ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン:純粋さと本質を追求するベルギーの巨匠

ベルギーを代表する建築家・デザイナー、ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン(1962年生まれ)は、30年以上にわたるキャリアにおいて、建築、インテリア、プロダクトデザインの境界を越えた卓越した作品群を生み出してきた。純粋さと本質への探求、触覚的な素材の使用、そして空間における人間の感覚的体験を中心に据えた彼のデザイン哲学は、現代デザイン界において独自の地位を確立している。Molteni&Cのクリエイティブディレクター、Flos、B&B Italia、Kettalなど世界的ブランドとの協働を通じて、ヴァン・ドゥイセンは時代を超越した美しさと機能性を兼ね備えた空間と家具を創造し続けている。

生涯とキャリアの軌跡

形成期:ベルギーからミラノへ

ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンは1962年、ベルギーのロケレンに生まれた。ゲント(ヘント)のシント・ルカス建築学校で建築を学び、1985年に学位を取得。卒業後、彼はデザインと建築の国際的中心地であるミラノへと向かい、1986年から1987年にかけて、ファッションデザイナーのチンツィア・ルッジェーリや、後にメンフィス・デザイン・グループの共同創設者となるアルド・チビックのもと、伝説的なエットーレ・ソットサス・アッソチアティ・スタジオで働いた。

ミラノでの経験は、若きヴァン・ドゥイセンに計り知れない影響を与えた。彼は後に、もし建築を学んでいなければファッションのキャリアを追求していただろうと語っている。デザインと芸術の交差点、そして物質性への深い関心は、この時期に培われたものである。ミラノでの修行の後、彼はベルギーに戻り、ブリュッセルでジャン・ジャック・エルヴィに、アントワープではジャン・ド・ムルダーに師事した。エルヴィからは「生活の芸術」と人間のためのデザインを、ド・ムルダーからは快適さと幸福を損なうことのないエレガントな本質性を学んだ。

独立と確立:1989年からの歩み

1989年、27歳のヴァン・ドゥイセンは、アントワープに自身の建築・インテリアデザイン事務所「ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセン・アーキテクツ」を設立した。創設当初から、建築とインテリアデザイン、そしてプロダクトデザインの間に明確な関係性を持たせることが、彼のプロジェクト構想の原動力となった。1990年代初頭、ヴァン・ドゥイセンは戦略的に小売店舗デザインのプロジェクトを通じて、自身のプロフィールを確立していった。

イタリアの高級百貨店チェーン「ラ・リナシェンテ」や、ミラノのフェラガモ・ブティックなど、素材の選択と精密なディテールが重要となる店舗デザインにおいて、ジョン・ポーソンやデイヴィッド・チッパーフィールドといった同時代の建築家たちと同様に、控えめでありながら高度に洗練されたプロジェクトを通じて名声を確立していった。事務所は着実に成長を続け、現在では約40名の国際的な協働者を擁し、ベルギー国内のみならず、ヨーロッパ、中東、アジア、アメリカにわたる高級住宅を中心とした建築プロジェクトと、国際的ブランドのためのプロダクトデザインを手がけている。

クリエイティブディレクターとしての役割

2016年、ヴァン・ドゥイセンはイタリアの名門家具ブランドMolteni&CとDadaのクリエイティブディレクターに任命された。これは1990年代のルカ・メダ以来、同ブランド初のクリエイティブディレクター就任であった。彼はブランドの世界的イメージを再構築し、フラッグシップストアやエキシビションスタンドのデザイン、そして多数の新製品を手がけた。ミラノのヴィア・マンツォーニに位置するパラッツォ・モルテーニは、その集大成であり、19世紀末に建てられた歴史的建築物を3000平方メートルにわたって完全に再設計し、アートとデザインコレクターの邸宅を思わせる空間を創り出した。

2018年から2020年5月まで、彼はクヴァドラット傘下のサコのアートディレクターを務め、その後もシニアデザイナーとして協働を継続している。2022年には、スペインの小売ブランドZara Homeとのコラボレーションを開始した。これらの役職は、彼のデザインアプローチが単なる個別のプロジェクトに留まらず、ブランド全体のビジョンと美学を形成する能力を持つことを証明している。

