バイオグラフィー

トルビョルン・アンデルセンは1976年、ノルウェーのエルベルムに生まれた。音楽家の父と教師の母という創造的な環境で育ち、幼少期から芸術と文化に親しんだ。ベルゲン美術工芸大学とオスロ国立芸術大学でデザインを学び、2000年の卒業後、同期のエスペン・ヴォル、アンドレアス・エンゲスヴィークと共にデザイングループ「Norway Says」を共同設立した。

Norway Saysは、当時停滞していたノルウェーデザイン界に新風を吹き込むことを目的とした革新的なプロジェクトであった。2000年、彼らはミラノ・サローネ・サテリテに出展し、ノルウェーとして40年ぶりに国際家具見本市に参加、瞬く間に世界の注目を集めた。2002年に正式に会社として設立されたNorway Saysは、「複雑な単純さ」を追求し、素材と形態を通じて機能性と快適さを損なうことなくエレガントで装飾的な製品を生み出した。2007年にはトルステン&ヴァンヤ・ソーダーベリ賞、ブルーノ・マテソン賞、ウォールペーパー賞など数々の栄誉ある賞を受賞し、国際的な名声を確立した。

約10年間の実りある協働の後、2009年秋にNorway Saysは解散し、トルビョルンとエスペンは「アンデシェン&ヴォル（Anderssen & Voll）」を設立した。オスロを拠点とする新スタジオは、家具、照明、ホームアクセサリー、テキスタイルデザインに特化し、ヨーロッパの最も著名なブランドとの協働を開始した。同年、ノルウェー国立美術・建築・デザイン博物館においてNorway Saysの10年回顧展が開催され、彼らの功績が称えられた。

アンデシェン&ヴォルとしての活動は、設立当初から国際的な成功を収めた。Muutoとは2006年の創業時から協働関係にあり、OutlineシリーズをはじめとするConnect、Oslo、Rest、In Situなど5つのソファコレクションを手がけた。&TraditionではPavilionコレクション、New WorksではLanternシリーズなど、各ブランドを代表するアイコニックなデザインを次々と発表した。

2015年には、自社ブランド「Nedre Foss Collections」を立ち上げ、持続可能性を重視した北欧デザインをルーツとするホームウェアオブジェクトの製造を開始した。「世紀を超える製品」というコンセプトと「彫刻的な実用性」を核として、メーカーとしての自由な表現を追求している。

現在、トルビョルンはベルゲン国立芸術大学の教授として後進の育成にも携わる一方、デンマーク紙「Dagens Næringsliv」のD2マガジンでデザインライターとしても活動している。エスペンとの協働は20年以上に及び、互いに「慣れ親しんでいるが、決して快適ではない」「常に挑戦し合う」関係性が、製品に生命を吹き込む原動力となっている。

彼らの功績は数々の国際的な賞によって認められており、ウォールペーパー・デザイン賞、レッドドット・デザイン賞、iFデザイン賞、ディジーン賞をはじめ、ノルウェーおよびスカンディナヴィアのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選出されている。現在、スタジオには7名のレギュラースタッフと常時1〜2名のインターンが在籍し、国際的なプロジェクトに取り組んでいる。

デザインの思想とアプローチ

アンデシェン&ヴォルのデザイン哲学の核心は、「優れた製品は伝統を継承し発展させながら、同時にその伝統の規則を破る」という弁証法的アプローチにある。変更や驚きの要素は、たとえそれが急進的でなくとも、デザインに関心のない人々にも思考と内省を促す。この「内省の瞬間」こそが、デザイナーと使用者が対話できる機会であり、彼らが追求する本質である。

彼らは特定の様式や方法論に縛られることを拒否し、オープンで自由なアプローチを好む。各プロジェクトに対して先入観なく取り組み、デザインのプロセスを通じて製品が独自の個性を獲得していくのを見守る。トルビョルンとエスペンは「それは無生物に生命を吹き込むようなものだ」と表現している。この感情主導のデザインプロセスが、魂を持つデザインの創造につながっている。

アンデシェン&ヴォルの実践は、文化的影響と市場の動向に対して極めて受容的である。彼らは孤立した芸術的表現ではなく、現代社会の文脈の中でデザインを位置づけ、その知識を革新的な方法で応用することで、画期的で魅力的な製品を生み出している。この実用主義的アプローチは、北欧の伝統的な価値観である機能性と美学の調和を体現しながら、現代の生活様式に適応した解決策を提供する。

