このページについて
CSS(コンプリヘンシブ・ストレージ・システム)は、ジョージ・ネルソン&アソシエイツが1959年に設計しハーマンミラーが製造した収納のシステムである。アルミの支柱を床と天井のあいだに突っ張るか壁に取り付け、そこへ棚板やキャビネットを掛ける。1973年に製造を終了しており、入手は中古市場に限られる。
このページでは、中古で部材を集める際の確認箇所、設置に要する条件、同種のシステムとの比較、手入れ、購入できる場所を扱う。設計の成り立ちについては紹介ページを参照されたい。
ジョージ・ネルソンの設計思想や経歴について詳しくはジョージ・ネルソン プロフィールページをご覧ください。
CSSのデザインストーリーについて詳しくはCSS コンプリヘンシブ・ストレージ・システム紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・構成・素材
CSSは注文ごとに構成が異なるため、同じ個体は二つとない。ここでは基本要素と構成原理を整理する。
| 正式名称 | CSS (Comprehensive Storage System) / コンプリヘンシブ・ストレージ・システム |
|---|---|
| 製造国 | アメリカ合衆国(フランス版あり) |
| 製造期間 | 1959年〜1973年 |
| 現在の生産状況 | 終了。入手は中古市場に限られる。現行のネルソン ベーシック・キャビネット・シリーズは別製品にあたる |
| 前身システム | OMNIウォールユニット。支柱の断面をH形に近づけたことで、前後の両面が使えるようになり、壁への取り付けにも対応した |
| 設置方式 | フロア・トゥ・シーリング方式(床〜天井間にポールを突っ張り設置)、または壁面マウント方式 |
| 構造ポール | 陽極酸化処理のアルミ押出材。支柱の間隔は約813mmで1区画を構成する。必要な本数は区画数に1を加えた数になる |
| 棚板ブラケット | ブラックメタル製(No.9104)。高さ調整可能 |
| 主要コンポーネント | 棚板(ウォールナット / チーク / アッシュ / ホワイトラッカー)、キャビネット(引き戸 / ドロップダウンドア)、引き出しユニット、デスクユニット(ドロップフロント式、内蔵蛍光灯付き)、セクレタリーキャビネット、レコードホルダー、マガジンラック、キャニスターライト(No.9138)、サイドパネル |
| 主要素材 | ウォールナット材、チーク材、ローズウッド材、アッシュ材(木部)。アルミニウム、エナメルスチール、ステンレススチール、クロームメッキ(金属部)。ラミネート(一部天板)。ポーセリン(引手金具、初期) |
| ベイ幅 | 32インチ(約813mm)× ベイ数 |
| 棚板寸法(参考) | 幅:32インチ(約813mm)または48インチ(約1219mm)。奥行:約12〜19インチ(約305〜483mm)。厚さ:約0.75インチ(約19mm) |
| 全体寸法(参考) | 高さ:天井高に依存(一般的に約2,400〜2,700mm)。幅:ベイ数×32インチ。奥行:約356〜500mm(コンポーネントにより異なる) |
| 識別マーク | ハーマンミラー社の紙ラベル(キャビネット内部)。初期生産品にはハーマンミラーロゴ入りラベルあり |
| 収蔵例 | スミソニアン協会クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館(CSSウォールユニット、チーク材) |
| 参考価格帯(ヴィンテージ市場) | 構成・ベイ数・コンポーネント数・コンディションにより大幅に変動。2ベイ基本構成:約3,000〜8,000 USD。3〜4ベイ充実構成:約8,000〜20,000 USD。大規模・希少コンポーネント付き:20,000 USD以上の場合も |
主要コンポーネントの詳細
ヴィンテージ市場では、以下のコンポーネントが個別または組み合わせで流通している。
- 構造ポール(No.9101)
