馬のたてがみと尾の毛。撚って熱を加え縮れを付けたものが、椅子の詰め物として用いられる。

馬毛

馬毛とは、馬のたてがみと尾から採った毛のこと。英語では horsehair と呼ぶ。椅子の詰め物としては、撚って熱を加え縮れを付けたものを用いる。

解説

採ったままの馬毛はまっすぐで、そのままでは弾力を持たない。縄状に強く撚り、蒸気や熱を当てて縮れを固定したうえで、手でほぐす。この工程を経ると、一本ずつが螺旋を描いた状態になり、絡み合いながら空気を含む層をつくる。押されれば縮み、力が抜ければ戻る。詰め物としての弾力は、素材そのものではなく、この加工によって与えられている。

耐久性が高く、へたりにくい。19世紀の椅子で一度も張り替えられずに現存する例があるほどで、洗って再利用することもできる。いっぽうで一頭から採れる量が限られるため、古くから高価な材であった。ウレタンフォームが普及して以降、新規の家具で用いられる例は限られる。

成形したポリウレタンフォームと決定的に異なるのは、詰める作業そのもので形をつくる点にある。型で抜いたフォームは断面が均一になるが、馬毛は職人が盛る量を場所ごとに変えられる。チェスターの座面で、ばねの配置に応じた局所的な盛り上がりが得られるのは、この自由度による。手で結ぶばねと組み合わせて用いられるのが伝統的な構成である。

馬巣織との違い

同じ馬毛を用いた素材に馬巣織(ばすおり、ホースヘアクロス)がある。こちらは経糸に綿や麻、緯糸に馬の尾毛を用いた織物で、家具では表に見える張り地として使われる。詰め物としての馬毛とは、加工も役割も異なる。

Reference

英国伝統のイス張り技法(Upholstery)
https://mars-speed.co.jp/archive-antiques-11-upholstery/
馬毛で作られたアンティーク家具の椅子(KENT STORE)
https://kent-uk.com/repair-horse/
椅子の上張り材とは?(インテリアのナンたるか)
https://interior-no-nantalca.com/chair-structure-and-textile-upholstery/

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