概要

ジャンカルロ・ピレッティ(1940-2026)は、イタリアの家具・インダストリアルデザイナーである。1960年代からアノニマ・カステッリで設計を担当し、1967年にプリアチェアを発表した。3本の軸で座面・背・脚を折り畳む機構により、厚さ5センチほどまで畳める。1970年代後半にはエミリオ・アンバースとともに、機構を持たずに身体に追従する事務椅子ヴァーテブラを設計している。

バイオグラフィー

1940年、イタリアのボローニャに生まれた。同地の美術学校で学んでいる。

1960年代にアノニマ・カステッリへ入り、設計を担当した。同社はボローニャの家具メーカーで、事務用と住宅用の椅子を扱っていた。

1967年にプリアチェアを発表し、1969年から量産が始まった。以後、プロナ、プラトーネなど折り畳みの機構を持つ製品を続けて手がけている。

1970年代後半、エミリオ・アンバースと組んで事務椅子ヴァーテブラを設計した。1979年にコンパッソ・ドーロ賞を受けている。2026年に没した。

デザインの思想と方法

ピレッティが扱ったのは、椅子を使わないときにどれだけ小さくできるかという問題である。折り畳みの椅子は古くからあるが、多くは畳んでも厚みが残り、見た目も畳むための構造が前面に出る。彼はこの二つを同時に解こうとした。

回転軸を一箇所にまとめる

プリアチェアは、座面・背もたれ・脚の三つの部材を、一組の円盤状の金具で結ぶ。この金具の内部に3本の軸が同心に配され、三つの部材がそれぞれ独立して回転する。軸を分散させないため、畳んだときに部材が重なり、厚さが最小になる。

機構を見せる

回転の金具は隠されず、円盤としてそのまま外に現れる。どう動くかが外から読み取れるため、使い方の説明を必要としない。機構を意匠として扱うのではなく、機構がそのまま形になっている。

透明な座面で存在を減らす

座面と背もたれには透明のアクリルを用いた仕様がある。畳まずに置いた状態でも、部屋の中で視覚的な体積を持たない。折り畳みという機能と、置いたときの見え方の両方を扱っている。

機構を持たずに追従させる

1970年代後半のヴァーテブラでは、逆の方向をとった。座る人の姿勢に背もたれが追従する事務椅子だが、調整のためのレバーやノブを持たない。部材の弾性と支点の配置だけで追従を成立させている。エミリオ・アンバースとの共同設計にあたる。

代表作にみる方法

プリアチェア(1967年)

一組の円盤状の金具に3本の軸を同心に配し、座面・背もたれ・脚を独立して回転させる折り畳み椅子である。畳むと厚さ5センチほどになり、重ねて保管できる。座面と背には透明のアクリルを用いた仕様がある。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号419.1972.1-2)。→プリアチェア

プロナ(1970年)

プリアの機構を肘掛け椅子に適用した製品である。座面が広く背も高いが、同じ方式で畳める。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号418.1972.1-2)。

プラトーネ(1971年)

折り畳みの机である。天板と脚を同じ方式で畳み、平らな板状に収まる。椅子で確立した機構を、別の家具に展開した例にあたる。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号420.1972)。

ヴァーテブラ(1974-76年)

エミリオ・アンバースとの共同設計による事務椅子である。座る人の姿勢に背もたれと座面が追従するが、調整のためのレバーやノブを持たない。部材の弾性と支点の配置だけで動きを成立させている。1979年にコンパッソ・ドーロ賞を受けた。ニューヨーク近代美術館とメトロポリタン美術館が収蔵している。

プランタ(1978年)

可動の要素を持つ収納である。V&Aが2点を収蔵している(収蔵番号W.57-1978、W.59-1978)。

評価と影響

ピレッティは一般に、折り畳みの機構を家具の構成そのものとして扱った設計者と評価されている。プリアチェアは、軸を一箇所にまとめることで畳んだときの厚みを最小にした例として言及される。

1970年代後半のヴァーテブラは、事務椅子の分野で調整機構を持たずに追従を得るという方向を示した。同じ方向はアルベルト・メダのメダ・チェアなど、以後の製品にも見られる。

アノニマ・カステッリでの仕事が中心で、同社の製品として発表されたものが多い。プリアチェアは現在も生産が続いている。

受賞・収蔵

受賞

  • 1971年 SMAU賞
  • 1979年 コンパッソ・ドーロ賞(ヴァーテブラ、エミリオ・アンバースと共同)

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。

  • MoMA プリア 折りたたみ・スタッキングチェア(1967年) 収蔵番号 419.1972.1-2
  • MoMA プロナ 折りたたみアームチェア(1970年) 収蔵番号 418.1972.1-2
  • MoMA プラトーネ 折りたたみデスク(1971年) 収蔵番号 420.1972
  • MoMA ヴァーテブラ オペレーショナルチェア(1975年) 収蔵番号 346.1982
  • MoMA ヴァーテブラ エグゼクティブチェア(1975年) 収蔵番号 347.1982
  • MoMA オセリス スポットライト(1982年) 収蔵番号 2241.2001.1-4
  • V&A プランタ(1978年) 収蔵番号 W.57-1978、W.59-1978
  • Met ヴァーテブラ アームチェア(1974-76年) 収蔵番号 1989.48a–f

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1967年 椅子 プリアチェア Anonima Castelli
1970年 椅子 プロナ Anonima Castelli
1971年 デスク プラトーネ Anonima Castelli
1974-76年 オフィスチェア ヴァーテブラ(エミリオ・アンバースと共同) Anonima Castelli / Krueger
1978年 収納 プランタ Anonima Castelli
1982年 照明 オセリス スポットライト Erco
1980年代 オフィスチェア ドルサル(アンバースと共同) Open Ark

プロフィール

生没年 1940年〜2026年
出身地 イタリア・ボローニャ
国籍 イタリア
活動拠点 ボローニャ
分野 家具、オフィスチェア、照明
主な協働ブランド Anonima Castelli、Erco、Krueger

Reference

Castelli
https://www.castelli.com/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Metropolitan Museum of Art Collection
https://www.metmuseum.org/art/collection
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/