- 陽極酸化処理(アノダイズド)アルミニウム押出材。内部にチャンネルを持ち、照明の配線を隠蔽できる。床と天井の間に突っ張る方式で固定し、タイバック(壁面支持金具)で安定させる。ポール間隔32インチが1ベイとなる。
- 棚板
- ウォールナット、チーク、アッシュ、ホワイトラッカー等の仕上げ。幅32インチ(1ベイ分)と48インチ(1.5ベイ分)が標準。ブラケット(No.9104)で高さ自在に設置。
- キャビネットユニット
- 引き戸式、ドロップダウンドア式など複数タイプ。内部に可動棚板を備える。ウォールナット仕上げが最も一般的。
- 引き出しユニット
- 5段引き出しキャビネット、ファイルドロワーなど。ポーセリン製またはアルミニウム製の引手金具。
- デスクユニット
- ドロップフロント式。開くと作業面となり、内蔵蛍光灯により手元を照らす。セクレタリーキャビネットとしても機能する。
- キャニスターライト(No.9138)
- ブラックマットメタル仕上げの照明ユニット。上下2灯式で、アップライトとダウンライトの双方に対応。ポールに取り付け、配線はポール内チャンネルに隠蔽。
- 特殊コンポーネント
- レコードホルダー、レコードプレーヤートレイ(スライド式)、マガジンラック、6分割ブックシェルフなど。希少性が高く、コレクター価値が高い。
類似商品・競合との比較
支柱に棚を掛けるシステムは、支柱をどこで支えるかによって設置の条件が変わる。現行品かどうかも、部材を後から足せるかを左右する。
| 比較項目 | CSS | 606ユニバーサルシェルビングシステム | インフィニート |
|---|---|---|---|
| 支柱の支え方 | 床と天井で突っ張る、または壁に取り付ける | 壁に固定する | 床と天井で突っ張る |
| 壁への加工 | 突っ張る場合は不要 | 必要 | 不要 |
| 両面の使用 | できる(支柱の断面がH形) | できない | できる |
| 生産状況 | 終了(1973年) | 現行 | 現行 |
| 部材の追加 | 中古で探すことになる | 注文できる | 注文できる |
選び分けの目安
- 後から拡張する前提の場合
- CSSは生産を終了しており、部材を足すには中古で探すことになる。同じ仕様の部材が見つかるとは限らない。現行のシステムであれば注文できる。
- 壁に穴を開けられない場合
- CSSは突っ張る方式に対応する。ただし天井の状態によっては使えない。
- 間仕切りとして使う場合
- 支柱の断面がH形のため、前後の両面に棚を掛けられる。壁固定のシステムでは片面のみになる。
使用感と設置条件
支柱の本数と区画
支柱の間隔は約813mmで、この幅が1区画になる。必要な本数は区画数に1を加えた数である。2区画なら3本、3区画なら4本を要する。
棚板とキャビネットの幅はこの区画に合わせて決まる。異なる幅の部材を混在させることはできない。
設置の方式
床と天井のあいだで突っ張る方式と、壁に取り付ける方式がある。前者は壁への加工を要さないが、天井面に上向きの力をかけるため、天井の構造を確認する必要がある。下地のない仕上げ材だけの天井では、その箇所に力が集中する。
支柱は天井高に合わせて切る必要がある場合がある。中古で入手した支柱の長さが設置場所の天井高に合うかを、購入前に確かめる。
両面から使う
支柱の断面がH形に近いため、前後の両面に棚を掛けられる。部屋の中央に立てて間仕切りとして使う場合、両側から収納できる。
この場合、棚板の奥行と収めるものの向きを決めておく。片面からしか取れない配置になると、反対側は面としてしか働かない。
経年変化とメンテナンス
素材ごとに起きること
支柱の陽極酸化処理は、アルミの表面に酸化被膜をつくる方法である。塗装と異なり被膜が素材と一体のため剥がれないが、深い傷が付くと下地のアルミが露出する。
木部の棚板は湿度の変化で伸縮する。製造から半世紀以上が経過しており、反りが生じている個体がある。
金属のブラケットは、塗装の剥がれた箇所から錆が進む。棚板を支える部材のため、状態が耐荷重に関わる。
