概要

Sedia 1は、エンツォ・マリが1974年に発表した椅子である。13点のパイン材の板を釘で留めて組み立てる。設計図が公開され、使う側が製作することを前提とする。「Autoprogettazione(自己設計)」と題されたプロジェクトの一部にあたる。

特徴・コンセプト

組み立てを使う側が行う

完成品として売られる家具では、構造は外から見えない。組み立てを使う側が行えば、どの部材がどの荷重を受けるかが作業を通じて分かる。マリはこのプロジェクトを、工業製品の代替ではなく、構造を理解するための演習として位置づけた。

釘だけで組む

13点のパイン材を釘だけで留める。ほぞや継手を用いれば強度は上がるが、加工に工具と技能が要る。板を重ねて釘を打つ構成なら、必要なのはハンマーだけになる。接合の強度は、板の重なりの面積と釘の本数で確保される。

座面と背もたれの板はわずかにずらして配される。板を垂直に立てれば背は直角になるが、ずらして留めれば傾きが生まれる。角度を加工で出す代わりに、部材の位置関係で決めている。パイン材は釘の位置によって割れるため、打つ場所が指定される。

設計図の余地

設計図には基本的な構造だけが示され、板の寸法や仕上げには幅がある。製作者が材を替えれば、同じ図面から異なる椅子ができる。

エピソード

1974年の展覧会

1974年、ミラノの画廊で「Proposta per un'autoprogettazione(自己設計のための提案)」と題された展覧会が開催された。マリは19点の家具の設計図を無償で公開している。

キットとしての販売

2010年、アルテックがSedia 1の生産を開始した。完成品ではなく、切断済みのパイン材、釘、組み立て説明書のキットとして販売される。設計図を配布する形式では材の調達と切断が使う側の負担になるが、キットであれば組み立ての工程だけが残る。

訓練への応用

ベルリンの団体CUCULAは、職業訓練の一環としてAutoprogettazioneシリーズの家具製作を採用した。工具と技能の要求が低いため、木工の経験がなくても着手できる。マリは晩年、この団体に複製権を寄贈している。

評価と影響

設計図を公開して製作を委ねる方式は、リートフェルトが1934年に発表した木箱の家具にも先例がある。同じマリによるフォルモーザ 万年カレンダーは完成品として販売されるが、部材を差し替えて使う点では利用者の操作を前提とする構成にあたる。

同じアルテックが製造するテーブル81は、規格化した部材を工場で組む方向をとる。Sedia 1はその工程を使う側へ移している。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(AIC=シカゴ美術館)。同館の記録では、1974年の設計・2010年の製造とされる。

  • AIC Sedia 1 チェア(1974年設計、2010年製) 収蔵番号 2017.415.1
  • AIC Sedia 1 チェア(1974年設計、2010年製) 収蔵番号 2017.415.2

基本情報

デザイナー エンツォ・マーリ
デザイン年 1974年
プロジェクト Autoprogettazione(アウトプロゲッタツィオーネ)
製造 Artek(2010年、限定生産)
素材 パイン材(未処理)、釘
寸法(約) 高さ 85cm × 幅 50cm × 奥行 52cm / 座面高 46cm
構成 13個の木材パーツ、釘、組み立て説明書
組み立て セルフアセンブリー(ハンマーのみで組み立て可能)
コレクション シカゴ美術館(Art Institute of Chicago)