デザインの哲学:本質、沈黙、そして感覚的体験

「引き算」による本質の追求

ヴァン・ドゥイセンのデザイン哲学の核心は、「引き算」のプロセスにある。彼は新しいプロジェクトに取り組む際、家具であれ建築物であれ、過去の経験を基礎としながら、多数の要素から始めて適切なバランスに到達するまで削ぎ落としていく。この手法により、彼のプロジェクトは見かけ上はシンプルで直線的でありながら、過度でない細部へのこだわりによって予期せぬ複雑さを秘めている。それは無機質なミニマリズムではなく、機能性と快適性を犠牲にすることのない本質的で純粋なデザインである。

彼のデザイン言語は、純粋で触覚的な素材の使用によって、清潔でタイムレスなデザインへと変換される。ベルギーの青い石灰岩、木材、石、限定された色彩範囲といった自然素材への偏愛は、彼のベルギー的背景のシンプルさと、世界各地での旅で出会った他文化の原初的形態への魅力から生まれている。「モダンなテクノロジーは付加価値をもたらす場合に使用するが、繊細な素材に感情的な影響を与えるのは手仕事である」と彼は語る。

「視覚的沈黙」の美学

ヴァン・ドゥイセンは、建築が「視覚的に沈黙すべき」と信じている。これは、彼のデザインが過剰な装飾やトレンディな形態によって注目を求めることがないことを意味する。彼の作品はしばしば控えめで、環境にシームレスに溶け込む。その意図は華美であることではなく、調和的で平和な雰囲気を創造することにある。この哲学は、現代文化に見られる混沌とした視覚的刺激とは鋭く対照をなす「高貴なシンプルさ」の追求として表れている。

彼の空間と作品は、光によって形作られ、素材によってモデリングされる形態の純粋さによって高められる。文脈と伝統への敬意を持ちながら、感覚と空間の物理的体験、テクスチャー、そして光が使用者の完全性を中心に据えるアプローチである。機能性、耐久性、快適性がプロジェクトの主要な構成要素であり、美学を伝えることを躊躇しないが、ファッションやトレンドを避ける建築言語を持つ。

空間と人間の親密な関係

ヴァン・ドゥイセンの作品の根底には、建築とデザインが人々が安心できる空間を創造すべきという考えがある。彼は「保護」という概念を重要視しており、「保護は私たち全員が必要とする非常に重要なものであり、それを私の建築とデザインの仕事に翻訳したい」と述べている。この人間中心のアプローチは、彼のすべてのプロジェクトに浸透しており、住宅、オフィス、商業空間のいずれにおいても、使用者が心地よく感じられる親密さと質を優先している。

イギリスの著名なインテリアデザイナー、イルセ・クロフォードは、自身の住宅をヴァン・ドゥイセンが改装した際の経験を次のように表現している。「空間の美しさに感銘を受けるだけでなく、ディテールの記憶と素材の感触によっても感動させられる。」この感覚的体験への配慮こそが、彼の作品を単なる機能的空間から、記憶に残る情緒的な場所へと昇華させているのである。

作品の特徴:素材、形態、光

素材の詩学

ヴァン・ドゥイセンの作品を特徴づける最も重要な要素の一つは、素材への深い理解と詩的な使用である。彼は天然素材、特に木材、石、大理石、革といった触覚的素材を好み、それらを通じて建築環境に触覚的かつ感覚的な体験を創造する。チーク材、ウォールナット、オーク、ベルギーの青い石灰岩といった素材は、彼の作品に繰り返し登場し、温かみと高級感を同時に醸し出す。

B&B ItaliaのPabloアームチェアでは、頑丈なサドルレザーと無垢のオークやウォールナット材を組み合わせ、強さと柔らかさの絶妙なバランスを実現している。Kettalのためのgiroコレクションでは、再生ポリプロピレンロープとチーク材を組み合わせ、伝統的なオークニー椅子の美学を現代のテクノロジーと持続可能性の観点から再解釈している。彼の素材選択は常に審美的判断と技術的解決の両方を満たすものである。