日常の手入れ
- 支柱
- 乾いた柔らかい布で拭く。研磨剤は陽極酸化の被膜を削る。
- 木部
- 仕上げによって手入れの方法が異なる。オイル仕上げの場合は年に一度程度オイルを塗り重ね、ラッカー仕上げの場合は乾いた布で拭く。
- ブラケット
- 棚板を外した際に、取り付け部の緩みと塗装の状態を確かめる。
どこで買うか
生産終了について
1959年から1973年まで製造された。現在は中古市場での入手に限られる。相場は部材の構成、状態、木部の樹種によって幅があり、一定していない。
ハーマンミラーが現在扱うネルソン ベーシック・キャビネット・シリーズは、名称に設計者の名を含むが別の製品である。CSSの部材との互換性はない。
部材を集める
システムとして成立させるには、支柱、ブラケット、棚板、キャビネットが揃う必要がある。一式で出品されることもあれば、部材単位で出品されることもある。
後から足す場合、同じ仕様の部材が見つかるとは限らない。木部の樹種と仕上げが揃わないと、並べたときに差が出る。必要な構成を先に決めてから探すほうが、揃えやすい。
状態の確認
確認箇所は、支柱の曲がりと陽極酸化の状態、ブラケットの錆と取り付け部の緩み、棚板の反りと仕上げ、キャビネットの扉や引き出しの動き、天井と床に接する部材が揃っているかである。
突っ張る方式で使う場合、支柱の長さが設置場所の天井高に対応するかを確かめる。
購入前チェックリスト
- 必要な区画数と支柱の本数(区画数+1)
- 設置場所の天井高と、支柱の長さが対応するか
- 天井の構造(突っ張る場合、上向きの力を受けられるか)
- 部材が揃っているか(支柱・ブラケット・棚板・キャビネット)
- 木部の樹種と仕上げが揃っているか
- 支柱の曲がり、ブラケットの錆、棚板の反り
- 後から部材を足す予定があるか(中古で探すことになる)
- 間仕切りとして使う場合、両面からの使い方
よくある質問
- 現在も購入できますか?
- 1959年から1973年まで製造され、現在は生産を終了しています。入手は中古市場に限られます。ハーマンミラーが現在扱うネルソン ベーシック・キャビネット・シリーズは名称に設計者の名を含みますが別の製品で、CSSの部材との互換性はありません。
- 中古の相場はどのくらいですか?
- 生産を終了しているためメーカーの公表価格はありません。相場は部材の構成、状態、木部の樹種によって幅があり、一定していません。一式での出品と部材単位での出品では条件が異なります。
- 実物を確認できる場所はありますか?
- メトロポリタン美術館がCSSのモジュラー壁面収納システムを収蔵しています(収蔵番号1985.427.1-17)。
- 支柱は何本必要ですか?
- 支柱の間隔は約813mmで、この幅が1区画になります。必要な本数は区画数に1を加えた数です。2区画なら3本、3区画なら4本を要します。棚板とキャビネットの幅もこの区画に合わせて決まります。
- 壁に穴を開ける必要はありますか?
- 床と天井のあいだで突っ張る方式であれば不要です。ただし天井面に上向きの力をかけるため、天井の構造をご確認ください。下地のない仕上げ材だけの天井では、その箇所に力が集中します。壁に取り付ける方式もあります。
- 間仕切りとして使えますか?
- 使えます。支柱の断面がH形に近いため、前後の両面に棚を掛けられます。両面から使う場合は、棚板の奥行と収めるものの向きを決めておいてください。
- 後から棚を追加できますか?
- 生産を終了しているため、部材を足すには中古で探すことになります。同じ仕様の部材が見つかるとは限らず、木部の樹種と仕上げが揃わないと並べたときに差が出ます。必要な構成を先に決めてから探すほうが揃えやすくなります。
- 中古で確認すべき箇所はどこですか?
- 支柱の曲がりと陽極酸化の状態、ブラケットの錆と取り付け部の緩み、棚板の反りと仕上げ、キャビネットの扉や引き出しの動き、天井と床に接する部材が揃っているかです。突っ張る方式で使う場合は、支柱の長さが設置場所の天井高に対応するかもお確かめください。