概要
安積伸(あづみ しん)は、1965年神戸生まれのデザイナーである。京都市立芸術大学でプロダクトデザインを学び、日本電気のデザイン部門に3年ほど勤めたのちロンドンに渡った。1995年から安積朋子とデザインユニットAZUMIとして活動し、2005年に個人事務所 a studio を構えた。家具、照明、日用品を手がけ、カウンタースツールLEMで知られる。2016年に拠点を日本へ移し、法政大学デザイン工学部で教えている。
バイオグラフィー
1965年、神戸に生まれた。1985年に京都市立芸術大学美術学部へ入学し、プロダクトデザインを専攻して1989年に卒業している。
卒業後は日本電気のデザインセンターに勤めた。1989年4月から1992年2月までの在籍で、家電と情報機器の社内デザイナーとして働いた時期にあたる。
1992年9月にロンドンの王立芸術学院(Royal College of Art)インダストリアルデザイン科へ進み、1994年7月に修士課程を修了した。
1995年から、同じ王立芸術学院で学んだ安積朋子とユニットAZUMIを結成し、ロンドンを拠点に10年間活動した。1999年に設計したLEMが、2000年4月のミラノの家具見本市でラパルマから発表されている。
2005年、ユニットの活動を終えて個人事務所 a studio をロンドンに設立した。マジス、ラパルマ、オーセンティックス、フレデリシア、イトーキなど、欧州と日本のメーカーからの依頼を受けている。
2016年に拠点を日本へ移し、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科の教授に就任した。大阪芸術大学、神戸芸術工科大学、秋田公立美術大学でも客員教授などを務めている。
デザインの思想と方法
安積の仕事は、量産品の社内デザイナーとして出発した経歴を前提に読める。日本電気のデザインセンターで扱ったのは、金型と生産数が先に決まっている製品である。形を決める前に製造条件が与えられる仕事の進め方が、その後の家具にも持ち込まれている。
方法として繰り返し現れるのは、複数の役割を一本の部材に担わせる操作である。部品として分ければ済むところを、あえて連続した一材で処理する。部品点数が減るのは結果であって、狙いは部材のつながり方そのものを輪郭として見せる点にある。LEMの座縁とフットレストがその代表になる。
装飾にあたる部材を足さないのもこの手順の帰結にあたる。輪郭は用途から決まった線だけで構成され、面を飾るための処理を持たない。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館はLEMについて、単純化した幾何と設計上の詰めだけから形が導かれており、装飾と呼べる要素がないと記録している。
一方で、操作の方法そのものを設計対象とする仕事もある。マスモスのために設計した照明では、スイッチという部品を輪郭から取り去り、手の動きで明るさを変える構成をとった。部材を減らす手つきが、機構と操作の側にも向けられた例になる。
素材や製法は依頼先の設備に合わせて選ぶ。イタリアの家具メーカーには成形合板と金属パイプ、日本の窯業地には無釉の炻器というように、相手の持つ工程から出発する。自分の手法を先に決めて素材を当てはめる進め方ではない。
代表作にみる方法
LEM(1999年設計、ラパルマ)
安積朋子との共同で設計したカウンタースツールである。座面が高い椅子では足が床に届かず足掛けが要るが、支柱にリングを回す解き方をとらず、座を縁取るスチールの帯をそのまま前方へ回り込ませて足掛けとした。座と足掛けが同じ一本の材でつながるため、昇降しても両者の距離が変わらない。
役割を一本の部材にまとめるという以後の手つきが、この仕事で形になっている。詳しくはレムを参照。
エアスイッチ Az(2005年設計、マスモス)
照明メーカーのマスモスのために設計した卓上照明である。砂を吹き付けた吹きガラスの器に光源を収め、器の上に手をかざす動作で点消灯と調光を行う。手を上下させると明るさが変わる仕組みで、器の内側に置いた赤外線センサーが手の位置を読む。
スイッチもつまみも輪郭に現れない。部材を減らす操作が、外形ではなく操作系に向けられている。マスモスが2004年に開発した検知の仕組みを、ガラスの器という形に収めた仕事にあたる。
ヤウチャ ティーセット(2006年設計)
ロンドンの飲食店ヤウチャのために設計した茶器である。急須と碗は日本の常滑で作られ、釉薬をかけない炻器とした。常滑の土は粒子が細かく、釉をかけなくても水を通さない。仕上げの層を省けるのは素材の側の条件による。
受皿と長方形のトレイは異なる作り方をとる。ブナの芯に細く薄いブナ材を巻きつけ、削って黒く着色し、磨いている。巻いた層が木口に縞となって現れ、模様を後から描く必要がない。産地ごとの工程をそのまま形の決め手にする進め方が、家具以外でも変わらない例になる。
受賞・収蔵
- FX国際インテリアデザイン賞 プロダクト・オブ・ザ・イヤー 2000年 — LEM
- グッドデザイン賞(日本)2001年 — LEM
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)が次の3点を収めている。
- LEM バースツール — 収蔵番号 W.37-2008(安積朋子との共同設計、ラパルマ製)
- エアスイッチ Az — 収蔵番号 W.9:1, 2-2006(2005年設計・2006年マスモス製)
- ヤウチャ ティーセット — 収蔵番号 FE.4 to 7-2009(2006年設計・2008年日本製)
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド |
|---|---|---|---|
| 2000年 | スツール | LEM(AZUMI名義) | ラパルマ |
| 2006年 | 照明 | エアスイッチ Az | マスモス |
| 2006年 | テーブルウェア | ヤウチャ ティーセット | ヤウチャ |
プロフィール
| 氏名 | 安積伸 / Shin Azumi |
|---|---|
| 生年・出身 | 1965年、神戸 |
| 学歴 | 京都市立芸術大学美術学部 プロダクトデザイン専攻(1985〜1989年)/ロンドン王立芸術学院 インダストリアルデザイン科 修士課程(1992〜1994年) |
| 経歴 | 日本電気デザインセンター(1989〜1992年)/AZUMI(1995〜2004年)/a studio 主宰(2005年〜) |
| 活動拠点 | ロンドン(1992〜2016年)、日本(2016年〜) |
| 分野 | 家具、照明、プロダクト |
| 教育 | 法政大学デザイン工学部システムデザイン学科 教授(2016年〜) |
Reference
- 安積 伸(デザイン工学部システムデザイン学科)|法政大学 学術研究データベース
- https://kenkyu-web.hosei.ac.jp/hosei/detail.html?systemId=f4ff8335740aa3c3&lang=ja
- 安積伸|京都市立芸術大学
- https://www.kcua.ac.jp/kyakuinkyoju_ichiran/azumi-shin/
- LEM Bar Stool(W.37-2008)|Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O165200/
- Airswitch Az(W.9:1, 2-2006)|Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O129317/
- Yauatcha Tea Set(FE.4 to 7-2009)|Victoria and Albert Museum
- https://collections.vam.ac.uk/item/O233145/