概要

Raw-Edges(ロウ・エッジズ)は、ロンドンを拠点とするデザインスタジオである。シャイ・アルカライとヤエル・メールが2007年に設立した。家具、テキスタイル、タイル、照明、空間の構成を手がける。模様を図案として描くのではなく、材料を染料や釉薬に浸す、木口から染料を通すといった工程の側から生じさせる方法をとってきた。両名とも1976年生まれで、現在も活動している。

バイオグラフィー

シャイ・アルカライとヤエル・メールはいずれも1976年にイスラエルで生まれた。二人はエルサレムでデザインを学び、その後ロンドンの王立芸術学院(Royal College of Art)のプロダクトデザイン修士課程に進んでいる。修了年は資料により2006年と2007年で記述が分かれる。

在学中から、同学院の修了生によるグループ Okay Studio に加わり、共同で仕事場を運営した。2007年、ロンドンで Raw-Edges を設立している。

2008年、アルカライの設計したスタックが Established & Sons から、ピボットが Arco から製品化された。翌2009年には Design Miami/Basel の Designers of the Future に選ばれている。

その後、Cappellini、Mutina、Golran、Louis Vuitton、Vitra などとの協働が続いた。スタジオは現在イーストロンドンにある。

デザインの思想と方法

二人が扱ってきた課題は、模様をどこで発生させるかという点にある。図案を描いて表面に載せるのではなく、材料を加工する工程そのものに模様を生じさせる条件を持たせる。結果として、模様は設計者の筆致ではなく工程の記録になる。

浸す深さと角度を設計する

材料を染料や釉薬に浸すと、浸した部分と浸さない部分の境界に線が残る。向きを変えて複数回浸せば、境界どうしが交差して帯状の重なりが現れる。重なった箇所は染料が二度乗るため濃度が上がり、交差ごとに階調が分かれる。何を描くかではなく、どの角度でどこまで浸すかが設計の対象になる。

導管を使って材の内部まで染める

木材の表面を着色すると、摩耗した箇所から色が失われる。二人は木が水を吸い上げる導管の働きに着目し、断面から染料を吸わせて材の内部まで色を通す方法を試した。20種以上の樹種を試したうえでジェルトン材を選び、染めた材を木口を上に向けて接着し、CNC加工機で削り出している。手作業の染色から始まり、機械加工で終わる工程になる。

可動部そのものを形にする

収納家具では、引き出しが動くという事実を意匠の側に取り込んでいる。枠に納めて動きを隠すのではなく、動いた状態の不揃いな並びを常態として扱う。

個体差を残すか、反復させるか

浸染の結果は一点ごとに異なる。量産にあたっては、染色そのものを工程に組み込んで個体差を残す道と、染めた結果を原図として印刷し同じ模様を反復させる道がある。二人は素材ごとにこの二つを使い分けており、器では前者を、布では後者を選んでいる。

代表作にみる方法

スタック(2008年、Established & Sons)

引き出しの収納である。通常の箪笥は外枠と背板があり、引き出しは片側にしか引けず、高さは枠の寸法に縛られる。ここでは枠と背板を外し、引き出し単体を積み上げる構成をとった。前後どちらからも引けるため、どの面から見ても引き出しの出入りが不揃いに見える。可動部を隠さずに構成そのものにした最初期の仕事にあたる。

テイラード・ウッド(2010年、Cappellini)

突板は通常、無垢材の表面を覆うために使う。ここでは順序を反転させ、突板でまず空の立体をつくり、そこへ発泡樹脂を注入している。樹脂が膨らむ力で表面に皺が寄るため、同じ型でも仕上がりが一点ごとに変わる。材料の反応をそのまま形にする進め方が現れている。

エンドグレイン(2014年)