形態と比例の精緻性

ヴァン・ドゥイセンの形態言語は、クリーンなライン、絶妙な比例、そして空間関係の創造によって特徴づけられる。彼は家具とオブジェクトを建築的視点から開発することを選び、形状そのものよりも空間的関係を創造する。彼の家具作品は、建築的プロジェクトを再スケール化した解釈であり、純粋さと本質主義の感覚を提供しながら、触覚的で地に足のついたものである。

Molteni&CのためのElainアームチェアは、わずか2つのパーツ、座面と背もたれから構成されており、それらが一緒になって完全に丸みを帯びた座りたくなるオブジェクトを形成する。Paulソファは、エレガントな比例と安心感のあるラインによって、ヴァン・ドゥイセンの表現的合理性を体現している。彼の多くのデザインは、本質的形態、伝統、あるいはよく知られた名作を参照しながら、それらを現代的レンズを通じて再定義している。

光の操作と空間の知覚

光は、ヴァン・ドゥイセンのデザインにおいて基本的な要素である。彼は「自然光ほど美しいものはない」と語りながらも、暗闇が訪れ人工照明が必要となるとき、それは技術的にも、親密で家庭的で温かい外観を持つ方法でもアプローチできると考えている。Flosとのコラボレーションでは、この哲学が具現化されている。

Infra-Structureシステムはバウハウスの合理主義に触発された建築的照明システムであり、Obliqueランプは超技術的でありながら機能的で、Gustaveテーブルランプは小さく控えめでありながら、独自の斜め配光技術により広範囲を照らすことができる。屋外照明のCastingシリーズでは、酸化ブロンズ、コンクリート、鋳鉄、コーティングされたアルミニウムといった荒々しい素材を使用し、彫刻的で象徴的な作品を創造している。これらの照明デザインは、技術的革新と情緒的タッチを組み合わせ、詩情を持ちながら時に皮肉を込めた光の世界を構築している。

主要代表作品

Pablo アームチェア(2019年)- B&B Italia

Pabloアームチェアは、ヴァン・ドゥイセンがB&B Italiaのために2019年にデザインした作品で、彼のデザイン哲学を象徴する傑作である。その強みは快適性と堅固性の組み合わせにあり、高い審美的・構造的インパクトを生み出している。リラックスした佇まいを持ち、ディテールにおいてシンプルで洗練されたこのアームチェアは、豊かで謙虚な素材、すなわち革と無垢材によって作られている。

手作業で縫製された革のエンベロープが、無垢材の構造によって支えられており、2層の革の間に軽い詰め物を加えることで、物理的・視覚的な快適性を提供している。魅力的な形状は、強調された奥行きと僅かに傾斜した前面によって定義され、小型アームチェアとシェーズロングの間の革新的な出会いを示す、ミリ単位まで調整された新しい比例を提案している。「全体的な言語はラテンアメリカ的なタッチを持ち、伝統的でありながら同時に非常に現代的である」とヴァン・ドゥイセンは語る。2022年には屋外バージョンのPablo Outdoorコレクションが発表され、チーク材を使用した完全な屋外家具シリーズへと発展している。

Giro コレクション(2020年代初頭)- Kettal

Kettalのためのgiroコレクションは、ヴァン・ドゥイセンと同スペインブランドとの最初のコラボレーションであり、伝統と現代性の架け橋となる作品である。このプロジェクトはロープから始まり、素材を異なる方法で使用するというアイデア、すなわちロープを縫い合わせて製品自体の形状を創造するという発想から生まれた。デザインの大きなインスピレーション源は、土着的プロダクトデザインの古典的例であるオークニー椅子であった。

ヴァン・ドゥイセンは過去からインスピレーションを得ながら、現代のテクノロジーを念頭に置き、伝統的なロープの代わりに再生ポリプロピレンロープを使用した。オークニーの伝統と職人技への敬意を持ちながら、Kettalの技術とノウハウを用いて現代的製品へと翻訳している。厚く重ねられたプラスチック製ポリプロピレンロープをねじって縫い合わせた曲線的なエッジは、4色の木製フレームと幅広い生地の選択肢と組み合わされ、あらゆる天候に対応できる自然で持続可能な素材による、快適で歓迎的なアームチェアを実現している。ディテールへの細心の注意、清潔なライン、触覚性によって、室内外両方の環境に溶け込むコレクションとなっている。

