概要
ライト・ライト・チェアは、アルベルト・メダが1987年にアリアスのために設計した椅子である。航空機やレース用の部材に使われていた炭素繊維の布とノーメックスのハニカム材を、住まいの中の道具に持ち込めるかを確かめる研究から生まれた。脚も座面も指先ほどの厚みしか持たず、重量はおよそ1キログラムとされる。製造に手間がかかり単価を下げられなかったため、50脚を作った時点で打ち切られ、市販品としては流通していない。現在はニューヨーク近代美術館などが収蔵している。
特徴・コンセプト
断面を削って成り立たせる
座面は浅く窪んだ一枚の面で、四隅がそのまま下へ折れて4本の脚につながる。脚は先端に向かって細くなる棒状で、床に接する部分では径が指ほどしかない。背もたれは座面の後端中央から一本の柱として立ち上がり、上端で左右に広がって先端を前方へ曲げている。部材を突き合わせた継ぎ目が表に出ないため、輪郭は一本の枝のように連続して見える。
メダはこの椅子について、材料を必要な場所にだけ配して断面を薄くしていくことで、実際の重さと目に映る嵩の両方を減らそうとしたと説明している。軽さの記録を狙ったわけではないとも述べており、形は先に決めた様式に合わせたのではなく、どこまで細くできるかを確かめる過程で定まっていった。
力の向きに繊維を合わせる
材料は、ノーメックスと呼ばれるポリアミドのハニカム材を芯にして、両面を炭素繊維の布で覆ったサンドイッチ構造である。曲げの力は表面の層が引っ張りと圧縮で受け持ち、芯材は両面の間隔を保つ役目を負う。中身の詰まった材料と比べて重量あたりの曲げにくさが大きく、薄い断面でも人の体重を受けられる。
炭素繊維は向きによって強さが変わる。ニューヨーク近代美術館の展示解説によれば、この椅子では着座時に伝わる力に逆らう向きに繊維が置かれ、力の集まる接合部には一方向の繊維が足されている。どの部位にどれだけの厚みと向きを与えるかが、そのまま構造の設計になっている。
ただし、布を型の中で狙った向きに並べる作業は手に頼らざるを得ない。メダは、進んだ技術を用いながら工程そのものは職人の手仕事になると書いており、この点が単価を押し下げられない理由にもなった。
エピソード
メダとアリアスの関わりは、1987年に始まったこの複合材の研究から始まっている。航空宇宙の分野で使われていた炭素繊維とノーメックスの組み合わせを、家庭で使う物に適用できるかを調べるもので、特定の製品の注文から出発したわけではなかった。
試作は一脚ずつ番号を付けて進められ、前の一脚で得た結果を次に反映する形で重ねられている。インディアナポリス美術館が収蔵する個体の裏面には、実験試作の10号であることと1988年の年記を打った金属のラベルが貼られている。
初期の試作を使った利用者の試験では、丈夫であるにもかかわらず軽すぎること、見た目が技術的に過ぎることが、広い層に受け入れられない理由として挙がった。メダ自身も、持ち上げると重さを感じず、腰を下ろすと支えられるとは思えない、という反応が生まれたと振り返り、これを限界に近い状態がもつ美しさの発見だったと述べている。
50脚を作った段階で、費用の高さを理由に生産は止まった。メダは、結果として住宅ではなく美術館に置かれることになったと述べ、この研究は魅力的ではあったが産業としては成り立たなかったと振り返っている。
評価と影響
炭素繊維の複合材を椅子の構造そのものに用いた早い例として扱われている。ニューヨーク近代美術館は1994年に製造元からの寄贈で収蔵し、2004年から2005年の建築・デザイン部門の常設展示と、2008年から2009年の企画展「Rough Cut: Design Takes a Sharp Edge」に出品している。
量産には向かわなかった一方で、メダはこの仕事がアリアスと自身の名を知らせる機会になったと述べている。
美術館コレクション
ニューヨーク近代美術館は、1987年頃の一脚を収蔵番号397.1994で登録している。製造元からの寄贈で、館の登録名は「Light Light Chair」、寸法は高さ70.8×幅52.7×奥行46.4センチである。インディアナポリス美術館は試作の一脚を収蔵番号2008.251で登録している。
アルベルト・メダの設計思想や経歴について詳しくはアルベルト・メダプロフィールページをご覧ください。
アリアスの歴史や他の製品について詳しくはアリアスブランドページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | ライト・ライト・チェア / Light Light Chair |
|---|---|
| デザイナー | アルベルト・メダ(Alberto Meda) |
| ブランド | アリアス(Alias) |
| 発表年 | 1987年 |
| デザインの成立国 | イタリア |
| 分類 | チェア |
| 構造 | ノーメックスのハニカム材を芯とする炭素繊維のサンドイッチ構造 |
| 主要素材 | 炭素繊維、ノーメックス(ポリアミド)ハニカム |
| 重量 | 約1kg |
| サイズ | 高さ70.8cm × 幅52.7cm × 奥行46.4cm(ニューヨーク近代美術館収蔵品の値。個体により異なる) |
| 生産 | 50脚で終了。市販されていない |
| 収蔵 | ニューヨーク近代美術館(397.1994)、インディアナポリス美術館(2008.251) |
Reference
- Alberto Meda. Light Light Chair. c. 1987 | MoMA
- https://www.moma.org/collection/works/3745
- Alberto Meda · Light Light
- https://www.albertomeda.com/en/prodotti/lightlight
- Engineer and designer Alberto Meda | Alias
- https://alias.design/en/furniture-designers/alberto-meda
- Light-Light chair (prototype) | Indianapolis Museum of Art at Newfields
- https://collections.discovernewfields.org/art/artwork/43754
- Keeping It Simple: In conversation with Designer Alberto Meda | C41 Magazine
- https://www.c41magazine.com/keeping-it-simple-in-conversation-with-designer-alberto-meda/