コペンハーグ ダイニングテーブル(Copenhague Dining Table)は、フランス出身のデザイナーデュオ、ロナン&エルワン・ブルレック(Ronan & Erwan Bouroullec)が、デンマークの家具ブランドHAYのために2013年にデザインした作品である。本テーブルは、コペンハーゲン大学人文学部(KUA)の新校舎のために特別に設計されたコペンハーグ・コレクション(Copenhague Collection)の中核をなすプロダクトとして誕生した。

教育機関という使用環境の要請から、機能性、耐久性、清掃のしやすさが厳格に求められる一方で、学生たちがキャンパスに長く滞在したくなるような温かみのある空間づくりへの貢献も期待された。ブルレック兄弟は、デザイン史における伝統的な要素と最新のテクノロジーを巧みに融合させ、力強くも独自性あふれる表現を実現。その結果、公共空間から家庭のダイニングまで幅広い環境に調和する、汎用性の高いテーブルシリーズが完成した。

特徴・コンセプト

コペンハーグ ダイニングテーブルの最も顕著な特徴は、その傾斜した無垢材の脚部にある。この特徴的なA字型の脚部は、視覚的な軽快さと構造的な安定性を両立させている。天板のエッジには面取り加工が施され、実際の厚みよりも薄く見えるよう配慮されており、ミニマルな印象を一層強調している。

素材と仕上げ

天板には複数の仕上げオプションが用意されている。リノリウム仕上げは、ナノテクノロジーを活用したソフトタッチな超マット仕上げで、指紋が付きにくく清掃も容易である。オーク材突板仕上げは、無垢材の美しさとラミネート素材の実用性を兼ね備えている。また、ラミネート仕上げも選択可能であり、いずれも優れた耐久性と清掃のしやすさを実現している。

脚部はオーク無垢材を使用し、クリアラッカー仕上げまたはブラックステイン仕上げから選択できる。2021年には従来のラッカーに代わり、環境負荷の低い水性ラッカーが採用された。さらに2024年には、天板の素材がプライウッドからより耐久性の高いMDFへと改良されている。

デザイン思想

ブルレック兄弟は、本シリーズのデザインに際して、デンマークの建築家ベルント・ペーターセン(Bernt Pedersen)によるトレッスルチェアを参照点のひとつとした。シンプルでありながら明確なアイデンティティを持つこの古典的な椅子のタイポロジーを継承しつつ、より独創的でドメスティック(家庭的)な表現を追求した。従来の教育施設用家具にありがちな制度的・無機質な印象を排し、温かみと親しみやすさを兼ね備えた家具を目指したのである。

エピソード

コペンハーグ・コレクション誕生の背景には、ヨーロッパの大学が直面していた共通の課題があった。多くの学生が授業以外の時間をキャンパスで過ごさず、自宅に戻ってしまうという傾向が顕著になっていたのである。コペンハーゲン大学は、学生たちがキャンパスにより長く滞在し、共同作業やインフォーマルな交流を行える環境を整備することで、この課題に取り組もうとした。

HAYは2012年、この大学の新校舎プロジェクトのためにブルレック兄弟に家具デザインを依頼した。当初は兄弟の既存デザインの採用も検討されたが、コスト面やスタッキング機能などの要件を満たすため、新たなコレクションの開発が決定された。ブルレック兄弟は「建物を再び人間的なものにする」という理念のもと、コントラクト家具でありながらも家庭用家具に匹敵する快適性と温かみを持つ製品を追求した。

2013年のIMM Cologne(ケルン国際家具見本市)で発表されたコペンハーグ・コレクションは、大学での極めて好意的な評価を受けて、HAYは一般市場向けにも販売を開始。現在では世界中の家庭、オフィス、公共施設で広く愛用されている。

評価

コペンハーグ ダイニングテーブルは、その普遍的なデザイン言語と高い実用性から、発表以来継続的に高い評価を得ている。パリの国立近代美術館(ポンピドゥー・センター)や装飾美術館をはじめとする国際的な美術館の永久収蔵品としても認定されている。

教育機関という特殊な環境のために開発されながらも、家庭やオフィス、レストランなど多様な空間に自然に溶け込む汎用性が高く評価されている。北欧デザインの伝統を踏襲しつつ、フランス人デザイナーならではの洗練された感性が融合した本シリーズは、スカンジナビアン・デザインの現代的解釈として位置づけられている。

またHAYは、本コレクションを通じてサステナビリティへの取り組みも推進している。FSC認証を受けた持続可能な森林からの木材調達、環境負荷の低い水性ラッカーへの移行など、EUエコラベル要件を満たす製品づくりが行われている。

デザイナー

ロナン・ブルレック(1971年生)とエルワン・ブルレック(1976年生)は、フランス・ブルターニュ地方カンペール出身の兄弟デザイナーである。ロナンはパリの国立高等装飾美術学校(ENSAD)、エルワンはセルジー・ポントワーズ美術学校で学び、1999年にパリにアトリエ・ブルレックを設立した。

彼らの作品は、シンプリシティ、機能性、そして詩的なフォルムの見事な融合で知られる。小さな日用品から大規模な建築プロジェクトまで、その活動領域は多岐にわたる。Vitra、Magis、Alessi、Samsung、Flos、Kartell、Artek、Cassina、HAYなど、世界を代表するブランドとのコラボレーションを通じて、数々の名作を世に送り出してきた。

代表作にはVitra社のアルコーヴ・ソファ、Alugues(藻)スクリーン、Samsung社のSerif TV、Magis社のSteelwoodチェア(2011年コンパッソ・ドーロ受賞)などがある。彼らの作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)、ポンピドゥー・センター、シカゴ美術館、ロンドン・デザイン・ミュージアムなど、世界の主要美術館の永久コレクションに収蔵されている。2014年にはPanerai London Design Medalを受賞。

バリエーション

コペンハーグ・テーブルシリーズは、多様な用途に対応する豊富なバリエーションを展開している。

  • CPH 20:円形天板の3本脚テーブル。ダイニングテーブル、コーヒーテーブル、ハイテーブルの各サイズを展開
  • CPH 25:楕円形天板のダイニングテーブル
  • CPH 30:長方形天板のダイニングテーブル。幅90cmと幅80cmの2種類
  • CPH 30 Extendable:エクステンション機能を備えた拡張可能なダイニングテーブル
  • CPH 90:デスクタイプ。ホームオフィスやワークスペース向け
  • CPH 10:コンパクトなデスク
  • CPH 190:大型デスク
  • CPH Deux 210:より細身の脚を持つ軽量バージョンのテーブル
  • CPH Deux 220:CPH Deuxシリーズの長方形テーブル
  • CPH Deux 215:CPH Deuxシリーズのベンチ

基本情報

名称(日本語) コペンハーグ ダイニングテーブル
名称(英語) Copenhague Dining Table
デザイナー ロナン&エルワン・ブルレック(Ronan & Erwan Bouroullec)
ブランド HAY
発表年 2013年
原産国 デンマーク
素材 天板:リノリウム / ラミネート / オーク突板、脚部:オーク無垢材
サイズ例(CPH 30) W200 × D90 × H74 cm 等、複数サイズ展開