概要

バルセロナチェアは、1929年のバルセロナ万国博覧会ドイツ館のために設計された椅子である。X字に交差するフレームと、革を張ったクッションで構成される。ドイツ館の開会式にはスペイン国王夫妻の臨席が予定されており、その場に置く椅子として構想された。1953年からノルが製造している。組で用いるバルセロナオットマンも同時に設計された。

特徴・コンセプト

X字のフレーム

フレームは、前脚から背もたれへ向かう材と、後脚から座面前縁へ向かう材が側面で交差するX字を描く。ノルは、この交差する構成が古代ローマの折りたたみ式の椅子に由来すると考えられていると説明している。交差点を側面に置くことで、座面と背もたれを支える横材が前後に現れず、両者が枠の内側に浮いて見える。

1929年の当初のフレームは、クロームメッキした鋼材をボルトで接合したものであった。1950年の設計の見直しでステンレススチールが採用され、継ぎ目のない一体のフレームになっている。ノルの現行品はスチールのフレームを手作業で研磨し、クロームめっきの鏡面仕上げと、艶消しのオニキス仕上げの2種から選べる。

革を分けて縫う

座面と背もたれのクッションは、40枚の四角い革を縫い合わせてつくられる。1枚の革で覆うのではなく分割するのは、詰め物で膨らんだ面に平らな革を沿わせるためである。縫い目にはウェルトが入り、ボタンで留められる。レザー仕様では40枚すべてを1枚の牛革から裁つ。クッションは革のベルトでフレームに保持される。

エピソード

ドイツ館は、ワイマール共和国を代表する建物としてミース・ファン・デル・ローエが設計したものである。博覧会の終了後に解体されたが、1983年から1986年にかけて当初の図面をもとに同じ場所へ再建された。

バルセロナ館の設計と家具については、ミースと協働したリリー・ライヒの関与を認める見方が近年広がっている。ライヒは1920年代にドイツ工作連盟で初の女性理事を務め、スチールパイプの家具も手がけた。ただしノルとニューヨーク近代美術館の登録記録は、いずれもミース単独の作として記載している。

評価と影響

1953年にノルが製造を始めて以来、生産が途切れていない。フレームにはノルのロゴとミースの署名が刻印される。手作業に依る工程が多く、大量生産による低価格化とは異なる方向にある点は、当時のモダニズムが掲げた理念との関係で論じられることがある。現在はクッションの硬さ(標準とリラックス)と、レザー、スエード、ファブリックの選択肢が用意されている。

受賞・収蔵

ニューヨーク近代美術館は、ステンレススチールと革によるバルセロナチェアを収蔵番号552.1953で登録している(1954年取得、製造元からの寄贈。設計1929年、この個体は1953年製)。

基本情報

名称 バルセロナチェア / Barcelona Chair
デザイナー ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)
ブランド ノル(Knoll/1953年〜)
発表年 1929年
分類 ラウンジチェア
主要素材 スチールフレーム(研磨クロームめっき、または艶消しオニキス仕上げ)、40枚に分けて縫う革のクッション(スエード・ファブリックも選択可)
サイズ 幅750 × 奥行770 × 高さ770mm。座面の高さ430mm
組み合わせ バルセロナオットマン
初出 1929年 バルセロナ万国博覧会 ドイツ館
収蔵 ニューヨーク近代美術館(552.1953)

製造元の変遷

期間 製造元 形態 地域 根拠
1948年〜(現在) ノル ライセンス生産(許諾元:ミース・ファン・デル・ローエ) 記載なし 製造元の公式サイト

確認日:2026年10月21日 製造元・ライセンス台帳

Reference

Barcelona Chair | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/4369
Barcelona Stool | Knoll International(バルセロナ・コレクションの由来について)
https://www.knoll-int.com/home/by-designer/classic-designers/ludwig-mies-van-der-rohe/barcelona-stool