概要
エンドグレインは、ロウ・エッジズが2014年に発表した木材の着色手法と、それによる家具群である。染料を木口から材の内部まで吸わせ、色の異なる角材を木口を上に向けて接着し、その塊を削り出して形をつくる。色が表層にとどまらないため、削った面にも同じ色が現れる。2014年9月、ブリュッセルのデザインイベント「デザイン・セプテンバー」に合わせて同市のギャラリー「Senne」で公開され、デスク、壁掛けの棚、ロー・テーブル、スツールが並んだ。発表時の一連の作品は個人のコレクターからの委嘱による制作である。
特徴・コンセプト
木が水を運ぶ仕組みを染色に使う
着想は、樹木が根から吸い上げた水と養分を上へ運ぶ木部組織にある。水が繊維の方向に沿って移動するのであれば、染料も同じ経路で材の内部まで届くはずだという見込みから、木口を染液に浸して吸わせる方法がとられた。表面に色を塗るのではなく、材そのものを染める。
染料の入り方は樹種によって大きく違い、20種以上を試したうえでジェルトンとサザンイエローパインの2種に絞られている。ジェルトンは色が鮮やかに出るのに対し、パインは染まり方の差で木目が浮かび上がる。同じ工程を通しても仕上がりの性格が変わるため、両方が使い分けられている。
木口を上に向けて接着する
染めた角材と染めていない角材は、木口を上に向けて格子状に並べ、接着して一つの塊にする。まな板やブッチャーブロックと同じ向きで、木口面は刃物や荷重に対して最も強い面にあたる。染料の通り道として使った繊維方向が、そのまま使用面の強度に結びついている。
並べ方はチェックの織物から採られている。平面で見れば規則正しい格子だが、塊を曲面に削り出すと断面が格子を斜めに横切り、柄が歪む。三次元の形が二次元の柄をどう変形させるかが、この手法の主題にあたる。
わずかに膨らませた天板
テーブルの天板は中央がゆるやかに盛り上がっている。平らなままでは、模様が突板や象嵌によるものだと受け取られかねない。曲面に削り込めば断面が現れ、色が材を貫いていることが目で確かめられる。
色が内部まで入っていることは、扱い方にも関わる。汚れや日焼けで表面が傷んでも、削るか研磨すれば下から同じ色が出てくる。
エピソード
発端は2010年、ステラ・マッカートニーのミラノ店舗のために手がけたオーク材の寄せ木床にある。染色して仕上げたものの、通行量の多い入口付近では1年ほどで色が抜けた。染まっていたのは表層だけで、摩耗とともに素地が現れたためである。
色を保たせるには材の内部まで染めるほかない。この見込みのもとで樹種と染料の組み合わせを探る作業が続き、実用になる条件が定まるまでに数年を要した。
2014年9月、ブリュッセルのギャラリー「Senne」で個展として公開された。展示された作品は会期後もコレクターの手元に残されている。
翌2015年には、イングランドのチャッツワース・ハウスで開かれた椅子の展覧会「Make Yourself Comfortable」で、19世紀の彫刻ギャラリーに手法が大きく展開された。単体の家具を置くかわりに、約300平方メートルの床全面を染めた材で構成し、色の濃い区画からベンチとスツールが立ち上がる。床に固定された座面は、動かせる家具とは違って地面から生えたように見える。緑と赤の顔料は、ギャラリーの台座に用いられたモザイクに合わせて選ばれた。
評価と影響
木に色を入れる手法として関心を集め、発表の翌年には英国のウッド・アワードとロンドンのデザイン・ミュージアムの双方で取り上げられている。ウッド・アワードの審査では、木材に色を用いた例が少ないこと、実際に見た人の反応が大きかったこと、工程そのものを自ら構想して開発した姿勢が評価された。
染色と積み上げまでは手作業で、削り出しから先は機械加工に移る。手仕事と機械加工が一本の流れのなかで切り替わる進め方は、ロウ・エッジズ自身がこの手法の性格として説明している。
受賞
- 2015年 ウッド・アワード(英国)ビスポーク家具・製品部門 受賞。同部門はこの年、2件が同時に選ばれた
- 2015年 デザイン・ミュージアム(ロンドン)「Designs of the Year」プロダクト部門 ノミネート
ロウ・エッジズの設計思想や経歴について詳しくはロウ・エッジズプロフィールページをご覧ください。
基本情報
| 名称 | エンドグレイン / Endgrain |
|---|---|
| デザイナー | ロウ・エッジズ(Raw-Edges Design Studio/ヤエル・メール、シェイ・アルカライ) |
| 発表年 | 2014年 |
| デザインの成立国 | イギリス |
| 分類 | アート・オブジェ |
| 主要素材 | ジェルトン、サザンイエローパイン、サイプレスの突板 |
| 製法 | 染色した角材の木口接着、CNCによる削り出し |
| 木材供給 | ジェンナー・ティンバー(Jennor Timber) |
| 初出 | デザイン・セプテンバー2014(Senne/ブリュッセル) |
Reference
- Endgrain - Wood Awards(ビスポーク家具・製品部門 2015年受賞作)
- https://www.woodawards.com/portfolio/endgrain-14/
- Endgrain - Design Museum(Designs of the Year 2015 ノミネート)
- https://designmuseum.org/your-vote-on-designs-of-the-year/endgrain
- Raw Edges shapes Endgrain wooden furniture to reveal colourful patterns - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2014/10/01/raw-edges-endgrain-wood-dye-furniture-colourful-patterns/
- colorful endgrain furniture by raw-edges at brussels design september - designboom
- https://www.designboom.com/design/endgrain-raw-edges-09-24-2014/
- Raw Edges installs dyed wooden floor at Chatsworth House - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2015/03/25/raw-edges-endgrain-installation-chatsworth-house-make-yourself-comfortable-dye-wood-floor-sculpture-gallery/