概要
サム・マルーフ ロッキングチェアは、サム・マルーフが1950年代から手がけた揺り椅子である。硬質の広葉樹を手彫りで成形し、接合部には自身が編み出した仕口を用いる。一脚ずつ手作業で作られるため、寸法や表情に個体差がある。
特徴・コンセプト
仕口を見せる
脚と座面の接合には、後年「マルーフジョイント」と呼ばれる仕口が用いられる。複数の方向から溝を掘って組み合わせるもので、接着面が増えるため釘や金具を要しない。仕口は覆われず、そのまま外に出る。接合部にはエボニーの無垢材のダボが打たれる。
ロッカーを積層する
床に接する揺り木(ロッカー)は、一枚の板から削り出すのではなく、薄くスライスした板を6層から8層重ねて接着する。一枚板では木目の向きによって割れやすい箇所ができるが、積層すれば向きを揃えて強度を保てる。
座面を掘り込む
座面は複数の板を接着したうえで、深く掘り込んで身体に沿う形にする。板を貼り合わせてから彫るため、一枚板では取れない幅と厚みが確保できる。肘掛けにも手彫りによる稜線が入る。
計算ではなく調整で決める
マルーフは揺れの釣り合いを数値で設計せず、製作の過程で木材に合わせて調整した。木は個体ごとに密度が違うため、同じ寸法でも重心の位置が変わる。後方へ倒れず前方へも転ばない揺れは、一脚ずつ確かめて得られている。
背もたれの縦材は、初期には旋盤で挽いた円柱形だったが、後年は平たい板状に変わった。
エピソード
マルーフは家具製作を独学で身につけた。作品の裏面には製作年、作品番号、署名が手彫りで刻まれる。
1982年には、現代の工芸家による家具として初めてホワイトハウスの所蔵品に選ばれた。2001年から2002年にかけて、スミソニアンのレンウィック・ギャラリーで回顧展が開かれている。
評価と影響
工芸家にとって製作が難しい家具の形式とされ、木工の習得目標として扱われることが多い。量産の工程に載せず、一脚ずつ手作業で仕上げる方式を通した。マルーフの没後は、継承した工房が製作を続けている。
手仕事の痕跡を残す方向は、同時期のアメリカではサンバースト・ウォール・スカルプチャーのように金属の分野にも見られる。
収蔵
マルーフの家具では、以下の収蔵が確認できる(Met=メトロポリタン美術館)。ロッキングチェア自体の美術館収蔵は、公開情報の範囲では確認できていない。
- Met セティ #3/87(1987年) 収蔵番号 1988.190
サム・マルーフの設計思想や経歴について詳しくはサム・マルーフプロフィールページをご覧ください。
Sam Maloof Woodworkerの歴史や他の製品について詳しくはSam Maloof Woodworkerブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | サム・マルーフ ロッキングチェア / Sam Maloof Rocking Chair |
|---|---|
| 製作者 | サム・マルーフ(Sam Maloof) |
| ブランド | Sam Maloof Woodworker, Inc.(2009年以降の継承工房) |
| 製作年代 | 1950年代〜(マルーフ本人による製作は2009年まで) |
| デザインの成立国 | アメリカ(カリフォルニア州) |
| 分類 | ロッキングチェア |
| 主要素材 | クレアロウォルナット、チェリー、オーク、ローズウッド、メープルなど/ダボ:エボニー |
| 構造 | マルーフジョイント(多方向の仕口)。ロッカーは薄板を6〜8層積層 |
| 製法 | 手彫り。一脚ずつ製作するため寸法に個体差がある |
| 真正の手がかり | 裏面に製作年・作品番号・署名の手彫り |
Reference
- Settee #3/87 | The Metropolitan Museum of Art
- https://www.metmuseum.org/art/collection/search/1988.190