概要

シティ(Sity)は、アントニオ・チッテリオがB&B イタリアのために設計し、1986年に発表したソファシステムである。直線と曲線のソファ、シェーズロング、ベンチ状の台など20を超える要素からなり、組み合わせ方は使い手が決める。翌1987年にコンパッソ・ドーロを受けた。

ソファを壁際に置く一台の家具としてではなく、部屋のなかへ張り出し、あるいは独立して置かれる座の集まりとして組み立てた点に特徴がある。現在はB&B イタリアの現行製品には含まれていない。

特徴・コンセプト

座るためだけではないソファ

チッテリオは、シティを設計した1980年代半ばの時点で、ソファがもはや座るためだけに使われていないことに気づいていたと述べている。人はソファの上で横になり、眠り、食事をし、仕事をする。会話のために腰掛けることを前提にした寸法と構成では、こうした使い方を受け止めきれない。

シティが座面に深い奥行きをとり、脚を伸ばせるシェーズロングやデイベッドとして使える大きさの要素を同じシステムに加えたのは、この観察による。会話のための一列のソファに、身体を預けて過ごすための場所を足していく構成である。

「半島」と「島」

要素の種類を増やしたことで、ソファの配置そのものが変わった。座面の一部が前方へ長く延びて部屋の中へ張り出す構成や、壁から離して単独で置く要素を、通常の並びと組み合わせられる。チッテリオはこれらを「半島」「島」と呼び、シティで新しい類型をつくったと振り返っている。当時は耳慣れない呼び方だったが、のちにソファを語る一般的な語になったというのが本人の説明である。

形の異なる要素をまとめる部材

要素の幅は広く、羽毛を用いたクッションを載せた柔らかいシェーズロングから、角張った硬いベンチ状の台までが含まれる。片側だけが大きく弧を描く非対称の要素もある。これだけ形が違っても、組み合わせたときに一つの家具として見えるのは、金属の筒を革で包んだ円筒形の肘掛けや黒い樹脂の脚といった部材が、要素の間で共通して用いられているためである。

単体でも成り立つ要素

各要素は単体でも使えるように作られ、一人掛けの要素はそのまま肘掛け椅子として置ける。並べて使うときは金具で要素どうしを連結し、使用中のずれを防ぐ。ヘッドレストは固定されておらず、取り外したり位置を移したりできる。座る向きが一つに定まらない配置でも、もたれる位置を使い手が決められる。

エピソード

スケッチから始まる設計

チッテリオがソファの設計に取り組み始めたのは1983年である。本人の説明によれば、ソファの設計は要素がどう組み合わさって住まいのなかに「島」をつくるかを描くスケッチから始まり、その後はメーカーの技術陣との対話のなかで形になっていく。シティもB&B イタリアとの協働のなかで開発され、1986年に発表された。

配置を描くための定規

要素が20を超えると、どの組み合わせが部屋に収まるかを確かめる作業に手間がかかる。B&B イタリアはこれに応じて、シティの全要素の形を抜いた定規を用意した。計画する人がこの定規で図面に配置を描き込み、組み合わせを正確に、かつ手軽に検討できるようにするためのものである。

評価と影響

1987年のコンパッソ・ドーロの審査講評は、メーカーの継続的な取り組みとデザイナーの貢献が一体となった成果として、住まいにおける人のふるまいの変化に応じた、類型として先進的な製品とシティを位置づけた。あわせて、デザイナーの仕事が伝統の枠内にとどめられてきた分野に、刷新の動きを起こすものとも記している。

シティで用いた考え方は、チッテリオがB&B イタリアのために手がけた後年のソファにも引き継がれている。2018年のアトール(Atoll)に続く2021年のヌーヌ(Noonu)は、島をテーマとする一連の仕事として発表された。ヌーヌに設けた「ピアノ」「帆」と呼ぶ変形の要素について、チッテリオはシティで導入した要素を参照したものと説明している。

受賞

  • 1987年 第14回コンパッソ・ドーロ(家庭用の家具と調度品部門)

基本情報

デザイナー アントニオ・チッテリオ(Antonio Citterio)
ブランド B&B イタリア
発表年 1986年
デザインの成立国 イタリア
名称の綴り Sity
構成 20を超える要素(直線・曲線のソファ、シェーズロング、ベンチ状の台など)
肘掛け 円筒形(金属に革張り)
張り地 ファブリック、レザー
サイズ 構成により異なる
生産状況 生産終了

Reference