Pavilion V(2025年)- Kettal

Kettalとのコラボレーションは、2025年のPavilion Vによって新たな次元に到達した。この屋内外ガーデンルームは、1950年代のアメリカン・モダニズムの柔軟性と機能主義を参照しながら設計されている。モジュラー構造は、アルミニウムの支柱が壁の外側に突き出る庇を支えるというシンプルな構成でありながら、軽やかで視覚的に周囲の庭園に開かれている。

柱間のスペースは、ガラス、ルーバー、カーテン、固体の石器パネル、さらには食器棚、調理器具、暖炉といった機能的要素を含む様々なファサードで埋めることができる。この構造は適応性を持ちながら、常に自然と調和的に共存するよう設計されており、素材選択においてもその理念が貫かれている。建築と自然環境の対話を創造するPavilion Vは、ヴァン・ドゥイセンの空間コンセプトにおける到達点の一つであり、居住空間の境界を拡張する試みである。

照明デザイン - Flos

Flosとのコラボレーションは、ヴァン・ドゥイセンの建築的思考が照明デザインにどのように適用されるかを示す最良の例である。彼の照明作品は、技術的革新と情緒的配慮の融合によって特徴づけられる。

Oblique(2020年)は、革命的なデスクランプとして構想された。Flosが開発した全く新しい技術、LEDとレンズの巧妙な組み合わせが、極めて狭いスペースで非常に明るく束ねられた光線を生み出し、それが照明ヘッドからテーブルへ「斜めに」落ちる。頑丈でコンパクトな構造とタイムレスなデザインを持ち、特許取得済みの強力で制御された非対称光線を生み出し、作業エリアに最適である。ベースには統合されたワイヤレス充電システムがあり、スマートフォンを充電しながらデスクをケーブルの乱雑さから解放する。

Gustave(2023年)は、アドルフ・ロースの象徴的なテーブルランプに触発されたバッテリー式テーブルランプである。技術的すぎず、エレガントでタイムレスな外観を追求し、バッテリーなどの技術的要素を全体的デザインの不可欠な部分として組み込んでいる。比例は寛大で、形状は柔らかい。ランプのヘッドに触れるだけでオン・オフが切り替わる直感的なボタンは、オブジェクトとの触覚的関係を創造する。レストランでも家庭でも、このランプは真のパッセパルトゥーである。

Infra-Structureシステムは、バウハウスの合理主義に触発された建築的照明システムであり、Castingシリーズは屋外用LED照明で、酸化ブロンズ、コンクリート、鋳鉄、コーティングされたアルミニウムといった荒々しい素材で作られ、彫刻作品のような印象的で象徴的な製品である。これらの照明は、庭園、歩道、境界に理想的で、絶対的な独自性を保証する型破りな選択である。

Molteni&Cのための家具とキッチン

2016年のクリエイティブディレクター就任以来、ヴァン・ドゥイセンはMolteni&Cのために多数の作品をデザインしてきた。Gliss Masterキャビネットシステムは完全にカスタマイズ可能で、サイズ、コンパートメント、素材において使用者の正確な仕様に合わせて構成できる。Ribbonベッドは、その名の通り、流れるような形態と洗練されたディテールを持つ。

VVDキッチンは、ブランドの文化的遺産と歴史を基に、精密でタイムレスなデザインを持つ家具とプロジェクトを創造している。2025年には、Lucioコレクションの継続性における小型で回転するアームチェア、エレガントにデザインされたデスク、そしてMolteni&C/Dadaの新しい様式的方向性を示す全く新しいキッチンという3つの新製品が発表されている。

屋外家具への扉を開いたのも、ヴァン・ドゥイセンである。彼が調整したTimeoutコレクションは、モダニズム建築の柔らかな形態に触発された幅広いエレガントな屋外要素を含んでおり、「室内外空間の透過性と透明性のアイデア、光と自然との親密なつながり」を想起させるものである。Landmarkコレクションは、ルカ・メダの1994年の作品Palinfrascaへのオマージュを捧げ、チーク材の本質を独特で現代的な方法で解釈している。

