ルネサンス期のイタリアで、婚礼に際して対でつくられた大型の収納櫃。前面に物語画を描いたものが多い。

カッソーネ

カッソーネとは、14〜16世紀のイタリアで、婚礼に際して対でつくられた大型の蓋付きの収納櫃のこと。花嫁の嫁入り道具を納め、前面や側面に物語の場面を描いたり彫刻を施したりしたものが多い。

解説

当時の文書では、婚礼用の櫃は「フォルツィエーレ」とも呼ばれていた。近年の研究では、カッソーネの語は、そのうち古代の石棺のような形をしたものを指していた可能性が指摘されている。婚約から花嫁が新居に移るまでの数か月のあいだに、櫃のほか、壁の腰板に嵌め込む絵(スパッリエーラ)や寝台などの婚礼家具がそろえられた。

制作には、指物師、金箔師、画家、錠前師など複数の職人が関わった。フィレンツェの画家アポッローニオ・ディ・ジョヴァンニの工房の帳簿は、1670年の写本として伝わっており、櫃が一対で注文されていたことを裏づける重要な資料になっている。前面の絵1枚を描くのに1か月ほどかかったとされる。

カッソーネは、寝室に置かれる実用の家具であると同時に、両家の財力と教養を示す装置でもあった。19世紀以降、多くは絵のパネルだけが切り離されて売買されたため、木工や金箔が当時のまま残る例は少ない。

金箔と彩色で装飾した、石棺に似た形の横長の木の櫃
イタリアの婚礼用の櫃(1509年ごろ、ヴィクトリア&アルバート博物館)14GTR / CC0(パブリックドメイン) — Wikimedia Commons

スパッリエーラとの違い

スパッリエーラは、同じく婚礼の際に寝室のためにつくられた、壁の腰の高さに嵌め込む横長の板絵、あるいは板張りのこと。カッソーネが移動できる収納家具であるのに対し、スパッリエーラは壁に固定されて室内装飾の一部となる。両者が同じ物語の連作として計画されることもあった。

Reference

Nuptial Furnishings in the Italian Renaissance(Heilbrunn Timeline of Art History, The Metropolitan Museum of Art)
https://www.metmuseum.org/essays/nuptial-furnishings-in-the-italian-renaissance

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