有機繊維を加熱して炭素化した、質量の90%以上が炭素からなる繊維。軽く、重さあたりの強度と剛性が高い。樹脂で固めた複合材料として用いる。
炭素繊維
炭素繊維とは、有機繊維を前駆体として加熱し炭素化した繊維のうち、質量の90%以上が炭素で構成されるもののこと。英語では carbon fiber と呼び、カーボンファイバーとも表記する。
解説
前駆体の違いによって、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル)を原料とするPAN系と、石炭や石油のピッチを原料とするピッチ系に分かれる。PAN系では、紡糸した繊維をまず200〜300℃の空気中でゆっくり加熱して燃えにくい構造に変え(耐炎化)、次に窒素中でさらに高い温度にさらして炭素以外の元素を追い出す(炭素化)。PAN系の基本技術は、通商産業省工業技術院大阪工業技術試験所の進藤昭男が1960年前後に発明したものである。
単繊維の直径は数マイクロメートルしかなく、数千本から数万本を束ねた糸として供給される。日本化学繊維協会の炭素繊維協会委員会は、重さが鉄の約4分の1、重量あたりの強さが鉄の約10倍としている。ただし繊維だけでは形を保てないため、エポキシなどの樹脂を含浸させて硬化させた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)として使う。樹脂をあらかじめ含ませた半製品をプリプレグと呼び、これを型に積層してオートクレーブ(加圧加熱釜)で硬化させる方法が航空機部品などで用いられてきた。
強度と剛性は繊維の向きにしか生じない。どの方向に何層を重ねるかが設計の中心になり、力のかかる向きに繊維を揃えれば、少ない材料で薄い断面が成立する。アルベルト・メダのライト・ライト・チェアは、炭素繊維の布をサンドイッチ構造の表層に用い、椅子をおよそ1kgにまとめた例である。ファイバーグラスも同じく繊維で樹脂を補強する材料だが、炭素繊維のほうが軽く剛性が高い代わりに、材料と成形の費用がかさむ。
扱ううえで知っておきたいのは損傷の現れ方である。強い衝撃を受けると、表面に目立つ傷がなくても内部で層がはがれていることがあり、金属のように凹みで損傷を見分けることができない。
Reference
- 炭素繊維について(日本化学繊維協会 炭素繊維協会委員会)
- https://www.carbonfiber.gr.jp/tech/pdf/sustainability2050.pdf
- PAN系炭素繊維の現状と将来(炭素繊維協会 第28回複合材料セミナー)
- https://www.carbonfiber.gr.jp/pdf/28th_seminar_PAN.pdf
- 炭素繊維(日本大百科全書/コトバンク)
- https://kotobank.jp/word/%E7%82%AD%E7%B4%A0%E7%B9%8A%E7%B6%AD