概要

マリアンネ・ブラント(1893-1983)は、ドイツのデザイナーである。1924年にバウハウスの金属工房へ入り、女性として初めてこの工房に加わった。球・円筒・半球といった基本の立体で日用品を構成する方法をとり、ティーポットMT49や灰皿がその例にあたる。1928年にはヒン・ブレーデンディークと組んで照明メーカーのカンデムのために設計を行った。

バイオグラフィー

1893年10月1日、ドイツのケムニッツに生まれた。ヴァイマールのザクセン大公立美術学校で絵画と彫刻を学んでいる。

1923年のバウハウスの展覧会を見て入学を決め、1924年に金属工房へ入った。当時この工房は男性のみで構成されており、彼女が最初の女性にあたる。工房の責任者はラースロー・モホイ=ナジだった。

1928年、モホイ=ナジの離任にともない、金属工房の副責任者となる。同年から翌年にかけて、照明メーカーのカンデムのためにヒン・ブレーデンディークと共同で設計を行った。

1929年にバウハウスを離れ、ヴァルター・グロピウスの事務所、続いてゴータの金属製品会社に勤めた。1949年から1954年までドレスデンとベルリンの美術学校で教えている。1983年にキルヒベルクで没した。

デザインの思想と方法

ブラントが扱ったのは、日用品を基本の立体だけで構成できるかという問題である。急須も灰皿も照明も、球・円筒・半球・円板といった形の組み合わせで成立させる。装飾を加える余地を残さないという点で、バウハウスの金属工房の方針と一致していた。

基本の立体で構成する

ティーポットMT49は、半球の胴に円筒の注ぎ口、十字形の脚を組み合わせる。それぞれの部位は幾何学的な形をとり、接合の位置で機能が決まる。注ぎ口の高さと角度は湯の出方から、脚の位置は重心から決まっている。

量産できる形にする

基本の立体は、旋盤やプレスで加工しやすい。手作業で叩き出す形に比べて、同じものを繰り返し作れる。金属工房が工芸から工業生産へ方針を移した時期にあたり、この転換が形の選択に直結している。

照明で配光を形にする

カンデムのための照明では、笠の曲面が配光を決める。ベッドサイド用の卓上灯は、半球の笠を可動にして光の向きを変えられる。装飾を持たないため、形の変化はすべて機能の要求から来ている。

写真での構成

ブラントは金属工房での仕事と並行して、フォトモンタージュと自写像の制作も行った。複数の写真を切り貼りして構成する方法は、部材を組み合わせて製品をつくる進め方と共通する。

代表作にみる方法

ティーポット MT49(1924年)

銀と黒檀による急須である。半球の胴、円筒の注ぎ口、十字形の脚という基本の立体で構成される。開口は上面の円形で、蓋は円板をそのまま用いる。ニューヨーク近代美術館とメトロポリタン美術館が収蔵している。

灰皿(1924年)

円筒の器に半球の蓋を組み合わせた灰皿である。蓋の切り欠きから灰を落とす構成で、部品は2つだけになる。ニューヨーク近代美術館が複数点を収蔵している(収蔵番号422.1938.1-2、424.1938)。

天井照明(1925-26年)

金属とガラスによる吊り照明である。半球の笠と円筒の支持部で構成され、光源は笠に収まる。ニューヨーク近代美術館が2点を収蔵している(収蔵番号188.1958.a-b、192.1958.a-f)。

カンデム ベッドサイド テーブルランプ(1928年)

ヒン・ブレーデンディークとの共同設計による卓上灯である。半球の笠が可動で、光の向きを変えられる。台座と支柱は最小限の断面に抑えられている。ニューヨーク近代美術館が収蔵している(収蔵番号191.1958)。→カンデム テーブルランプ

フルーツボウル(1929年)

金属の円形の器で、縁を垂直に立ち上げる。装飾を持たず、円という形だけで成立している。ニューヨーク近代美術館が複数点を収蔵している。

評価と影響

ブラントは一般に、バウハウスの金属工房を代表する設計者と評価されている。工房が工芸から工業生産へ方針を移した時期に、量産できる形を基本の立体で構成するという方法を示した。

金属工房に加わった最初の女性であり、1928年には副責任者を務めた。当時のバウハウスでは女性の学生が織物工房に集められる傾向があり、その例外にあたる。

カンデムのための照明は同社から量産され、バウハウスの設計が実際の産業に接続した例として言及される。フォトモンタージュの作品も、近年は制作の一部として扱われている。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館)。

  • MoMA ティーポット(1924年) 収蔵番号 186.1958.1a-c
  • MoMA 湯沸かし(1924年) 収蔵番号 186.1958.2a-b
  • MoMA 灰皿(1924年) 収蔵番号 422.1938.1-2
  • MoMA 灰皿(1924年) 収蔵番号 424.1938
  • MoMA 天井照明(1925年) 収蔵番号 188.1958.a-b
  • MoMA 天井照明(1925-26年) 収蔵番号 192.1958.a-f
  • MoMA カンデム ベッドサイド テーブルランプ(1928年) 収蔵番号 191.1958
  • MoMA フルーツボウル&フルーツディッシュ(1929年) 収蔵番号 187.1958.1-2
  • MoMA フルーツボウル(1929年) 収蔵番号 189.1958
  • MoMA ペーパートレイ(1931年頃) 収蔵番号 614.2009
  • MoMA 卓上時計(1932年頃) 収蔵番号 14.1997
  • V&A 金属製品(1924年) 収蔵番号 M.73&A-1988
  • Met ティーインフューザー&ストレーナー(1924年頃) 収蔵番号 2000.63a-c
  • Met 灰皿(1924年) 収蔵番号 1992.240.1
  • Met ボウル(1927-29年) 収蔵番号 1992.240.2
  • Met カンデム 天井照明 No.777(1932年設計) 収蔵番号 2019.238a, b

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1924年 什器 ティーポット MT49 Bauhaus 金属工房
1924年 什器 灰皿 Bauhaus 金属工房
1925-26年 照明 天井照明 Bauhaus 金属工房
1927-29年 什器 ボウル Bauhaus 金属工房
1928年 照明 カンデム テーブルランプ Kandem(ブレーデンディークと共同)
1929年 什器 フルーツボウル Bauhaus 金属工房
1931年頃 什器 ペーパートレイ Ruppel
1932年 照明 カンデム 天井照明 No.777 Kandem
1932年頃 時計 卓上時計 Ruppel
1920年代 写真 フォトモンタージュ、自写像

プロフィール

生没年 1893年10月1日〜1983年
出身地 ドイツ・ケムニッツ
国籍 ドイツ
活動拠点 ヴァイマール、デッサウ、ベルリン
分野 金属製品、照明、写真
主な協働ブランド Kandem、Ruppel

Reference

Bauhaus-Archiv Museum für Gestaltung
https://www.bauhaus.de/en/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
The Metropolitan Museum of Art Collection
https://www.metmuseum.org/art/collection
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/