彼らのデザインは、素材の本質的な性質に対する深い理解と敬意に基づいている。木材、金属、テキスタイル、それぞれの素材が持つ固有の特性を最大限に引き出しながら、現代の製造技術を巧みに活用することで、視覚的に軽やかでありながら構造的に堅牢な製品を実現している。この素材への洞察は、スカンディナヴィアデザインの長い伝統に根ざしながらも、常に新しい表現の可能性を探求している。

二人のデザイナーの関係性そのものが、彼らのデザイン哲学を体現している。トルビョルンは「エスペンと働くことは、小石が入った古い靴を履くようなものだ。人生の半分を一緒に働いてきたので慣れ親しんでいるが、最初は何事にも意見が一致しないので、決して快適ではない」と述べ、エスペンは「トルビョルンと働くことは、良いデザインとは何かについて自分の認識と見解に挑戦されることだ。20年近く一緒に働いているのは、常にすべてに同意しているからではなく、むしろ私たちの違いを製品に生命をもたらす方法として認識しているからだ」と語っている。この建設的な対立と対話のプロセスが、彼らのデザインに深みと多様性をもたらしている。

作品の特徴

アンデシェン&ヴォルの作品は、建築的な原則に基づく明瞭な構造と、彫刻的な優雅さを併せ持つことで知られている。Outlineシリーズに見られる細身のスチールレッグと精密なプロポーションは、モダニズムの建築言語を家具デザインに翻訳したものであり、空間に軽やかさと洗練をもたらす。一方で、Restソファに見られる柔らかなボリュームとゆったりとしたフォルムは、内側から外側へとデザインすることで、リラックスした快適さを視覚的に表現している。

現代の多様なライフスタイルと空間ニーズに応えるため、彼らの多くのデザインはモジュラー性を備えている。Connectソファシステムは、11のモジュールから構成され、異なる空間要件に合わせてカスタマイズできる。In Situソファも同様に、モジュラーコンポーネントを自由に組み合わせることで、個人住宅から商業施設まで幅広い用途に対応する。この柔軟性は、北欧デザインの実用主義と、現代の持続可能性への配慮を体現している。

New WorksのためにデザインしたLanternシリーズは、伝統的な日本の提灯からインスピレーションを得て、光と透明性の詩的な表現を追求している。フロストガラスのシェードが紙提灯の軽やかさを再現しながら、ブラックスチールのベースが彫刻的な安定感をもたらす。この対比が、空間に柔らかく拡散する光とともに、瞑想的な雰囲気を創出している。

&TraditionのInlandコレクションは、イタリアの華やかさとスカンディナヴィアのミニマリズムの境界を歩む野心的な試みである。低く、深く、直線的なアームレストと温かみのあるブラックスチールベースが、南欧の快楽主義と北欧の抑制の美学を融合させている。また、Audo CopenhagenのBrasiliaシリーズは、南米の情熱的な魂と北欧の洗練された感性を組み合わせたハイブリッドな表現として高く評価されている。

2025年に発表されたSettle Outdoorシリーズは、屋外用アップホルスター家具という伝統的なカテゴリーに新しい視点をもたらした。チューブラースチールと支持用テキスタイルバンドは屋外家具の古典的特徴を踏襲しながら、アップホルスタリーと仕立ての細部は屋内ソファの感覚を取り入れている。この対立する要素の融合が、軽やかで現代的な、明確にスカンディナヴィア的な雰囲気を生み出している。

主な代表作とそのエピソード

Outlineシリーズ（Muuto、2016年）

Outlineシリーズは、アンデシェン&ヴォルの最も象徴的なデザインの一つであり、現代スカンディナヴィアソファの新たな基準を確立した作品である。このデザインの核心は、寛大な座り心地を比較的コンパクトなフットプリントに翻訳することにあった。精密なプロポーションにより、2人掛けから最大の3.5人掛けまで、あらゆるサイズで一貫した強度と優雅さを保持している。Outlineの特徴は、その建築的な線と細身のスチールレッグによる視覚的な軽さにある。デザインプロセスにおいて、二人は1960年代のスカンディナヴィアクラシックからインスピレーションを得ながら、現代のライフスタイルに適応した洗練された表現を追求した。このシリーズは、ソファ、コーナーソファ、ラウンジチェア、デイベッド、公共空間向けのハイバックソファへと展開され、モジュラーシステムとして機能している。2016年の発表以来、Muutoのベストセラーコレクションとして確固たる地位を築き、世界中の住宅、ホテル、オフィス、公共施設で使用されている。

