概要
エレファントスツールは、柳宗理が1954年に設計したスツールである。3本の脚と座面を分けずに一体で成形する。当初はガラス繊維で強化した樹脂で、コトブキが製造した。
設計者のアトリエで用いる作業用の椅子として構想されている。2004年からヴィトラが素材をポリプロピレンに替えて製造している。
柳宗理の設計思想や経歴について詳しくは柳宗理 プロフィールページをご覧ください。
特徴・コンセプト
アトリエという条件
この形は、狭いアトリエで使うという条件から導かれている。作業のあいだ位置を頻繁に変えるため軽いこと、使わないときに重ねられること、床に置いた道具や材料のあいだで安定することが求められた。
脚を3本としたのは、床の凹凸に対して接地が確定するためである。4本脚では床面が平らでなければどれか1本が浮くが、3点は常に一つの面を決める。
樹脂による一体成形
脚と座面を分けずに1つの型から成形する。接合部を持たないため、荷重の集まる箇所に緩みが生じない。
ガラス繊維で強化した樹脂は、当時イームズのシェルチェアにも用いられていた素材にあたる。この素材によって、脚が大きく外へ開きながら座面へなめらかに続く曲面が成立した。木材や金属の組み立てでは、この輪郭を薄い断面のまま得ることが難しい。
重ねる
脚が外へ開くため、上に重ねたときに互いが入り込む。収納時の高さを抑えられる。
座面の裏には重ねた際に接する箇所があり、傷を防ぐ部材が付く仕様も見られる。
エピソード
自身のための家具
柳工業デザイン研究会によれば、この製品は柳が自身のアトリエで使うための、丈夫で安定した工作用の椅子として1954年に設計された。特定の顧客からの依頼ではなく、設計者自身が使う道具として始まっている。
後年、寸法がやや小さいという判断から、高さを30mmほど上げた大きい型が設計された。現行品はこちらを基としている。
製造の引き受け
1956年、銀座・松屋で開かれた第1回柳工業デザイン研究会展に出品された。これを見たコトブキの常務が製造を申し出たことが、同社との協働の始まりとなっている。
コトブキでの製造が終了したのち、2000年代に入ってイギリスのハビタが復刻を手がけた。2004年、設計から50年にあたる年にヴィトラが素材をポリプロピレンに替えて生産を開始し、現在に至る。
評価と影響
一般的に、樹脂を一体で成形した椅子の早い例として扱われている。1970年の大阪万博では、パビリオンの椅子として用いられた。
素材の変更は廃棄と再利用の条件にも関わる。ポリプロピレンは床を傷めにくく割れにくいため、屋外での使用にも対応する。
受賞・収蔵
1960年の第12回ミラノ・トリエンナーレで金賞を受けている。
ニューヨーク近代美術館が収蔵している(Elephant Stool、1954年、収蔵番号 134.2010.1-2)。コトブキが製造したガラス繊維の個体にあたる。
基本情報
| デザイナー | 柳宗理 |
|---|---|
| ブランド | ヴィトラ(当初はコトブキ) |
| 発表年 | 1954年設計、1956年発表 |
| デザインの成立国 | 日本 |
| 主要素材 | ポリプロピレン(当初はガラス繊維で強化した樹脂) |
| サイズ | 幅515 × 奥行465 × 高さ370mm |
| 重ねられるか | 重ねられる |
ヴィトラの歴史や他の製品について詳しくはヴィトラ ブランドページをご覧ください。
Reference
- 作品紹介「エレファントスツール 現行」 | 柳工業デザイン研究会
- https://yanagi-design.or.jp/works/442/
- Sori Yanagi. Elephant Stool. 1954 | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/133820