概要

ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(1886-1969)は、ドイツ出身でのちにアメリカで活動した建築家である。家具では、1927年からの鋼管による一連の椅子と、1929年のバルセロナチェアが知られる。前者は管の弾性で身体を支え、後者は帯鋼を交差させた形をとる。1930年から1933年までバウハウスの校長を務めた。

バイオグラフィー

1886年3月27日、ドイツのアーヘンに石工の子として生まれた。専門的な建築教育は受けておらず、製図工として実務から入っている。

1908年から1912年までペーター・ベーレンスの事務所に勤めた。同時期にはヴァルター・グロピウスとル・コルビュジエも在籍している。

1927年、シュトゥットガルトのヴァイセンホーフ・ジードルングの企画を担当し、この機会に鋼管の椅子MRを設計した。1929年にはバルセロナ万国博覧会のドイツ館を設計し、その内装のためにバルセロナチェアを制作している。

1930年から1933年までバウハウスの校長を務めた。1938年にアメリカへ渡り、イリノイ工科大学で教えながら設計を続けた。1969年8月17日、シカゴで没している。

デザインの思想と方法

ミースの家具は、いずれも金属の材料の性質を構造として使う。鋼管は曲げに耐えつつ弾性を持ち、帯鋼は曲率をつけると剛性が出る。どちらも部材を細く保ったまま荷重を受けられる。

鋼管の弾性で身体を受ける

MRの系列は、一本の鋼管を曲げて脚と座枠を構成する。前脚が弧を描いて床に接するため、後脚を持たない。座ると管がわずかにたわみ、詰め物なしで沈む感覚が得られる。管の直径と曲率が、そのままたわみ方を決める。

帯鋼を交差させる

バルセロナチェアは、平らな帯鋼をX字に交差させて脚とする。帯は曲率をつけることで剛性が出るため、断面が薄くても荷重に耐える。交差する点で溶接し、そこに革張りのクッションを載せる。

接合部を見せない

バルセロナチェアの当初の版は、溶接部を研磨して継ぎ目を消していた。一本の材から曲げ出したように見せるための処理で、手間がかかる。1950年からノルが生産する際、材料をステンレスの一体材に変えている。

建物のために設計する

MRはヴァイセンホーフの住宅群のため、バルセロナチェアは万博のドイツ館のために作られた。いずれも単体の製品としてではなく、特定の空間の一部として構想されている。

代表作にみる方法

MRチェア(1927年)

一本の鋼管を曲げて脚と座枠を構成した椅子である。前脚が弧を描いて床に接し、後脚を持たない。座ると管がたわみ、詰め物なしで沈む感覚が得られる。ヴァイセンホーフ・ジードルングのために設計された。→MRチェア

バルセロナチェア(1929年)

平らな帯鋼をX字に交差させて脚とし、革張りのクッションを載せた椅子である。帯は曲率をつけることで剛性が出るため、断面が薄くても荷重に耐える。バルセロナ万博のドイツ館のために制作された。1950年からノルが生産している。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号552.1953)。→バルセロナチェア

バルセロナ オットマン(1929年)

椅子と組で用いる腰掛けである。同じ帯鋼の構成をとり、脚は交差せずに平行に配される。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号415.1976)。→バルセロナオットマン

ブルーノチェア(1929-30年)

チェコのトゥーゲントハット邸のために設計した椅子である。鋼管を片持ちに曲げ、肘掛けまで一続きとする。食卓用として、MRより座面を高く背を低くしている。ニューヨーク近代美術館が複数点を収蔵している。→ブルノチェア

バルセロナ デイベッド(1930年)

脚を持つ台に、革張りのマットレスを載せた寝椅子である。同じ系列の構成による。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号416.1976)。→バルセロナ デイベッド