建築プロジェクト

ヴァン・ドゥイセンの建築作品は、住宅から商業施設、ホスピタリティまで幅広いが、すべてに共通するのは、空間の本質的マスタリーと高度に洗練されたディテールである。

Winery VV(2020年、ベルギー・プールス)は、ワイン造りを祝うミニマリストでありながら印象的なデザインで、2021年にミース・ファン・デル・ローエ賞にノミネートされ、最終選考に残った。The Central: Original Store(バンコク、タイ)は、Alexander Wangのロンドン店舗と同様、ブランドの本質を尊重しながら現代的で洗練された空間を創造している。

Hotel August(アントワープ、2019年)は、旧修道院を改装したプロジェクトで、ヴァン・ドゥイセンは歴史的ベルギー建築の神聖な魂を反映しながら現代的モダニズムを織り交ぜた、現代の聖域として創造した。Seraxのためにデザインされた70点の食器セットを含む、すべての要素がオーダーメイドで作られている。JNĉQUOI Beach Club(ポルトガル・コンポルタ)は、木と石といった自然素材をシームレスに組み合わせ、流動的な室内外の移行によって建築を自然環境と統合するというコミットメントを反映している。

功績と業績

受賞歴と栄誉

30年以上のキャリアにおいて、ヴァン・ドゥイセンは数多くの権威ある賞と認知を受けてきた。フランドル文化賞デザイン部門、ベルギー最優秀デザイナー賞、そして最も名誉あるヘンリー・ファン・デ・フェルデ生涯功労賞を受賞している。EDIDAにおいては最優秀インテリアデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、2016年にはベルギーのビエンナーレ・インテリア第25回シルバーエディションでデザイナー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた。

彼の名前は、Architectural Digest誌のAD100調査や、Elle Decor A-Listに複数回含まれており、国際的なデザイン・建築界における最高峰の100人の中に数えられている。2021年、Winery VVはミース・ファン・デル・ローエ賞にノミネートされ、最終選考に残った。2025年には、スペインのED誌から最優秀デザイナー・オブ・ザ・イヤー賞を授与され、「従来の枠を超え、分野を臆せず混合する彼のビジョンとプロジェクト」が評価された。

出版とモノグラフ

ヴァン・ドゥイセンの作品は、長年にわたり数多くの権威ある国際出版物に掲載されてきた。1994年以降、彼のプロジェクトと実現作品は、様々なモノグラフにも取り上げられている。2001年、スペインのGustavo Gili社から最初のモノグラフが出版された。2010年、Thames & Hudson社は「Complete Works」と題したモノグラフを出版し、建築、インテリア建築、デザインを同等に考慮する彼の学際的アプローチに焦点を当てた。

2013年、ポルトガルの出版社A.MAGから選定作品集が発行された。2018年には「Vincent Van Duysen Works 1989-2009」、そして2019年には「Vincent Van Duysen Works 2009-2018」が出版され、後者は著名な建築写真家エレーヌ・ビネとフランソワ・アラールによる写真を収録し、女優ジュリアン・ムーアによる序文が添えられている。2024年には、フランソワ・アラールの写真による「Vincent Van Duysen: Private」が、Rizzoli社から出版され、建築家の住宅への個人的視点を新たに提供している。

主要ブランドとの協働関係

ヴァン・ドゥイセンは、最も権威あるイタリアおよび国際的ブランドと協働している。Molteni&CとDadaのクリエイティブディレクター(2016年~現在)、Flosとの照明デザイン(Infra-Structure、Oblique、Gustave、Castingなど)、B&B Italia(Pabloシリーズ)、Kettal(giroコレクション、Pavilion V)、Poliform(Gastonアームチェア、2008年)、Paola Lenti(Portofinoコレクション)、Mutina(KoseiとRenga)、Fantini(FloraとIcona)、Salvatori(Lui&Leiコレクション)、Serax(Augustコレクション)、Herman Miller(Brabo家具とNessel椅子)、Zara Home(2022年~)との協働など、その範囲は広範にわたる。

