概要

PK25は、ポール・ケアホルムが工芸学校の卒業制作として1952年に設計したラウンジチェアである。エレメントチェアの通称を持つ。

1本のばね鋼を継ぎ目なく曲げて枠とし、そこに旗を揚げるための縄を張り渡す。素材ごとに1つの部材へ還元するという方針が形になっている。現在はフリッツ・ハンセンが製造する。

特徴・コンセプト

継ぎ目を持たない枠

脚から座面の縁、背もたれの支持までを1本の鋼が連続して担う。溶接やボルトによる接合部を持たない。

部材を分けて接合すれば、接合部ごとに断面を太くする必要が生じる。1本で通せば、荷重の経路が途切れないため細い断面のまま成立する。継ぎ目がないことは意匠であると同時に、断面を絞るための条件でもある。

用いるのはばね鋼である。撓みを許容する素材のため、座ったときに枠そのものが僅かに沈む。

旗の縄を張る

座面と背もたれには、船で帆や旗を揚げるために用いられる縄を張り渡す。編み込んだ面が身体を受ける。

詰め物を持たないため、枠の撓みと縄の張力が座り心地を決める。金属の枠は光を反射し、縄は光を通さない。異なる性質の2つの素材だけで構成されている。

素材への態度

ケアホルムは鋼を、木と同じように扱うべき素材として捉えていた。デンマークの家具が木を中心としていた時期に、工業的な素材を構造の中心に置いている。

PK25では鋼と縄という2種類の素材だけを用い、それぞれを1つの部材に絞った。この方針が、後年の作品にも引き継がれている。

エピソード

卒業制作として

この椅子は、コペンハーゲンの工芸学校における最終課題として設計された。制作の依頼や商業的な生産の予定を前提としない条件のもとで成立している。

ケアホルムは家具職人としての訓練を経て同校に進んでいる。木工の技術を身につけたうえで、卒業制作に鋼を選んだことになる。

製造の経緯

卒業後、ケアホルムはフリッツ・ハンセンに在籍し、複数の試作を手がけた。1955年からはエイヴィン・コルド・クリステンセンとの協働に移り、以後の作品はこの体制で製造されている。

1982年、ケアホルムの死去から2年を経て、フリッツ・ハンセンが1951年から1967年にかけての作品群の製造と販売を引き受けた。PK25もこのコレクションに含まれ、当時の図面にもとづいて製造されている。

評価と影響

一般的に、ケアホルムの仕事の出発点にあたる作品として扱われている。学生の課題として設計されたものが、そのまま長期の生産に至った例でもある。

枠を1本の鋼で構成するという方針は、後年のPK22 ラウンジチェアをはじめとする作品にも引き継がれた。フリッツ・ハンセンはPK22の枠の断面をPK25に由来するものとして説明している。

基本情報

デザイナー ポール・ケアホルム
ブランド フリッツ・ハンセン
発表年 1952年
デザインの成立国 デンマーク
別称 エレメントチェア
主要素材 ばね鋼(艶消しのクロムめっき)、旗を揚げるための縄
縄の色 ナチュラルと黒から選ぶ

Reference

PK25 chair designed by Poul Kjaerholm | Fritz Hansen
https://www.fritzhansen.com/en/categories/by-series/pk25/pk25
Poul Kjaerholm | Fritz Hansen
https://www.fritzhansen.com/en/inspiration/designers/poul-kjaerholm