概要

安積朋子(あづみ ともこ)は、1966年広島生まれのデザイナーである。京都市立芸術大学で建築とインテリアを学び、東京の設計事務所を経てロンドンの王立芸術学院家具科へ進んだ。1995年の修了制作展で発表した収納家具 Table=Chest が博物館に収められ、同年から安積伸とデザインユニットAZUMIとして活動した。2005年にTNA Design Studio を構え、家具と日用品のほか、英国最高裁判所の法廷家具や店舗の内装を手がけている。

バイオグラフィー

1966年、広島に生まれた。1985年に京都市立芸術大学へ入学し、環境デザインの課程で建築とインテリアを学んで1989年に卒業している。

卒業後は東京の設計事務所に勤めた。建築の実務を経てから家具へ移る経路をとっており、のちの仕事に出てくる寸法や納まりの扱いはこの時期を背景に持つ。

1993年にロンドンの王立芸術学院(Royal College of Art)家具科の修士課程へ進み、1995年に修了した。修了制作展で発表したのが Table=Chest である。本人は当時を不況の底と振り返り、小規模な工房や工場が新人の少量生産を引き受けてくれたため、資金がなくても作り手として独立できたと述べている。

1995年から、安積伸とユニットAZUMIを結成してロンドンで10年間活動した。1997年にはラパルマから収納家具の生産が始まっている。

2005年、自身の事務所 TNA Design Studio をイーストロンドンに設立した。アーコール、アイソコン・プラス、ラパルマ、ジリオ、イッタラ、竹尾、タイム・アンド・スタイルなど、英国・欧州・日本のメーカーと仕事をしている。

設計と並行して教育にも関わっており、2005年から王立芸術学院デザインプロダクツ科のチューター、2006年から2007年までロンドン・メトロポリタン大学のリサーチフェローを務めた。

デザインの思想と方法

安積朋子の仕事に繰り返し現れるのは、一つの家具に二つの状態を持たせ、その切り替え方そのものを形の主題にする操作である。折りたたみや収納の機構を裏に隠さず、切り替わる過程で何が起きるかを設計の中心に置く。

この方法は、たたむと中身がどうなるかという問いに答える形をとる。Table=Chest では、引き出しの中身が動かないまま天板が開く経路を選んでいる。機構を成立させるだけなら別の解き方もあるが、使う側が困る場面を先に潰してから輪郭を決めている。

建築を学び、設計事務所で実務に就いたことが前提にある。家具を単体の造形として扱わず、置かれる部屋の広さや動線の側から寸法を決める手順をとる。狭い住居で一台に複数の用途を持たせる発想も、住まいの側から出発した結果にあたる。

素材と工法は依頼先の設備に合わせて選ぶ。TNA Design Studio は、依頼の性質によって目標は変わるものの、まず背景と経緯を読み、製造の方法と素材を踏まえて進めると自らの方針を説明している。英国の家具工場、日本の紙商社、イタリアの金属加工業者と、相手ごとに異なる工程から出発する形になる。

用途が定まった仕事にも同じ手順で臨む。英国最高裁判所の法廷家具では、法廷という空間の制約と儀礼の側から求められる条件を、家具の寸法と配置に落とし込んでいる。

代表作にみる方法

Table=Chest(1995年)

三段構成の収納家具で、上下の引き出しに挟まれた中間の開口部が開いて低いテーブルになる。素材はブナと、ブナの突板を貼ったMDFである。

この家具の要点は、開く動作が引き出しの中身を乱さない点にある。引き出しは両側から開けられ、たたんだ状態では取っ手が持ち運びに使える。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は収蔵記録で、狭い住居における省スペース化を複数の用途によって進めた設計だとしたうえで、中立的な収納システムとは異なり単体の家具として成立している点を挙げている。

王立芸術学院の修了制作展で発表され、同館が1997年に家具本体を、1999年に設計図面を収めている。二つの状態を切り替える構成という、以後の仕事に通じる主題がここで現れている。

LEM(1999年設計、ラパルマ)

安積伸との共同で設計したカウンタースツールである。座を縁取るスチールの帯が前方へ回り込んでフットレストになる構成をとる。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の記録では、安積伸とともに設計したものとして登録されている。

座と足掛けという二つの役割を一本の材でつなぐ操作は、用途を重ねて部材を減らす点で Table=Chest と地続きにある。製品の詳細はレムを参照。

英国最高裁判所の法廷家具

2009年に開設された英国最高裁判所のために、法廷で用いる家具を手がけた。法廷の家具は、審理の進め方と当事者の位置関係から寸法と配置が決まる。用途の条件が外から強く与えられる仕事にあたる。

市販の家具を選ぶのではなく、その建物と用途に合わせて設計する仕事は、TNA Design Studio の柱の一つになっている。店舗の内装や展示の設計も同じ枠に入る。

評価と活動

2004年にジャーウッド家具賞の最終候補に残っている。審査の側にも加わっており、2008年から日本デザイン振興会のグッドデザイン賞、2009年に100%デザイン・ロンドン、2010年にケルン国際家具見本市のデザイン賞、2012年に英国D&ADデザイン賞で審査員を務めた。

AZUMI名義の製品は解散後も同じ形で生産が続いており、個人としての活動と並行して流通している。

収蔵

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)が次を収めている。

  • Table=Chest — 収蔵番号 W.6:1 to 3-1997(1995年設計、家具製作はフランク・E・ベイリー)
  • Table=Chest の設計図面 — 収蔵番号 E.456-1999、E.457-1999
  • LEM バースツール — 収蔵番号 W.37-2008(安積伸との共同設計、ラパルマ製)

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド・依頼主
1995年 収納家具 Table=Chest —
2000年 スツール LEM(AZUMI名義) ラパルマ
2009年 法廷家具 英国最高裁判所の法廷家具 英国最高裁判所

プロフィール

氏名 安積朋子 / Tomoko Azumi
生年・出身 1966年、広島
学歴 京都市立芸術大学 環境デザイン(1985〜1989年)/ロンドン王立芸術学院 家具科 修士課程(1993〜1995年)
経歴 東京の設計事務所勤務/AZUMI(1995〜2004年)/TNA Design Studio 主宰(2005年〜)
活動拠点 イギリス・ロンドン
分野 家具、照明、プロダクト、インテリア
教育 ロンドン王立芸術学院 デザインプロダクツ科 チューター(2005年〜)

Reference

About|TNA Design Studio
https://www.tnadesignstudio.co.uk/about
Table=Chest(W.6:1 to 3-1997)|Victoria and Albert Museum
https://collections.vam.ac.uk/item/O7369/
LEM Bar Stool(W.37-2008)|Victoria and Albert Museum
https://collections.vam.ac.uk/item/O165200/
Tomoko Azumi, Designer|Archiproducts
https://www.archiproducts.com/en/designers/tomoko-azumi
Tomoko Azumi: the Japanese furniture designer|Monocle
https://monocle.com/design/architecture/tomoko-azumi-furniture-designer/