概要
ベオリット600は、バング・オルフセンが1970年に発表したポータブルラジオである。設計はヤコブ・イェンセン。薄く横長の筐体に、目盛りを上面へ寝かせたスライド式の選局機構を備える。同社のポータブル機の系列を一新した製品で、1970年に iF 賞とデンマークの ID 賞を受けた。
特徴とコンセプト
横長で薄い筐体
幅36cm、高さ22cm、奥行6cmで、重量は2.55kg。ポータブルラジオとしては幅を大きくとり、そのぶん厚みを削いでいる。スピーカーの開口は正方形で、面の上に非対称に配置される。
持ち手は横に倒すと支えになり、本体を斜めに寝かせて操作面を手前に向けられる。机の上に置いたときと、床や地面に置いたときで姿勢を変えられる。
サンドイッチ構造
中央部はアルミの押し出し材で、前後から2枚の樹脂トレイをはめ込む。トレイは工具なしで外れ、単1形乾電池5本の交換もこの状態で行う。トレイは色違いが用意され、使い手が選べた。
樹脂の表面には細かなテクスチャーが与えられている。光沢のある成形品とは異なる、乾いた手ざわりの仕上げである。
金属球による選局表示
選局位置を示すのは、アルミの押し出し材に彫られた溝を走る金属の球である。溝の内側に落とし込まれ、透明な樹脂の帯で覆われているため、外に飛び出す部分がない。スライダーの内側に仕込んだ磁石が球を引いて動かす。
この仕組みは、砂浜に持ち出す使い方を想定して考えられた。表面に出た樹脂板は砂を噛んで傷つくため、指標そのものを金属の面の内側へ収める方法がとられた。機構はイェンセンの友人でデンマークの KZ 機を設計した技術者、カール・グスタフ・ツォイテンが開発している。
目盛りを横に滑らせて操作するこの形式は、バング・オルフセンによれば1967年のアンプ、ベオラボ5000のために考案されたものである。
受信と接続
FM は87.5から104MHz。イギリス向けは中波と長波を、その他の市場向けは2つの短波帯を備え、短波帯には微調整用のつまみが付く。出力は1.2W以上、周波数特性は50から20,000Hzとされる。
バンド切り替えスイッチを2つ同時に押すと、本機がアンプとスピーカーとして働き、レコードプレーヤーやテープレコーダーの音を鳴らせる。外部スピーカーやヘッドホンの接続にも対応し、外部電源の端子も備える。
成立の経緯
1960年代のポータブルラジオは、革やハンドバッグに似た外観のものが多かった。バング・オルフセン自身も、木で覆ったベオリット1000を販売していた。イェンセンはこの筐体を平たく押しつぶし、横に伸ばして薄くするという方向に進んだ。
ベオリット600は、より簡素な FM 専用機のベオリット400に AM 受信を加えた位置づけにあたる。この一連の展開により、同社のポータブル機は多くの機種を並べる構成から、共通の筐体に仕様違いを設ける構成へと整理された。
のちに電源部を内蔵したベオリット700が加わり、それを改めた ベオリット707 ポータブルラジオ へと続く。
評価と影響
1970年、ヤコブ・イェンセンが設計したバング・オルフセンの3製品が iF 賞を受けた。同じ年、デンマークの ID 賞もベオリット600に与えられている。
同じイェンセンによるベオグラム4000 レコードプレーヤーも、操作部を平滑な面にまとめる構成をとる。ベオリット707 ポータブルラジオは後継にあたる。
mv によるMoMA照合では、同じイェンセンによるベオリット400(1971年、収蔵番号52.1972)とベオリット1000(1968年、53.1972)が収蔵されているが、ベオリット600自体の収蔵は確認できていない。
ヤコブ・イェンセンの設計思想や経歴について詳しくはヤコブ・イェンセンプロフィールページをご覧ください。
バング&オルフセンの歴史や他の製品について詳しくはバング&オルフセンブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | ベオリット600(Beolit 600) |
|---|---|
| デザイナー | ヤコブ・イェンセン |
| 発表年 | 1970年 |
| ブランド | バング・オルフセン |
| デザイン発祥地 | デンマーク |
| 型番 | 1501、1504 |
| 素材 | アルミニウム、樹脂 |
| サイズ | 幅36cm × 奥行6cm × 高さ22cm |
| 重量 | 2.55kg |
| 電源 | 単1形乾電池5本(7.5V)。外部電源端子あり |
| 受信 | FM 87.5〜104MHz。中波・長波、または短波2帯(市場により異なる) |
| 受賞 | iF 賞(1970年)、デンマーク ID 賞(1970年) |
| カラー | カレー、レッド、ヴァイオレット、ブラック、ホワイト |