Pavilionコレクション（&Tradition）

Pavilionコレクションは、&Traditionのためにデザインされたアームチェアとサイドチェアのシリーズで、流麗な曲線と細身のチューブフレームを組み合わせた軽量でミニマリストなデザインが特徴である。このコレクションは、建築的な厳格さと有機的な柔らかさの絶妙なバランスを実現している。AV1サイドチェアは、積み重ね可能で多用途に使用できる実用性と、美しいフォルムを併せ持つ。AV5ラウンジチェアは、よりゆったりとした座り心地を提供しながら、同じデザイン言語を維持している。AV6デスクは、シリーズの美学を作業空間に拡張し、家庭とオフィスの両方に適した洗練されたワークステーションを提供している。Pavilionという名称は、建築的なパビリオンが提供する開放性と保護の両方を暗示しており、家具が空間に軽やかに配置されながらも、使用者に安定した快適さを提供するというコンセプトを体現している。

Lanternシリーズ（New Works、2018年）

Lanternシリーズは、伝統的な中国の紙提灯と日本の行灯からインスピレーションを得た照明コレクションである。2018年に最初のペンダントライトが発表され、その後フロアランプ、ウォールランプ、ポータブルランプへと展開された。このシリーズの美学は、フロストガラスのシェードが生み出す柔らかく拡散した光と、ブラックスチールフレームの彫刻的な存在感の対比にある。紙提灯の軽やかさを現代的な素材で再解釈することで、タイムレスでありながら現代的な魅力を持つ照明を実現している。Lantern Portable（ポータブルランプ）は、充電式バッテリーを内蔵し、屋内外で自由に持ち運べる機能性を備えている。これは、照明が固定された場所に縛られるという従来の概念に挑戦し、光を必要とする場所に自由に移動できるという新しい可能性を提示している。

Osloシリーズ（Muuto、2013年）

Osloシリーズは、軽やかな外観と支持力のある快適さを組み合わせることを目指してデザインされた。ノルウェーの職人技術とデンマークのKvadratテキスタイルを融合させ、スカンディナヴィアの協働精神を体現している。このシリーズの特徴は、スチールの内部構造、鋳造フォーム、Nozagスプリングによる快適なシーティングと、温かみのある高品質ファブリックで全面を覆った親密な抱擁感にある。スリムなアルミニウムレッグが家具を地面から浮き上がらせ、視覚的な軽さを強調している。ソファ、ラウンジチェア、サイドチェア、バースツール、オットマンへと展開されたこのコレクションは、若々しく現代的なリビング空間に完璧に適合する。

Connectモジュラーソファ（Muuto、2012年）

Connectは、アンデシェン&ヴォルとMuutoの協働における初期の成功作の一つである。2012年に発表されたこのモジュラーシーティングシステムは、ソファの異なるコンポーネント間の完璧な比例的接続を見出すというアイデアに基づいている。デザインは細部への精密な注意を示し、モダニズムから派生した建築的原則を体現している。細長く滑らかなラインがソファに現代的でありながらタイムレスな表現を与えている。11のモジュールから構成され、使用者は自分の空間に合わせてソファをカスタマイズできる独自の機会を提供している。

Inlandコレクション（&Tradition、2022年）

2022年に発表されたInlandコレクションは、イタリアの華やかさとスカンディナヴィアのミニマリズムの境界を歩むソファをデザインしたいという欲求から生まれた。低く、深く、直線的なアームレストと温かみのあるブラックスチールベースを持つこのソファは、南欧の感性と北欧の抑制を融合させている。ソファのフレームは無垢のビーチ材と合板で構成され、その後HRフォーム、クッション、ポリエステル綿で張り込まれている。Inlandコレクションは、AV21ラウンジチェア、AV22二人掛けソファ、AV23三人掛けソファで構成され、それぞれが同じデザイン言語を共有しながら、異なる空間ニーズに対応している。

功績と業績

アンデシェン&ヴォルは、家具、照明、ホームアクセサリーの分野で数々の国際的な賞を受賞している。主な受賞歴には、ウォールペーパー・デザイン賞、レッドドット・デザイン賞、iFデザイン賞、ディジーン賞、ノルウェー最優秀デザイン名誉賞が含まれる。彼らはノルウェーおよびスカンディナヴィアのデザイナー・オブ・ザ・イヤーに選出され、年間最優秀デザインと最優秀デザイナーとしても表彰されている。

