ノーマン・チャーナー

ノーマン・チャーナー(Norman Cherner, 1920〜1987)は、アメリカの建築家・デザイナーである。成型合板を用いた彫刻的なチェアで広く知られ、なかでも1958年に手がけた通称チャーナー チェアは、ミッドセンチュリー・モダンを代表する成型合板家具のひとつとして親しまれている。家具にとどまらず、照明や収納、そして低コストのプレファブ住宅までを一貫した思想のもとで手がけた点に、その仕事の特色がある。

バイオグラフィー

1920年、ニューヨーク・ブルックリンに生まれる。コロンビア大学の美術(ファインアート)課程で学び、のちに同大学で教鞭を執った。1947年から1949年にかけてはニューヨーク近代美術館(MoMA)でインストラクターを務め、当時アメリカで注目を集めていたバウハウスの理念について講義を行っている。この時期に深めたバウハウス的な関心が、分野を横断するその後の設計活動の土台となった。

チャーナーは、あらゆるデザインは一つの規律から生まれるという信念のもと、家具・収納・ガラス器・照明・玩具、さらには住宅までを地続きの課題として捉えた。とりわけ工業的手法による低コスト住宅の分野では先駆的な役割を果たし、住宅を家具や照明まで含めた総合的なデザインとして構想している。その最初の成果が、1948年にニューヨーク州ラマポの協同組合向けに手がけたモジュール式の低コスト住宅で、住まいに合わせた手頃な家具もあわせて設計された。こうした関心は著作にも表れ、『Make Your Own Modern Furniture』(1953年)や『Fabricating Houses from Component Parts』(1958年)など、手の届くデザインをテーマとする実用書を複数著している。

1957年に手がけたプレファブ住宅「プレビルト(Pre-built)」は、米国の住宅行政機関(U.S. Department of Housing)向けに設計・製造・組立てが行われ、ウィーンでの展示を経てコネチカット州へ運ばれた。この住宅はニューヨーク市外における自邸兼スタジオとなり、息子ベンジャミンとトーマスもこの地で育った。チャーナーは1987年に世を去った。

デザインの思想とアプローチ

チャーナーの仕事を貫くのは、戦後の技術革新をいかに家具や建築へ取り込むかという問いである。工業生産と経済性を前提としながら、成型合板や積層材といった素材の特性を活かし、無駄のない有機的な造形へと導いた。バウハウスに学んだ学際的な姿勢は、ジャンルを横断する多彩な作品群に一貫して表れている。手頃な価格で良質なデザインを広く行き渡らせるという理念は、住宅から家具、収納、照明に至るまで、その活動全体を通じて保たれた。

主な代表作とエピソード

チャーナーの名を広く知らしめたのは、マサチューセッツ州ローレンスの製造会社プライクラフト(Plycraft)のために1958年に設計した成型合板の椅子である。薄いプライを積層して成型したシェルと、蒸気曲げによる無垢材のアームを組み合わせ、軽やかで彫刻的な佇まいを備える。細く括れた側面のシルエットから、後年「プレッツェル・チェア」の通称でも呼ばれるようになった。

この椅子の誕生には込み入った経緯がある。原型となったのは、ジョージ・ネルソンのスタジオに在籍したジョン・パイルが手がけた積層合板の椅子で、構造上の弱さと製造コストの高さという課題を抱えていた。ハーマンミラーからの委託でこれを製造していたプライクラフトは、より丈夫で量産に適した設計への刷新を求め、ネルソンの推薦を受けてチャーナーに再設計を依頼した。ところがチャーナーが図面を提出したのち、計画は中止になったと伝えられる。実際にはプライクラフトが「Bernardo」という架空の名義で生産を進めており、自身のデザインがニューヨークで販売されているのを見つけたチャーナーは同社を提訴した。裁判の結果、名義が架空であったことが認められ、チャーナーには正当な名義表示とロイヤリティの支払いが認められている。椅子は1961年9月、ノーマン・ロックウェルが同誌のために描いた表紙画「The Artist at Work」に登場したことで、いっそう知られるようになった。

このほかの代表的な仕事に、金属脚と突板を組み合わせた家具・照明の「コンウィザー・ライン(Konwiser Line)」がある。1951年にシカゴ・マーチャンダイズ・マートで、MoMAのグッドデザイン展の一環として発表され、チャールズ&レイ・イームズやフローレンス・ノル、ジョージ・ネルソンらの仕事と並んで紹介された。また、モジュール式の収納システム「マルチフレックス(Multiflex)」の「スタジオ・グループ」は、家具に「カーテンウォール」の原理を応用したもので、1954年のMoMAグッドデザインに選定され、ネルソンの著書『Storage』にも取り上げられた。チューブ状の照明なども手がけている。

評価と後世への影響

プライクラフトは1972年に工場を焼失するまでチャーナーの椅子を生産し続けたが、その後この椅子は長く市場から姿を消した。1999年、二人の息子ベンジャミンとトーマスがチャーナー・チェア・カンパニーを設立し、父のオリジナル図面と仕様に基づいて生産を再開する。現在は椅子・スツール・テーブル・収納家具として作り続けられており、チャーナーの造形はミッドセンチュリー・モダンを語るうえで欠かせないものとして、世代を越えて受け継がれている。

作品一覧

区分 作品名 ブランド・製造
1948年 住宅 ラマポ協同組合住宅(Ramapo, NY)
1951年 家具・照明 Konwiser Line(コンウィザー・ライン) Konwiser
1954年 収納 Multiflex「Studio Group」収納システム Multiflex Corp.
1957年 住宅 Pre-built(プレビルト/プレファブ住宅)
1958年 椅子 チャーナー チェア(Cherner Chair) Plycraft(後にCherner Chair Company)

Reference

Cherner Chair Company — About Us
https://chernerchair.com/pages/about-2
Core77 — Revisiting and Revising Design History: George Nelson Associates, Irving Harper and a Pair of Chairs
https://www.core77.com/posts/24294/
1stDibs — Norman Cherner
https://www.1stdibs.com/creators/norman-cherner/