概要
パンター&トゥーロンは、2016年にステファノ・パンテロットとアレクシス・トゥーロンがスイスのローザンヌで設立した設計事務所である。他産業の技術を家具に持ち込み、移動と可変を前提とする住まいを主題とする。製品の設計に加えて、企業への助言と研究も業務に含む。
スタジオの概要
パンター&トゥーロン(Panter&Tourron)は、イタリア出身のステファノ・パンテロット(1988年生まれ)とフランス出身のアレクシス・トゥーロン(1991年生まれ)が2016年にスイスのローザンヌで設立したデザインスタジオである。
二人はローザンヌ州立美術大学(ECAL)で出会い、2015年に「Design for Luxury and Craftsmanship」の修士課程を修了した。翌2016年、設計とコンサルティングの両方を扱うスタジオを共同で設立している。現在はECALで教える立場にもある。
活動範囲はプロダクトデザイン、インテリアデザイン、クリエイティブ・コンサルティングに及ぶ。家具メーカーだけでなく、テクノロジー企業や研究機関との協働も多い。ヴィトラとは2023年から協働している。
デザインの思想とアプローチ
スタジオの出発点は素材研究と技術的な検証にある。トゥーロンは、形を先に描くのではなくデータから設計すると述べており、形を決めるのは機能であるという立場をとる。
他産業の技術を家具へ
二人は家具産業を、素材研究の点で技術の導入が遅れた分野として捉えている。テクノロジー、ファッション、自動車の各産業で確立した素材と工法を家具へ持ち込むという方針が、初期の研究プロジェクトから一貫している。
移動と可変を前提とする住まい
2019年の研究プロジェクト「Tense」は、居住地が固定されない世代のための家具という主題を扱った。テーブル、椅子、ペンダントランプ、ウォールランプ、間仕切りスクリーンの5点で構成され、全体の重量は20kg未満。工具を使わず、張力だけで形状を保つ。この研究がのちのヴィトラとの仕事の下地となっている。
設計者の役割の再定義
トゥーロンは、かつての設計者はエンジニアや建築家であり、良い仕事をする人々であって有名人ではなかったと述べ、現在のデザインスタジオがその感覚を失ったと指摘している。量産品に関わる以上、設計者は環境に対する責任を負うべきだという立場も明確にしている。
作品の特徴
軽量化、分解可能性、素材の単純化という三つの制約を自ら課したうえで、そこから形を導く。結果として、接着剤や複合素材を避ける構成が多い。
- 張力による構造
- Tenseの各アイテムは、接合金物ではなく張力で形状を保つ。部材の点数を減らし、輸送重量を抑えることに直結する
- 接着とフォームの回避
- ヴィトラのアナグラム ソファでは、ウレタンフォームと接着剤の使用を避ける構成が採られ、部材ごとの分別と交換が可能になっている
- 再生材の使用
- アナグラムの脚はリサイクルアルミニウム、背クッションの詰め物は使用済み製品由来のリサイクルPET繊維100%を用いる
- 研究プロジェクトからの展開
- IKEAの研究機関Space10との「Couch in an Envelope」やTenseで得た知見を、量産品の設計へ移す進め方をとる
- デジタル領域との横断
- 家具に限らず、AIを用いた開発や映像・展示のディレクションも扱う。ミラノ・デザインウィークでの展示も継続している
主な代表作とその特徴
家具
11種類の部材からなるモジュラーソファ。プラットフォーム状の台座を島として扱い、四方向すべてに他のモジュールを接続できる。背もたれやサイドパネルは着脱式で、購入後の組み替えに対応する。ウレタンフォームと接着剤を避けた構成、リサイクルアルミニウムの脚、リサイクルPET繊維の詰め物など、分別と交換を前提とした設計になっている。
Tense(2019年)
自主研究として制作された5点の家具コレクション。テーブル、椅子、ペンダントランプ、ウォールランプ、スクリーンからなり、全体で20kg未満。工具不要で組み立てられ、張力によって形状が保たれる。2019年のミラノ・デザインウィークでAlcovaにて発表され、同年のDezeen Awardsで家具デザイン部門の年間賞を受けた。
研究プロジェクト
Couch in an Envelope(Space10と共同)
IKEAの研究機関Space10との共同で、ソファを軽量かつ折りたためる座具として捉え直した企画。AIを設計過程の協働者として用いた点も特徴となっている。
Terra(Modem Worksと共同)
携帯電話を持たずに歩くための「コンパス」として構想されたオープンソースの機器。AIを用いた開発と、アウトドア衣料に近い外観をあわせもつ。
