概要
ビストロチェアは、1889年にエドゥアール・ルクレールが「Simplex」の名で特許を取得した折りたたみ式のスチールチェアである。当時のフランスでは、カフェが常設のテラス席を設けると課税対象となったため、営業終了後に収納できる折りたたみ家具が求められた。現在はフェルモブが特許を継承して製造している。
この歴史的特許を継承し、現代の製品として展開しているのがFermob社である。同社はフランス南東部トワッセの工場で製造を続け、歴史的なデザインを保ちながら、金属スラットの採用や色彩の拡張といった改良を重ねてきた。
特徴・コンセプト
華奢と堅牢を両立したフォルム
7本の緩やかに湾曲したスチールスラットが座面と背もたれを構成する。板を渡すだけなら平らな面になるが、湾曲させれば身体の側へ沿う。フレームの背もたれ下部には扁平に加工した補強部がある。
クロスバーは一体成形による。折りたたみ機構は開閉のたびに力がかかる部位で、溶接や鋲打ちの接合点があるとそこから傷む。接合点を減らせば、繰り返しの使用に耐えやすくなる。
折りたたみ機構
プラスチック製のクリップによる開閉機構を備える。急に閉じないため指を挟みにくく、片手でも操作できる。折りたたむと奥行きは約12cmに縮まる。
塗装技術
屋外で使う金属の家具では、錆と退色が課題になる。フェルモブは電着塗装を経たうえで静電粉体塗装を施し、高温で焼き付ける。静電塗装は塗料が微細な隙間にも回り込むため、折りたたみ機構の内側のような塗り残しやすい部分も覆える。粉体塗料は溶剤を含まない。
豊富なカラーパレット
フェルモブは独自のカラーチャートを持ち、定番色に加えて時期ごとに色を入れ替える。同じ形のまま色だけを変えられるため、複数脚を並べたときに色の組み合わせで構成を変えられる。
エピソード
ブライアントパークの再生
ビストロチェアが公共空間の家具として広く知られる契機となったのが、1992年に再生されたニューヨーク・ブライアントパークである。荒廃していた同公園の再生にあたっては、都市学者ウィリアム・H・ホワイトらが提唱した「可動式の椅子」の考え方が採り入れられ、Fermobのビストロチェアが多数導入された。固定席ではなく自由に動かせる椅子が並んだことで、人々は再びこの場所に集うようになり、この試みは以後の各地の公共空間の設計にも影響を与えた。
エッフェル塔との同年生まれ
ビストロチェアが1889年に生まれたことは、同年に公開されたエッフェル塔と年を同じくする。鉄という素材でフランスの近代を象徴する二つの存在が同時期に生まれた背景には、産業革命後のフランスにおける鉄鋼技術の成熟があった。Fermob社は2014年、ビストロチェア誕生125周年を記念し、342脚の赤いビストロチェアでエッフェル塔のミニチュアを制作して展示している。
評価
屋外用の椅子では、トムバックチェアのように成形樹脂で一体につくる方向もある。ビストロチェアは折りたたんで収納するという要求から出発しており、部材を分けて畳める構成をとる。
フェルモブの歴史や他の製品について詳しくはフェルモブブランドページをご覧ください。
基本情報
| 正式名称 | ビストロ メタルチェア / Bistro Metal Chair |
|---|---|
| 原案 | エドゥアール・ルクレール(Edouard Leclerc)/「Simplex」特許(1889年) |
| 製造ブランド | Fermob(フェルモブ)/フランス |
| 製造国 | フランス(トワッセ工場) |
| デザイン年 | 1889年(Simplex特許取得) |
| 素材 | スチール(抗UV粉体塗装、電着防錆処理) |
| サイズ | W420 × D390 × H820mm(座面高450mm) |
| 折りたたみ時 | 奥行 約120mm(省スペース収納) |
| 重量 | 約4.8kg |
| 耐荷重 | 約125kg |
| カラー | 多色展開(定番色+トレンドカラー、定期更新) |
| カテゴリ | ガーデンファニチャー(折りたたみチェア) |
| 参考価格 | 1脚あたり約15,000〜19,000円(税込目安) |