Norway Says時代には、2007年にトルステン&ヴァンヤ・ソーダーベリ賞を受賞し、同年にノルウェー国立美術・建築・デザイン博物館での10年回顧展が開催された。この回顧展は、彼らがノルウェーデザインシーンを国際舞台に押し上げた功績を称えるものであった。

アンデシェン&ヴォルは、ヨーロッパとアジアの最も権威あるデザインブランドとの協働で知られている。Muutoとは2006年の創業時から密接な関係を築き、Outline、Connect、Oslo、Rest、In Situという5つのソファコレクションを手がけ、ブランドの象徴的なデザインを多数生み出している。&Traditionとの協働では、PavilionコレクションとInlandコレクションを発表し、伝統と革新の融合を体現するデザインを提供している。New WorksのためにはLanternシリーズを創作し、照明デザインの分野でも高い評価を獲得した。

2015年、アンデシェン&ヴォルは自社ブランド「Nedre Foss Collections」を立ち上げた。これは、スカンディナヴィアデザインをルーツとする持続可能なホームウェアオブジェクトのブランドである。Nedre Fossの核心は「世紀を超える製品」というコンセプトと「彫刻的な実用性」である。メーカーとして活動することで、既存の協働では得られなかった自由な表現と、異なる態度や言語をオブジェクトに込めることができると彼らは述べている。

トルビョルン・アンデルセンは、実践的なデザイン活動と並行して、ベルゲン国立芸術大学の教授として後進の育成に尽力している。自身が学んだ教育機関で教鞭を執ることで、次世代のノルウェーデザイナーにスカンディナヴィアデザインの伝統と革新的なアプローチを継承している。また、デンマークの主要経済紙「Dagens Næringsliv」のD2マガジンでデザインライターとしても活動し、現代デザインの動向や思想について執筆している。

評価と後世への影響

アンデシェン&ヴォルは、Norway Saysでの活動を通じて、ノルウェーを国際デザインマップに位置づけることに成功した先駆者である。2000年にミラノ・サローネに初めて出展した際、ノルウェーとして40年ぶりの参加となり、これが契機となって若いノルウェーデザイナーたちの国際的な方向性が高まった。彼らは、ノルウェーの新興デザインシーンへの国際的な関心を喚起する役割を果たした。

アンデシェン&ヴォルは、「ニュー・ノルディック」デザインムーブメントの先駆者として位置づけられている。このムーブメントは、スカンディナヴィアデザインの伝統的な価値観である機能性、職人技、誠実な表現を継承しながら、現代の文化的文脈と国際的な感性を統合する試みである。スウェーデンのMuuto、デンマークのHay、&Traditionといった「ニュー・ノルディック」ブランドとの協働を通じて、彼らは1950年代から60年代のスカンディナヴィアデザインの黄金時代の精神を現代に蘇らせながら、新しい素材、技術、美学を導入している。

アンデシェン&ヴォルのデザイン哲学における最も重要な貢献の一つは、感情主導のデザインアプローチの提唱である。彼らは「製品に魂を与える」「無生物に生命を吹き込む」という表現を用いて、デザインが単なる機能的問題解決ではなく、使用者との感情的な対話であることを強調している。この哲学は、北欧デザインが持つ人間中心主義の伝統を現代的に再解釈したものであり、デザインが人々の日常生活に感情的な豊かさをもたらす可能性を示している。

Nedre Foss Collectionsの設立を通じて、アンデシェン&ヴォルは持続可能なデザインの実践に積極的に取り組んでいる。「世紀を超える製品」というコンセプトは、使い捨て文化への対抗として、長期間使用できる高品質でタイムレスなデザインの重要性を提唱している。彼らのモジュラーデザインシステムも、持続可能性への貢献として評価できる。ConnectやIn Situのようなモジュラーソファは、生活状況の変化に応じて再構成できるため、家具の寿命を延ばし、資源の浪費を削減する。

現在、アンデシェン&ヴォルは、ノルウェーで最も成功し、影響力のあるデザインスタジオの一つとして広く認識されている。彼らの作品は、世界中の美術館、ギャラリー、デザインショールームに展示され、住宅、ホテル、オフィス、公共施設で使用されている。MuutoやTraditionのようなブランドにとって、アンデシェン&ヴォルのデザインはコレクションの中核を成し、ブランドアイデンティティの重要な要素となっている。OutlineシリーズやPavilionコレクションは、これらのブランドを代表するアイコニックなデザインとして、国際的に認知されている。