Diurno(ミラノ・デザインウィーク)
居間の過去と未来を主題としたインスタレーション。実験的な家具と映像を組み合わせた構成をとる。
功績・業績
- 2015年 ECALで Design for Luxury and Craftsmanship の修士課程を修了
- 2016年 ローザンヌにスタジオを設立
- 2019年 Tenseをミラノ・デザインウィークのAlcovaで発表
- 2019年 Dezeen Awards 家具デザイン部門 年間賞受賞(Tense)
- 2023年 ヴィトラとの協働を開始
- 2024年 アナグラム ソファをヴィトラから発表
評価・後世に与えた影響
パンター&トゥーロンは、家具設計に環境と物流の条件を先に置く世代の代表例として扱われている。造形の新しさではなく、重量、分解可能性、素材の単純化といった数値化できる制約から形を導く方法が評価の対象になっている。
2019年のTenseは自主研究でありながらDezeen Awardsの年間賞を受け、研究プロジェクトが商業的な受注に先行するという進め方を示した。その後のヴィトラとの協働は、この研究の成果を量産の枠組みへ移した例にあたる。
アナグラム ソファでフォームと接着剤を避けた構成が採用されたことは、修理と分別を前提とする設計が、大手メーカーの主力製品でも成立することを示した。設計者が量産品に対して環境上の責任を負うべきだという二人の主張が、製品の仕様として具体化された形になっている。
収蔵
4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。スイス国内の館については照合手段がない。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2019年 | 家具 | Tense(テーブル・椅子・照明2種・スクリーン) | - |
| 2020年代 | 研究 | Couch in an Envelope(Space10と共同) | - |
| 2020年代 | プロダクト | Terra(Modem Worksと共同) | - |
| 2024年 | ソファ | アナグラム ソファ | Vitra |
| 2024年 | 展示 | Diurno(ミラノ・デザインウィーク) | - |
スタジオ情報
| 設立 | 2016年 |
|---|---|
| 創設者 | ステファノ・パンテロット、アレクシス・トゥーロン |
| 拠点 | スイス・ローザンヌ |
| 分野 | 家具、什器、展示、研究 |
| 主な協働ブランド | Vitra |
Reference
- Panter&Tourron - Vitra
- https://www.vitra.com/en-us/product/designer/panter-and-tourron
- Panter&Tourron 公式サイト
- https://www.pantertourron.com/
- Vitra and Panter & Tourron avoid foam and glue in future-minded Anagram sofa - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2024/07/01/vitra-panter-tourron-anagram-sofa-design/
- Tense by Panter & Tourron - Dezeen Awards 2019 Winners
- https://www.dezeen.com/awards/2019/winners/tense-panter-tourron/
- Panter & Tourron create ultra-light and tool-free furniture for global nomads - Dezeen
- https://www.dezeen.com/2019/04/16/panter-tourron-tense-flat-packed-furniture/
- Panter&Tourron - smow
- https://www.smow.com/panter-tourron
- Vitra Debuts a Sofa System of the Future by Panter&Tourron - COOL HUNTING
- https://coolhunting.com/design/3-days-of-design-vitra-debuts-a-sofa-system-of-the-future-with-pantertourron-named-anagram/