概要
ハーヴェイ・プロバー(1922-2003)は、アメリカの家具デザイナーである。1940年代に、楔形・四分円・半円といった平面図形を単位とする座具の体系をつくり、単位を組み合わせて任意の平面形を構成できるようにした。「モジュラー」という語を家具に用いた早い例にあたる。冷間硬化型のウレタンフォームをアメリカの家具生産に導入したことでも知られる。
バイオグラフィー
1922年9月17日、ニューヨーク州ブルックリンに生まれた。16歳のとき、中古家具店で働きながら最初の長椅子の設計を売っている。高校卒業後はマンハッタンの家具店に勤めた。
第二次世界大戦中は沿岸警備隊に従軍した。1944年に共同で家具会社を設立したのち、製品の管理を自ら行うため単独での製造を選び、1945年に「ハーヴェイ・プロバー社」を設立している。
1948年、ニューヨーク五番街にインテリアデザイナー向けの展示室を開いた。これは同種のものとしては最初期にあたる。1967年までに主要5都市へ展示室を広げている。
1970年代には住宅向けから契約家具(事務所向け)へ軸足を移した。1986年に工場を売却して引退し、自身の名前と設計の権利は保持している。2003年2月16日、コネチカット州グリニッジで80歳で没した。
デザインの思想と方法
プロバーが扱ったのは、部屋の平面に合わせて座具の形を決められるかという問題である。長椅子は工場で一つの形に決まっており、置く場所の形状には合わせられない。彼は座具を分割し、平面図形を単位として供給することでこれに対処した。
平面図形を単位にする
単位として選んだのは、楔形、四分円、半円、正方形、長方形である。これらは単独では家具として意味をなさないが、組み合わせると直線・角・曲線のいずれの平面形にもなる。設計者が決めるのは単位の寸法と接合の方式で、最終的な形は使い手と部屋が決める。彼はこの体系を「モジュラーシステム」と呼んだ。
座面の高さと厚みを揃える
単位を任意に組み合わせるには、どの単位を隣接させても座面の高さと張りの厚みが一致している必要がある。輪郭の形が違っても断面は共通、という条件が体系の前提になる。この制約が、彼の家具の水平線が揃って見える理由でもある。
新しい詰め物を導入する
冷間硬化型のウレタンフォームは、金型で成形でき、密度を場所ごとに変えられる。従来のスプリングと詰め物の組み合わせに比べて、複雑な輪郭の単位を安定した品質で量産できる。単位を多数そろえる体系には、この材料が適していた。
工業材料を家具に転用する
1950年代のテラゾーテーブルでは、通常は床材に用いるテラゾーを天板に使った。真鍮の象嵌を組み合わせ、彫刻的な木の支持部に載せている。材料の用途を移し替えることで、既存の分類にない家具をつくる方向にあたる。
代表作にみる方法
サートグループ(1940年代)
19種類の単位からなる座具の体系である。楔形、四分円、半円、長方形の単位を組み合わせ、直線状にも、角を回る形にも、円形にも構成できる。単位ごとに座面高と厚みが揃えられているため、どの順序で並べても水平線が連続する。建築家ホセ・ルイス・セルトに献名された。
スリングチェア(1948年)
弾性のある帯を枠に張って座面とする椅子である。詰め物を用いずに座り心地を得るため、断面が薄く済む。1951年にニューヨーク近代美術館の「グッド・デザイン」展に選ばれている。
テラゾーテーブル(1950年代)
床材として使われるテラゾーを天板に用いた卓の一群である。真鍮の象嵌で面を分割し、彫刻的に削り出したウォールナットの支持部に載せる。天板を着脱できる仕様もあり、重い天板と軽い脚部という組み合わせを分解して扱えるようにしている。
ディープ・タフト セクショナルソファ(1972年)
ウレタンフォームで深い房状の凹凸を成形した長椅子である。従来この意匠はボタンと糸で引き込んでつくられていたが、成形によって同じ形を安定して量産できる。鏡面のクロームの台座で床から浮かせ、体積の割に軽く見せている。
評価と影響
プロバーは一般に、座具を単位に分割して組み合わせる体系をつくった設計者と評価されている。この形式は現在、量販の家具でも標準的なものとなっており、起源が意識されにくいほど普及した。
同時代にはチャールズ・イームズやジョージ・ネルソンと並んで扱われることも多かったが、その後の記述では言及が少ない時期が続いた。2020年前後から、展覧会や再生産を通じて改めて検討されている。
冷間硬化型ウレタンフォームの導入は、家具の詰め物の工程を変えた。輪郭の自由度が上がったことで、単位を多数そろえる体系の実現が容易になっている。
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 1940年代 | ソファ | サートグループ(モジュラー座具の体系) | Harvey Probber Inc. |
| 1948年 | 椅子 | スリングチェア | Harvey Probber Inc. |
| 1950年代 | テーブル | テラゾーテーブル | Harvey Probber Inc. |
| 1950-60年代 | 収納 | クレデンザ/サイドボードの各種 | Harvey Probber Inc. |
| 1950-60年代 | デスク | ライティングテーブル/デスクの各種 | Harvey Probber Inc. |
| 1972年 | ソファ | ディープ・タフト セクショナルソファ | Harvey Probber Inc. |
| 1970年代 | 契約家具 | 事務所向けの座具・卓の各種 | Harvey Probber Inc. |
プロフィール
| 生没年 | 1922年9月17日〜2003年2月16日 |
|---|---|
| 出身地 | アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン |
| 国籍 | アメリカ |
| 活動拠点 | ニューヨーク、マサチューセッツ州フォールリバー |
| 分野 | 家具 |
| 主な協働ブランド | Harvey Probber Inc.、M2L(再生産) |
Reference
- Good Design | The Museum of Modern Art
- https://www.moma.org/calendar/exhibitions/history
- Harvey Probber | M2L
- https://www.m2lcollection.com/
- New York School of Interior Design
- https://www.nysid.edu/