バイオグラフィー

1965年9月15日、ノルウェー・トロンハイム生まれ。母は陶芸家、父は建築家という創造的な家庭環境で育ち、幼少期からクラシックなスカンジナビアデザインに囲まれて成長した。当初はノルウェー科学技術大学（NTNU）で建築を学んだが、家具やディテールへの関心から方向転換。ベルゲン芸術デザイン学校、アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーを経て、1994年にオスロ国立芸術学校（現オスロ国立芸術アカデミー）でインテリア・家具デザインの学士号を取得した。

キャリアの軌跡

卒業後、マリ・ボイネ、ニルス・ペッター・モルヴェル、ソンドレ・ブラトランドなどノルウェーの著名アーティストのための舞台美術を手がける。2000年、トルビョルン・アンデルセン、アンドレアス・エンゲスヴィークとともにデザイングループ「Norway Says」を結成。2004年にはノルウェーのデザイングループとして初めてイケアとの協業を実現し、国際的な注目を集めた。

2009年秋、Norway Saysの解散後、トルビョルン・アンデルセンと「Anderssen & Voll」を設立。オスロのアーケル川沿いにある1802年築の歴史的建造物にワークショップを構え、現在に至るまで精力的な活動を続けている。2015年には自社ブランド「Nedre Foss」を立ち上げ、100年以上使い続けられる「センチュリープロダクト」の理念を掲げた製品開発に取り組む。

デザイン哲学

ヴォルのデザイン哲学は、「魂を持つオブジェクト」の創造にある。単なる機能性を超え、使い手と感情的なつながりを築く家具づくりを追求。「優れたプロダクトは伝統の上に構築されながら、同時にその伝統のルールを破る」という信念のもと、驚きと省察の瞬間を生み出すデザインを目指している。

センチュリープロダクトの理念

Nedre Fossブランドを通じて提唱する「センチュリープロダクト」は、少なくとも100年間の使用に耐える製品設計を意味する。彫刻的な美しさと実用性を等価に扱い、サステナビリティを後付けではなく統合された原則として捉える。ヴォルは「すべてのデザインはエコデザインであるべき」と主張し、環境への配慮と美的価値の両立を実践している。

コラボレーションのダイナミクス

トルビョルン・アンデルセンとの20年以上にわたるパートナーシップは、生産的な不一致によって特徴づけられる。「最初はほとんど何も意見が一致しない」という関係性が、異なる視点を統合した革新的なデザインを生み出す原動力となっている。アンデルセンがオブジェクトの意味論に焦点を当てる一方、ヴォルは全体的な調和とディテールに集中し、この補完的アプローチが感情的に響くデザインを実現している。

作品の特徴

ヴォルの作品は「ミニマルでありながらソフト」という一見矛盾する特質を併せ持つ。クリーンなライン、現代的なフォルム、包み込むような曲線、軽やかな表現が特徴的で、構造的でありながら柔らかく、彫刻的でありながら機能的という絶妙なバランスを実現している。

主要作品とその特徴

功績・業績

国際デザイン賞

Dezeen Award for Furniture Design of the Year 2018（Kumo Modular Sofa）、Wallpaper* Design Award（複数受賞）、Red Dot Award（複数受賞）、iF Design Award（複数受賞）、Good Design Award 2011（Bergブランケット）

北欧デザイン賞

Bruno Mathsson Prize 2004、Torsten och Wanja Söderbergs Prize 2007、Designprisen 2010（EVA家具シリーズ）、Norwegian Designer of the Year、Scandinavian Designer of the Year、Designers of the Year 2011（Bo Bedre誌）

歴史的功績

2004年、Norway Saysとしてノルウェーのデザイングループで初めてイケアとの協業を実現。ノルウェーデザインを国際的な舞台に押し上げる先駆者的役割を果たし、「ノルウェーと北欧のフォルムを再び国際的なデザインマップに載せることに成功」と評価される。

美術館・展覧会

2009年、オスロ国立美術・建築・デザイン博物館でNorway Saysの10年回顧展開催。作品はノルウェーのデザイン美術館の永久コレクションに収蔵。ロンドンデザインフェスティバル100% Norway、ストックホルム家具・照明フェア、ミラノデザインウィークに定期出展。

評価・後世に与えた影響

Anderssen & Vollは「新北欧デザインの代名詞」（Zetteler）と評され、「ノルウェーを世界のデザインマップに載せる上で重要な役割を果たした」（Context Gallery）と認識されている。18年にわたるMuutoとのコラボレーションを通じて「ブランドの視覚的・デザイン的アイデンティティを大きく定義」し、現代スカンジナビアデザインの基準を確立。

新北欧ムーブメントへの貢献

2000年代初頭に登場した新北欧デザインムーブメントの主要人物として、丸みを帯びた親しみやすさ、現代的なスカンジナビア美学、控えめな機能性、文化的・市場的認識を前向きなデザインに適用という特徴を定義。Outlineソファシリーズは「1960年代のクラシックなスカンジナビアデザインソファに新しい視点を加える」作品として、歴史的先例を尊重しながら現代的関連性を確立する能力を示している。

サステナビリティのリーダーシップ

「すべてのデザインはエコデザインであるべき」という主張を通じて、サステナビリティを別カテゴリーではなく統合された原則として推進。センチュリープロダクトのコンセプトは、100年以上使用される製品を創造することで使い捨て文化に挑戦。PEFC認証スカンジナビア木材、75%リサイクルアルミニウム（Vestre Kinnシリーズ）、リサイクル可能なモノマテリアル、修理のためのモジュラーシステムの採用により、「サステナビリティと美しさは両立する」ことを実証。

感情的デザインと「魂を持つオブジェクト」

純粋な機能主義を超越する「魂を持つオブジェクト」の創造と「無生物に生命を吹き込む」という哲学的立場は、ヴォルの最も特徴的な貢献。批評家は一貫してこの特質—ミニマリスト美学を維持しながら「生きていて個性を持つ」デザインを指摘。文化的・市場的影響に受容的でありながら常に新しいものを創造するという目標は、文化を超えて共鳴するデザインを生み出している。

デザイン言説と実践への影響

「特定の哲学は持たないが、価値観と好みが作品に存在することを望む」という非教条的哲学は、硬直したデザインイデオロギーに代わる選択肢を提供。インスピレーションを待たず「玉ねぎを切り始める」プロセス主導のアプローチは、創造的実践のための実用的モデルを提供。20年以上にわたるアンデルセンとの生産的な不一致による協働方法論は、緊張を建設的に活用する創造的パートナーシップの洞察を提供している。

作品一覧