評価と影響:タイムレスなデザインの継承者

現代デザイン界における位置づけ

ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンは、現代デザイン界において独自の位置を占めている。ジョン・ポーソンやデイヴィッド・チッパーフィールドといった同時代のミニマリスト建築家たちと比較されることも多いが、ヴァン・ドゥイセンの作品は、ミニマリズムと触覚性、削減の贅沢と素材の昇華という独自のバランスを持っている。彼のアプローチは、北欧の感性、ミニマリストの厳格さ、そして地中海的雰囲気を融合させたものであり、イタリアへの誠実な情熱によって形成されている。

建築史家マルク・デュボワは、「ヴァン・ドゥイセンの作品は、一見すると崇高でありながら豊か、ミニマルでありながら触覚的である」と評している。イルセ・クロフォードは「感覚的生活」というフレーズで彼の作品を表現し、それが世界中で取り上げられた。ヴァン・ドゥイセン自身は、意識せずにスタイルアイコンの地位を獲得したと言われている。彼の控えめな性質、天然素材の使用、限定された色彩範囲が、直感的に彼のシグネチャースタイルとなった。

デザイン哲学の継承と未来への影響

ヴァン・ドゥイセンのデザイン哲学は、一時的なトレンドに抵抗し、タイムレスな価値を追求するという点で、次世代のデザイナーたちに大きな影響を与え続けている。彼が強調する「本質への絞り込み」、「素材の真正性」、「人間中心の空間創造」というアプローチは、持続可能性と長寿命設計がますます重要となる現代において、極めて現代的な意義を持つ。

彼は「デザイナーとして、私は人生の本質的な質問に答えを提供しようと試みている」と語る。この哲学的アプローチは、デザインを単なる審美的・機能的な問題としてではなく、人間存在の質を高める営みとして捉えている。沈黙と精神性を重視し、混沌とした現代世界における「人間的な避難所」を提供するという彼のビジョンは、多くの若手建築家やデザイナーたちの指針となっている。

建築と製品の統合的視点

ヴァン・ドゥイセンの最も重要な貢献の一つは、建築、インテリアデザイン、プロダクトデザインの間の境界を曖昧にし、それらを統合的に思考するアプローチを示したことである。彼の家具作品は建築プロジェクトの縮小された解釈であり、逆に建築プロジェクトは大規模な家具のように人間の身体と親密に対話する。この境界横断的な実践は、現代デザイン教育や実務において、分野を超えた協働の重要性を示す模範となっている。

Molteni&CのクリエイティブディレクターとしてのVan Duysenの役割は、単に個別製品をデザインするだけでなく、ブランド全体のアイデンティティと空間体験を統合的にキュレートすることである。パラッツォ・モルテーニや世界各地のフラッグシップストアにおいて、彼は建築、家具、照明、そして展示方法までを一貫したビジョンで統合し、21世紀のトータルデザインの可能性を示している。

現代性と伝統の対話

ヴァン・ドゥイセンの作品は、歴史を見据えながら未来を見据える姿勢によって特徴づけられる。彼は文脈と伝統への敬意を持ちながら、決してノスタルジックではない。Kettalのgiroコレクションにおけるオークニー椅子の再解釈や、Gustavランプにおけるアドルフ・ロースへのオマージュは、過去の名作を参照しながら、現代のテクノロジーと持続可能性の要求に応えている。

彼のベルギー・アントワープへの忠誠も注目に値する。国際的な成功を収めながらも、彼は「ベルギーの謙虚さと控えめな心持ちが最も快適である」として、事務所をアントワープに置き続けている。この姿勢は、グローバル化した世界における地域的アイデンティティの重要性と、固有の文化的背景がデザインの独自性を生み出すという信念を示している。