2010年にステラ マッカートニーのミラノ店で染色した寄せ木の床を手がけた際、人の通行が多い入口付近で色が褪せた。表層しか染まっていなかったためである。この経験から、材を通して染める方法の検討が始まった。染めた材を組み合わせて削り出すため、削っても色が残り、切断面の角度によって模様が変わる。2015年の Wood Awards で Bespoke Furniture & Product 部門に選ばれた。

ヘリンボーン コレクション(2018-19年、Vitra)

2018年、ヴィトラキャンパスの VitraHaus で1フロア分の家具構成と内装を担当した。その際に浸染による模様のクッションと木製のオブジェが制作され、これをもとに量産化が進められた。器は釉薬に繰り返し浸す工程そのものが模様を決めるため一点ごとに異なり、布は染めた結果を原図として印刷するため同じ模様を反復する。→ヘリンボーン・ピローズ

評価と影響

一般に、模様や質感を図案として与えるのではなく、工程の条件から生じさせる方法をとる設計者と評価されている。染色、浸漬、折り、積層といった操作は、いずれも結果を完全には指定できない。その不確定さを排除せずに設計の一部として扱う点が、二人の仕事に共通する。

エンドグレインは、手作業の染色と機械加工を一つの工程につないだ例として言及される。工芸的な手順で色を与え、産業機械で形を決めるという順序である。

ヘリンボーン コレクションでは、手作業の個体差を残す製品と、その結果を印刷して反復する製品が同じ名前のもとに並んだ。同じ模様の原理を、量産の条件に応じて二通りに実装した例にあたる。

受賞・収蔵

受賞

  • 2009年 Design Miami/Basel Designers of the Future
  • 2009年 Elle Decoration International Design Award(スタック)
  • 2009年 Wallpaper* Design Award
  • 2015年 Wood Awards Bespoke Furniture & Product 部門(エンドグレイン)

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、AIC=シカゴ美術館)。スタックは両館ともシャイ・アルカライ個人の名義で記録されている。

  • MoMA スタック(2008年) 収蔵番号 77.2009.1-2
  • AIC スタック(2008年) 収蔵番号 2010.460
  • MoMA TWB テイラード・ウッド スツール(2010年) 収蔵番号 132.2013

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
2008年 収納 スタック Established & Sons
2008年 収納 ピボット Arco
2010年 椅子・ベンチ テイラード・ウッド Cappellini
2010年 内装 ステラ マッカートニー ミラノ店の床 Stella McCartney
2014年 家具 エンドグレイン 自主制作
2014年 ラグ レイク Golran
2015年 インスタレーション エンドグレイン(チャッツワース・ハウス) Chatsworth House
タイル フォールデッド/テックス/テープ Mutina
椅子 コンチェルティーナ(Objets Nomades) Louis Vuitton
2018年 内装 VitraHaus 1フロアの家具構成と内装 Vitra
2019年 クッション ヘリンボーン・ピローズ Vitra
2019年 ヘリンボーン ヴェッセル Vitra
2023年 キッチン ブルータ Superfront
2024年 照明 ライトマス Raw-Edges

プロフィール

設立 2007年
設立者 シャイ・アルカライ(1976年生まれ)、ヤエル・メール(1976年生まれ)
出身 イスラエル
活動拠点 イギリス・ロンドン
分野 家具、テキスタイル、タイル、照明、空間構成
主な協働ブランド Vitra、Established & Sons、Cappellini、Mutina、Golran、Louis Vuitton

Reference

Raw-Edges Design Studio(公式)
https://www.raw-edges.com/
Raw-Edges | Vitra
https://www.vitra.com/en-un/product/designer/raw-edges
Raw Edges | Mutina
https://www.mutina.it/en/designers/raw-edges
Raw Edges/Shay Alkalay | Established & Sons
https://establishedandsons.com/designers/raw-edges-shay-alkalay
Endgrain | Wood Awards
https://woodawards.com/portfolio/endgrain/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/126041
The Art Institute of Chicago Collection
https://www.artic.edu/artworks/202849