Eurolounge(ユーロラウンジ)
Eurolounge は、1994年にロンドンで設立された照明の企画・販売会社である。設計者の Tom Dixon が、自身の樹脂の製品を量産するために設けた。回転成形によるポリエチレンの成形を外部の業者に委託し、設計と販売を自社が担う構成を採った。事業の中心は、最初の製品となった照明ジャックである。法人としての Eurolounge Limited は1996年に登記され、2012年に解散した。
事業と製造の実体
Eurolounge は成形の設備を持たない会社だった。英国 Companies House の登記でも業種は「その他家庭用品の卸売」とされ、製造業としての登録はない。製品の設計と仕様の決定、販売を自社が担い、樹脂の成形は外部へ発注する分担にあたる。
製造の性格を決めているのは回転成形である。粉末の樹脂を金型の内側に溶着させて中空の部品を得るこの方法は、当時は道路の車止めや屋外の什器といった大型の成形品に使われていた。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)の収蔵記録は、Tom Dixon がこの方法を選んだ理由を、金型が安価で標準的な設備で回せる点に置いている。設備投資を負わずに量産へ進める道があったことが、設計者が自ら会社を持つ条件をつくった。英国の Museum of Design in Plastics の記録によれば、形は同じ部品を六つ組み合わせたもので、その一つずつを一個の金型で成形する。型を一種類で済ませる構成にあたる。
素材は低密度のポリエチレンである。着色した粉末を用いるため色の切り替えに金型の変更を伴わず、V&A には白・黄・橙・蓄光の4種が収まっている。塗装ではなく素材そのものの色であり、表面は艶のない肌になる。
成形の発注先は途中で変わっている。初期の個体はサマセットの Wyedale という農業機械のメーカーが成形し、のちにマンチェスターの Mailbox という、より規模の大きい樹脂製品のメーカーへ移った。この移管は形にも表れており、後期の個体には接地部に突起が加えられて樹脂が擦れないようになった。それまで上下の区別がなかった形に上下が生まれたのはこのときである。灯具を通す穴の処理も、初期の粗いものから整えられた。
沿革
設立の経緯
1980年代の Tom Dixon は、廃材の鋼を溶接した家具で知られた設計者だった。樹脂の製品に取り組むにあたり、製作を任せられる相手を探したが見つからず、自分で会社を作る道を選んだ。1994年の Eurolounge 設立はこの経緯による。V&A の収蔵記録も、樹脂の仕事のための受け皿として設けられた会社と記している。
法人化と量産
Eurolounge Limited が登記されたのは1996年6月17日で、Tom Dixon は同日付で取締役に就いている。ブランドとしての設立年である1994年と法人の設立年が二年ずれているのは、会社の形を整える前から Eurolounge の名で活動していたためである。量産が始まったのもこの年で、V&A が収蔵する個体は1997年の製造にあたる。
V&A の収蔵記録によれば、最初の製品は発売から半年で1200台が出ている。成形を外部に委託する体制のまま、量産と呼べる規模に達したことになる。
創業者の移籍と会社の終わり
1998年、Tom Dixon は小売企業 Habitat のデザイン部門の責任者に就任した。2002年には自身の名を冠したTom Dixon を設立している。Eurolounge はその後も製造の担い手として残り、2007年に作られた個体には、製造者を Eurolounge、供給先を Tom Dixon とする記録が残っている。
2009年9月22日、Tom Dixon と共同の取締役はともに退任し、役員が交代した。登記簿に残る最後の計算書類は2010年6月期のもので、2012年3月に登記抹消を申請し、同年7月17日に解散している。倒産による整理ではなく、自主的な抹消の手続きによる。
最初の製品だった照明ジャックは、現在は Tom Dixon の製品として扱われ、充電式で屋外に対応する形に作り直されている。
デザイナーとの協働
Eurolounge は外部の設計者を起用していない。創業者一人の設計を製造・販売するための会社であり、社内にデザイン部門を置く家具メーカーとも、外部の設計者に委嘱して製品化するメーカーとも成り立ちが異なる。設計者の側が、自分の設計を量産するために製造と販売の仕組みを用意した例にあたる。
Tom Dixon の設計思想や経歴について詳しくはTom Dixon プロフィールページをご覧ください。
受賞と収蔵
最初の製品は1997年、英国のミレニアム・マーク(Millennium Mark Award for Great British Design)を受けている。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、Eurolounge Ltd を製造者として同じ製品を4点収蔵している。収蔵番号は W.8-1997(白)、W.9-1997(黄)、W.10-1997(橙)、W.11-1997(蓄光)で、いずれも1996年設計・1997年製造として登録されている。
英国アーツ大学ボーンマスの Museum of Design in Plastics は、2007年製の個体を収蔵している(資料番号 AIBDC:005550)。
基本情報
| ブランド名 | Eurolounge(ユーロラウンジ) |
|---|---|
| 設立 | 1994年(法人登記は1996年6月17日) |
| 創業者 | Tom Dixon |
| 本社所在地 | イギリス・ロンドン |
| 事業内容 | 回転成形によるポリエチレン照明の企画・販売(成形は外部委託) |
| 法人番号 | 03212957(英国 Companies House、Eurolounge Limited) |
| 現況 | 2012年7月17日に解散 |
Reference
- Jack light, Victoria and Albert Museum (W.10-1997)
- https://collections.vam.ac.uk/item/O50047
- Jack light, Victoria and Albert Museum (W.8-1997)
- https://collections.vam.ac.uk/item/O49855
- EUROLOUNGE LIMITED - Find and update company information, Companies House
- https://find-and-update.company-information.service.gov.uk/company/03212957
- Jack Fluoro Red, Museum of Design in Plastics (AIBDC:005550)
- https://www.modip.ac.uk/artefact/aibdc-005550
- Tom Dixon - Domus
- https://www.domusweb.it/en/biographies/tom-dixon.html
- The Jack Collection - Tom Dixon
- https://www.tomdixon.net/us/jack