モス(Moss)は、スウェーデンのラグメーカー、カスタール(Kasthall)のハンドタフテッドラグである。長く粗いリネン糸と、短く柔らかなウール糸を混ぜて打ち込むことで、一枚の面のなかに二種類の質感と光の反射が同居する。伝統的なスウェーデンのリュアラグ(rya)を現代的に読み替えた製品であり、一時は下火になっていたロングパイルのラグを再び定着させた。
カスタールは1889年、スウェーデン西部の町キンナで創業した。モスは同社のデザインディレクターを1987年から2015年まで務めたグニラ・ラーゲルヘム・ウルベリの手によるもので、現在も定番として生産が続いている。
特徴・コンセプト
モスの表情は、二種類の糸の性質の差から生まれている。短く柔らかなウールと、長く粗いリネン。太さも張りも染料の乗り方も異なる糸が同じ面に打ち込まれることで、単一素材のラグにはない斑(まだら)が現れる。モス=苔という名称も、この不均質な表面と重なる。
素材と製法
パイルはウール70%、リネン30%。基布はポリエステル、裏材にはポリプロピレンとリサイクルヤーンが使われ、接着には水性アクリル系が用いられる。パイル高は約40mm、総厚は約44mm。総重量はおよそ4,400g/m²に達する。タフティングは職人がハンドタフティングガンでパイルを打ち込む工程で、カスタールのキンナの自社工場で行われる。
サイズとカラー
140×200cmから350×450cmまでの標準サイズに加え、直径240cmの円形、さらに任意の寸法・形状でのオーダーにも対応する。カラーは白から灰、青、緑、珊瑚色まで10色が展開される。ウールは染料の吸収がリネンと異なるため、同一色でも二種の糸の発色が揃わず、その差が斑の効果を強めている。
製造と環境への取り組み
カスタールは原糸から仕上げまでの工程を自社で管理し、生産はスウェーデン国内に置いている。裏材にはリサイクルヤーンが使われ、接着剤は水性である。手入れの面では、洗濯機による洗濯およびドライクリーニングはいずれも不可とされている。
デザインの背景
ウルベリはキンナの工場と密に関わり、織機のかたわらで糸や色、織りの技法を試しながらデザインを詰めた。モスは、彼女の色への関心と、素材・テキスタイル史についての知識から生まれている。下絵には水彩とグワッシュが選ばれた。絵具の滲みと揺らぎが、タフテッドラグの表面に近いためである。
ウルベリはモスのほかフォッグ(Fogg)、ヘッゴ(Häggå)、テクラ(Tekla)などカスタールの定番の多くを手がけ、「ラグの女王」と呼ばれた。2012年にはスウェーデン版エル・デコレーションのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。2015年12月に逝去。
基本情報
| 製品名 | Moss(モス) |
|---|---|
| デザイナー | Gunilla Lagerhem Ullberg(グニラ・ラーゲルヘム・ウルベリ) |
| ブランド / メーカー | Kasthall(カスタール) |
| デザイン年 | 公表されていない(在籍期:1987–2015年) |
| 原産国 | スウェーデン(キンナの自社工場) |
| 製品カテゴリー | ラグ / カーペット |
| 製法 | ハンドタフテッド |
| パイル素材 | ウール70%、リネン30% |
| パイル高 / 総厚 | 約40mm / 約44mm |
| カラー | 全10色。標準サイズ7種のほか、任意サイズ・形状のオーダーに対応 |