作品一覧

年月 区分 作品名 ブランド
2008年 アームチェア Gaston Poliform
2016年 照明 Casting(屋外LED照明シリーズ) Flos
2016年 照明システム Infra-Structure Flos
2018年 セラミックコレクション Kosei Mutina
2018年 セラミックコレクション Renga Mutina
2019年 アームチェア Pablo B&B Italia
2020年 デスクランプ Oblique Flos
2020年 建築 Winery VV Vinetiq(ベルギー・プールス)
2020年代初頭 屋外家具コレクション Giro(アームチェア、ソファ、テーブル) Kettal
2021年 アームチェア Brabo Lounge Herman Miller(Geiger)
2021年 チェア Nessel Herman Miller(Geiger)
2021年 テーブル Brabo Tables Herman Miller(Geiger)
2021年 コレクション Lui&Lei(石材と革のコレクション) Salvatori
2022年 屋外家具コレクション Pablo Outdoor(アームチェア、ソファ、フットレスト、テーブル) B&B Italia
2023年 ポータブルテーブルランプ Gustave Flos
年代不詳 キャビネットシステム Gliss Master Molteni&C
年代不詳 ベッド Ribbon Molteni&C
年代不詳 アームチェア Elain Molteni&C
年代不詳 ソファシステム Paul / Paul New Eco Molteni&C
年代不詳 キッチンシステム VVD Molteni&C / Dada
年代不詳 屋外家具コレクション Timeout Collection Molteni&C
年代不詳 屋外家具コレクション Landmark Collection(Palinfrasca) Molteni&C
年代不詳 サイドテーブル Regent Molteni&C
年代不詳 ラグコレクション Palma / Hedera / Musco Molteni&C
年代不詳 屋外家具コレクション Portofino Paola Lenti
年代不詳 家具コレクション August(Hotel August専用デザイン) Serax
年代不詳 水栓金具 Flora Fantini
年代不詳 水栓金具 Icona Fantini
2025年 屋外パビリオン Pavilion V Kettal
2025年 ソファシステム 新作(未発表) Zanotta
2019年 ホテル Hotel August アントワープ、ベルギー
年代不詳 店舗デザイン Ferragamo Boutique ミラノ、イタリア
年代不詳 店舗デザイン Alexander Wang Store ロンドン、イギリス
年代不詳 店舗デザイン The Central: Original Store バンコク、タイ
年代不詳 ビーチクラブ JNĉQUOI Beach Club コンポルタ、ポルトガル
2016年~ フラッグシップストア Palazzo Molteni ミラノ、イタリア
2024年 フラッグシップストア Palazzo Molteni Tokyo 東京・南青山、日本

Reference

Vincent Van Duysen | Biography - David Village Lighting
https://www.davidvillagelighting.co.uk/designer/Vincent-Van-Duysen/459
Designer Vincent Van Duysen - Herman Miller
https://www.hermanmiller.com/designers/van-duysen/
Vincent Van Duysen | Belgium Architect + Designer - The Aficionados
https://theaficionados.com/journal/belgium/architect-vincent-van-duysen
Vincent Van Duysen, Designer - Archiproducts
https://www.archiproducts.com/en/designers/vincent-van-duysen
Vincent Van Duysen - Molteni&C designer
https://www.molteni.it/us/designer/vincent-van-duysen
Vincent Van Duysen - B&B Italia
https://www.bebitalia.com/en-us/vincent-van-duysen
Vincent Van Duysen | Henry van de Velde Awards
https://henryvandevelde.be/en/awards/19/vincent-van-duysen
Vincent Van Duysen | Awards - Official Website
https://vincentvanduysen.com/press/awards
Vincent Van Duysen | Perennials and Sutherland
https://www.perennialsandsutherland.com/story/vincent-van-duysen-2/
Lamps by Vincent Van Duysen | Flos
https://flos.com/en/us/designers/vincent-van-duysen.html
Milan Design Week 2025: An interview with Vincent Van Duysen - Archiproducts
https://www.archiproducts.com/en/news/milan-design-week-2025-an-interview-with-vincent-van-duysen_104478
Pablo Outdoor by Vincent Van Duysen - B&B Italia
https://www.bebitalia.com/en-us/pablo-outdoor-by-vincent-van-duysen
Giro outdoor seating by Vincent Van Duysen for Kettal - Dezeen Showroom
https://www.dezeen.com/2023/03/29/giro-outdoor-seating-vincent-van-duysen-kettal-dezeen-showroom/
Vincent Van Duysen: Timeless Architecture and Design - Marnois
https://marnois.com/marnois-mag/vincent-van-duysen-architecture-and-design/
Vincent Van Duysen Works 2009–2018 - Thames & Hudson
https://thamesandhudson.com/vincent-van-duysen-works-20092018-9780500021644