評価と影響

ミースは一般に、20世紀の建築を代表する設計者の一人と評価されている。家具では、鋼管と帯鋼という金属材料の性質を構造として使った点が挙げられる。

1930年から1933年までバウハウスの校長を務めた。同校の閉鎖後、1938年にアメリカへ渡り、イリノイ工科大学で教えながら設計を続けている。

バルセロナチェアは1950年からノルが生産し、現在も続いている。MRの系列はトーネットとノルが生産する。いずれも特定の建物のために作られたものが、独立した製品として流通した例にあたる。

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したところ、建築の図面と資料を含めて多数が確認できた。とくにMoMAは「Mies van der Rohe Archive」として16,000点を超える建築資料を収蔵しており、その大半は図面と模型にあたる。以下は家具に限った抜粋である。

  • MoMA MR サイドチェア(1927年) 収蔵番号 99.1943、22.1949、23.1949、575.1963
  • MoMA MR アームチェア(1927年) 収蔵番号 20.1949
  • MoMA MR20 アームチェア(1927年) 収蔵番号 153.2002
  • MoMA MR コーヒーテーブル(1927年) 収蔵番号 474.1970、410.1976
  • MoMA ブルーノチェア(1929-30年) 収蔵番号 411.1976、445.1956、446.1956、478.1978.1-2
  • MoMA トゥーゲントハット チェア(1929-30年) 収蔵番号 413.1976、414.1976
  • MoMA バルセロナ オットマン(1929年設計) 収蔵番号 415.1976
  • MoMA トゥーゲントハット コーヒーテーブル(1930年設計) 収蔵番号 161.1958.a-b
  • MoMA カウチ(1930年設計) 収蔵番号 416.1976
  • MoMA MR シェーズロング(モデル104、1931年) 収蔵番号 295.1976
  • MoMA MR ラウンジチェア(モデル34、1931年設計) 収蔵番号 297.1976
  • MoMA バルセロナチェア(1929年設計) 収蔵番号 552.1953
  • V&A MR チェア(1926年) 収蔵番号 CIRC.101-1970
  • V&A MR20 アームチェア(1927年) 収蔵番号 CIRC.861-1968
  • Met MR アームチェア(1927年) 収蔵番号 1980.351
  • Met MR スツール(1927-30年) 収蔵番号 1999.17
  • Met ブルーノ アームチェア(1930年頃) 収蔵番号 1987.19

作品一覧

家具

発表年 区分 作品名 ブランド
1927年 椅子 MRチェア Thonet / Knoll
1929年 椅子 バルセロナチェア Knoll
1929年 オットマン バルセロナオットマン Knoll
1929-30年 椅子 ブルノチェア Knoll
1929-30年 椅子 トゥーゲントハット チェア Knoll
1930年 寝椅子 バルセロナ デイベッド Knoll
1931年 シェーズロング MR シェーズロング(モデル104) Thonet

建築(抜粋)

区分 作品名 場所
1927年 集合住宅 ヴァイセンホーフ・ジードルング(企画・一部設計) シュトゥットガルト、ドイツ
1929年 展示館 バルセロナ万博 ドイツ館 バルセロナ、スペイン
1930年 住宅 トゥーゲントハット邸 ブルノ、チェコ
1951年 住宅 ファンズワース邸 イリノイ州、アメリカ
1951年 集合住宅 レイクショア・ドライブ 860-880 シカゴ、アメリカ
1958年 オフィス シーグラム ビル(フィリップ・ジョンソンと共同) ニューヨーク、アメリカ
1968年 美術館 ノイエ・ナツィオナルガレリー ベルリン、ドイツ

プロフィール

生没年 1886年3月27日〜1969年8月17日
出身地 ドイツ・アーヘン
国籍 ドイツ(のちアメリカ)
活動拠点 ベルリン、シカゴ
分野 建築、家具
主な協働ブランド Knoll、Thonet、Tecta

Reference

Mies van der Rohe Archive | The Museum of Modern Art
https://www.moma.org/collection/works/2325
Mies van der Rohe | Knoll
https://www.knoll.com/designer/Ludwig-Mies-van-der-Rohe
Fundació Mies van der Rohe
https://miesbcn.com/
The Metropolitan Museum of Art Collection
https://www.metmuseum.org/art/collection
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/