サム・マルーフ・ウッドワーカーとは

サム・マルーフ・ウッドワーカー(Sam Maloof Woodworker, Inc.)は、20世紀アメリカを代表する家具作家サム・マルーフ(1916–2009)が自らの手仕事のために築いた工房であり、その名を冠する家具ブランドである。大量生産の設備を持たず、カリフォルニア州アルタロマの工房で一脚ずつ削り出される椅子やテーブルは、木そのものの美しさと、身体に沿う滑らかな曲面を特徴とする。マルーフの没後も工房は途絶えることなく、彼の技法と精神を受け継ぐ職人たちの手によって、現在も同じ場所で家具づくりが続けられている。

特徴とものづくりの姿勢

このブランドの家具は、詳細な図面に頼らず、職人の目と手によって形づくられる点に大きな特徴がある。マルーフはバンドソーによる大胆なフリーハンド加工と、スポークシェイブやスクレーパー、ラスプといった手道具による削り込みを組み合わせ、部材と部材が途切れなく流れるように連続する造形をつくり上げた。座面は複数の板を接ぎ合わせて緩やかな窪みを与え、長時間座っても疲れにくい掛け心地を生んでいる。

脚と座面の接合には、接着面積と機械的な強度を高めるためにマルーフが考案した独自の「ダドー・アンド・ラベット・ジョイント」が用いられる。素材にはブラックウォールナットをはじめ、杢の出たメープル、チェリー、ローズウッドなどが選ばれ、ネジ穴の栓や装飾の帯にはエボニーが差し色として使われる。仕上げはオイルとポリウレタンを混ぜた塗料と蝋によるもので、木肌の質感を活かした落ち着いた光沢に整えられる。

ブランドの歩み

サム・マルーフは1940年代後半、グラフィックの仕事を離れて家具づくりを本業とし、自宅のガレージから制作を始めた。やがてその彫刻的な椅子は世界の愛好家に知られるようになり、ロッキングチェアはホワイトハウスやスミソニアン・アメリカ美術館をはじめとする各地のコレクションに収められた。ジミー・カーター元大統領やロナルド・レーガン元大統領、音楽家のレイ・チャールズらが愛用したことでも知られる。

マルーフは自らのデザインを量産目的で他社に譲ることをせず、生涯を通じて工房での手作りにこだわり続けた。その姿勢を絶やさぬため、彼は存命中にサム・マルーフ・ウッドワーカー社を設立し、自らの承認のもとで仕事を引き継ぐ体制を整えた。2017年、30年以上にわたりマルーフのもとで学んだ職人マイク・ジョンソンが、マルーフの遺志どおりに同社の経営を引き継いだ。現在は家族経営の小さな工房として、ジョンソンとその家族がマルーフの元の作業場で制作を続けている。同社のほかに、マルーフのデザインを複製・販売する権利を与えられた個人や企業は存在しない。

主な作品

ブランドを象徴する作品が、彫刻的な曲線と繊細なバランスを持つロッキングチェアである。オリジナルは高値で取引されることもあり、現在も同じ工房で受注に応じて制作されている。詳しくは[interior slug="sam-maloof-rocking-chair"]の紹介ページをご覧いただきたい。

ロッキングチェアのほかにも、ローバックチェアやダイニングチェア、自然な木端を活かした一枚板のテーブル、独立型の収納家具など、住宅用・商業用を問わず幅広い家具を手がけている。1950年代から現在に至る評価の高いデザインが、複数の樹種で製作可能となっている。工房では新作の制作と並行して、初期のマルーフ家具の修理・修復も受け付けている。

主なデザイナー

サム・マルーフ(Sam Maloof, 1916–2009)
レバノン系移民の家庭に生まれた独学の家具作家。アメリカ現代クラフト運動の中心的存在とされ、工芸家として初めてマッカーサー・フェローシップを受賞した。詳しくはプロフィールページを参照。

基本情報

正式名称 Sam Maloof Woodworker, Inc.
創業者 サム・マルーフ(Sam Maloof)
創業 1948年(家具制作の開始)
所在地 アメリカ・カリフォルニア州アルタロマ(5131 Carnelian Street, Alta Loma, CA 91701)
事業内容 手作り家具の製作、初期マルーフ家具の修理・修復
公式サイト https://www.sammaloofwoodworker.com