteni&C |
| 2025年 | 屋外建築 | パビリオン V | Kettal |
プロフィール
| 生年 | 1962年8月13日 |
|---|---|
| 出身地 | ベルギー・ロケレン |
| 国籍 | ベルギー |
| 活動拠点 | アントワープ |
| 分野 | 建築、インテリア、家具、照明 |
| 主な協働ブランド | Molteni&C、Dada、B&B Italia、Flos、Kettal、Serax |
Reference
- Vincent Van Duysen Architects(公式)
- https://www.vincentvanduysen.com/
- Vincent Van Duysen | Molteni&C
- https://www.molteni.it/en/designers/vincent-van-duysen
- Vincent Van Duysen | B&B Italia
- https://www.bebitalia.com/en/designers/vincent-van-duysen
- Vincent Van Duysen | Flos
- https://flos.com/designers/vincent-van-duysen/