LC12 ラ・ロッシュは、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエとその従兄弟ピエール・ジャンヌレが1925年にデザインしたテーブルである。パリ16区に建設されたラ・ロッシュ邸のために設計され、モダニズム建築の先駆的作品として知られる同邸宅の内部空間を彩る家具として誕生した。2006年よりイタリアの名門家具ブランド、カッシーナが「イ・マエストリ」コレクションの一つとして復刻生産を行い、現代に至るまで世界中のデザイン愛好家に愛され続けている。
特徴・コンセプト
LC12の最も顕著な特徴は、支える部分と支えられる部分との間に生じる大胆なコントラストにある。垂直方向に伸びる脚部は最小限の幅に抑えられ、一方で水平方向に広がる天板は最大限の奥行きをもって設計されている。この比率の逆転こそが、本作品の造形的・詩的価値の核心をなしている。
実際の重量に反して天板は軽やかに見え、視覚的には繊細に映る脚部は十分な安定性と強度を備えている。ル・コルビュジエが他の作品でも探求したこの対比の概念は、機能主義を超えた美的探求の結晶である。彼の建築思想「住宅は住むための機械である」という理念が、家具デザインにおいても貫かれ、装飾を排した純粋な形態と機能の融合が実現されている。
内側から垂直に伸びる脚の配置により、対面での使用のみならず、テーブルを囲むように自由に椅子を配置することが可能である。この汎用性の高さは、現代の多様な住空間においても普遍的な魅力を放ち続けている。
エピソード
ラ・ロッシュ邸の誕生
本作品が生まれたラ・ロッシュ邸は、スイス出身の銀行家であり近代美術収集家でもあったラウル・ラ・ロッシュの依頼により建設された。ラ・ロッシュは、キュビスムおよびピュリスムの絵画コレクションを収蔵するためのギャラリーと住居を兼ね備えた邸宅を求めた。ル・コルビュジエは「ラ・ロッシュ、あなたのような素晴らしいコレクションをお持ちなら、それにふさわしい家を建てなければなりません」と語ったと伝えられている。
ラ・ロッシュ邸は1923年から1925年にかけて建設され、ル・コルビュジエが後に理論化する「新しい建築のための5つの原則」が初めて具現化された記念碑的建築となった。ピロティ、自由な平面、水平連続窓、屋上庭園、自由なファサードという革新的概念が導入され、20世紀建築史に不朽の足跡を残した。
建築的散歩の思想
ラ・ロッシュ邸においてル・コルビュジエは「建築的散歩」という概念を初めて導入した。訪問者が空間内を移動することで、建築の秩序が次々と展開されるという体験型の設計思想である。LC12テーブルは、この流動的な空間構成の中で、静謐な存在感を放ちながらも機能的な役割を果たすべく設計された。
カッシーナによる復刻
カッシーナは1964年、ル・コルビュジエの存命中にLCコレクションの製造権を取得し、「イ・マエストリ」コレクションの礎を築いた。LC12については2006年に正式に復刻生産が開始された。ル・コルビュジエ財団および共作者の遺族との緊密な協力のもと、原設計図面やプロトタイプの綿密な考証を経て、当時の設計意図を忠実に再現している。
評価
LC12 ラ・ロッシュは、20世紀モダニズムデザインの精髄を体現する作品として、国際的に高い評価を受けている。無駄を排除したミニマムなフォルムは、コーディネートするインテリアのデザインを問わない普遍性を備え、時代を超えて現代の住空間にも違和感なく溶け込む。
ラ・ロッシュ邸自体は1996年にフランスの歴史的建造物に指定され、2016年にはユネスコ世界遺産「ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献」の構成資産として登録された。本テーブルが誕生した空間そのものが、人類の文化遺産として認められたことは、LC12の歴史的・文化的価値を裏付けるものである。
カッシーナによる現行製品には、固有の製造番号が刻印され、その芸術的価値と真正性が保証されている。模倣品が氾濫する現代において、オリジナルデザインの文化的遺産としての保護と継承に貢献している。
基本情報
| デザイナー | ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ |
|---|---|
| デザイン年 | 1925年 |
| メーカー | カッシーナ(Cassina) |
| コレクション | イ・マエストリ(I Maestri)コレクション |
| 復刻生産開始 | 2006年 |
| サイズ | W1200×D800×H710/730mm、W1600×D1200×H710/730mm(2サイズ展開) |
| 天板 | 15mm厚クリアガラス、アメリカンウォールナット材、オーク材(ナチュラル/ブラック染色) |
| フレーム | スチールパイプ(クロムめっき仕上げ/ライトブルー塗装仕上げ) |
| 天板厚(木製) | 50mm |
| 生産国 | イタリア |