概要

ブルノチェアは、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが1929年から1930年にかけて設計したアームチェアである。チェコのブルノに建つトゥーゲントハット邸のために設計された。後脚を持たず、一本の材が背から座、アームレストへと回り込むカンチレバー構造をとる。現在はノルが製造している。

特徴・コンセプト

C字に回り込むフレーム

フレームは背もたれの上端から前方へ下り、座面の前縁を通って床に接し、そこから後方へ折れて座面下へ戻る。途中でアームレストの高さを通るため、肘掛けを別に取り付ける必要がない。後脚を置かないぶん床との接点が減り、椅子の下に視線が抜ける。荷重がかかるとフレーム全体がわずかにしなり、詰め物を厚くしなくても弾力が得られる。

トゥーゲントハット邸の食堂では、この椅子が円形のテーブルを囲んでいた。後脚がないため、テーブルの下で脚どうしが干渉しない。

二つの断面

フレームには丸パイプを用いた仕様と、平鋼を用いた仕様がある。丸パイプは曲げ加工がしやすく、連続した曲線を描ける。平鋼は同じ断面積でも曲げに強い方向を持つため、材を薄く見せながら剛性を確保できる。トゥーゲントハット邸では、丸パイプ版が食堂に、平鋼版が主寝室に置かれた。

座面と背もたれは、フレームとの接合部が張り地の内側に収まる。外から見ると、座面がフレームに載っているのではなく、宙に保たれているように見える。

エピソード

1928年、繊維業を営むフリッツとグレーテのトゥーゲントハット夫妻は、新居の設計をミースに依頼した。建物だけでなく、家具や金物に至るまでが設計の対象となった仕事である。ブルノチェアはその内装のために設計された。

平鋼版は、当初この邸宅のために作られたものの、長く量産されなかった。1958年、建築家フィリップ・ジョンソンがニューヨークのシーグラムビル内にあるフォーシーズンズ・レストランのためにノルへ製造を依頼したことで、量産が始まる。以後、ノルは両仕様を製造している。

トゥーゲントハット家は1938年に亡命し、邸宅はその後接収されて損傷した。1960年代から修復が始まり、2001年にユネスコの世界遺産に登録されている。

評価と影響

後脚を持たない椅子は、1920年代後半にマルト・スタムやマルセル・ブロイヤーが先に手がけている。ミースはその構造を、背から肘、床までを一本の線でつなぐ形にまとめた。フレームにはノルのロゴとミースの署名が刻印される。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は複数点を登録している。クロームメッキ鋼管と子牛のパーチメントによる一脚(収蔵番号411.1976、フィリップ・ジョンソンからの寄贈)、クロームメッキの平鋼・木・革による二脚(445.1956、446.1956)、クロームメッキ鋼管と革による二脚組(478.1978.1-2)である。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は1930年の一脚を収蔵番号CIRC.85-1969で、メトロポリタン美術館は1930年頃の一脚を収蔵番号1987.19で登録している。

基本情報

名称 ブルノチェア / Brno Chair
デザイナー ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)
ブランド ノル(Knoll)
発表年 1929〜1930年
デザインの成立国 ドイツ
分類 アームチェア/ダイニングチェア
構造 カンチレバー(後脚なし)/丸パイプ版・平鋼版の2種
主要素材 クロームメッキスチールまたはステンレススチール、レザーまたはファブリック
初出 トゥーゲントハット邸(ブルノ、2001年ユネスコ世界遺産登録)
収蔵 ニューヨーク近代美術館(411.1976、445.1956、446.1956、478.1978.1-2)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(CIRC.85-1969)、メトロポリタン美術館(1987.19)

Reference

Brno Chair | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/3506
"BRNO" Armchair | The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/1987.19
Brno chair | Victoria and Albert Museum
https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=CIRC.85-1969