カスティリオーニ ブックケース「Joy」が長く愛される理由——360度回転する書棚
Joy(ジョイ)は、アキッレ・カスティリオーニが1989年にZanotta社のために設計したブックケースである。L字型の棚板がスチールの関節軸を中心に360度回転する。Zanottaによれば、1991年のコンパッソ・ドーロで選定作品となり、トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム財団(ミラノ)、国立現代美術基金(パリ)、インディアナポリス美術館の永久コレクションに収蔵されている。
螺旋階段を思わせる円環的な構成は、限られた設置面積で収納量を確保しつつ、壁際にもコーナーにも室内中央にも置ける自立性を備える。発表から35年以上を経た現在もZanotta社が生産を継続している。
本ページでは、仕様・サイズ・カラーバリエーション、類似するブックケースとの比較、暮らしへの取り入れ方、メンテナンス、正規販売店情報、よくある質問までを整理する。
アキッレ・カスティリオーニの設計思想や経歴について詳しくはアキッレ・カスティリオーニ プロフィールページをご覧ください。
Joyのデザインストーリーについて詳しくはカスティリオーニ ブックケース Joy紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
Joyは5段モデルと7段モデルの2サイズで展開され、いずれも完成品としてZanotta社より出荷される。以下に詳細仕様をまとめる。
| 正式名称 | Joy(ジョイ) / 製品番号 712 |
|---|---|
| デザイナー | アキッレ・カスティリオーニ(Achille Castiglioni, 1918–2002 / イタリア・ミラノ生まれ) |
| デザイン年 | 1989年 |
| 製造ブランド | Zanotta S.p.A.(ザノッタ) |
| 製造国 | イタリア(ノーヴァ・ミラネーゼ本社) |
| カテゴリ | 回転式フリースタンディングブックケース |
| 棚板・支柱素材 | MDF(中密度繊維板)、棚板内部にスチール補強コーナーエレメント |
| 関節軸素材 | スチール(塗装仕上げ) |
| 表面仕上げ | 耐傷性エンボス塗装 |
| カラーバリエーション | タルク(白系)、ヘンプ(麻系)、アマランス(赤紫系)、エスプレッソ(茶系)、ブラック、バーガンディ ※展開色は時期により変更される |
| 関節軸カラー | ブラック(ヘンプ・アマランス・エスプレッソ・ブラック版)、タルク(タルク版) |
| サイズ(5段モデル) | W840mm × D300mm × H1320mm |
| 重量(5段モデル) | 48.2kg |
| サイズ(7段モデル) | W960mm × D300mm × H1900mm |
| 重量(7段モデル) | 70kg |
| 構造 | 逆L字型棚板がスチール製関節軸を中心に360度回転 / 自立式(壁面固定不要) |
| 参考価格帯(税込目安) | 約45万〜55万円(海外参考価格 €2,750〜、カラー・段数により異なる) |
| 納期 | 受注生産 / 約5〜6週間(在庫状況により前後) |
| 受賞歴 | 1991年コンパッソ・ドーロ選定 / 2016年Wallpaper* Design Awards「Best of the Rest」 |
| 永久収蔵 | トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム(ミラノ)/ 国立現代美術基金(パリ)/ インディアナポリス美術館 |
類似商品・競合との比較
Zanotta Joyはリプロダクト品が存在しない、Zanotta社の独自製品である。「回転」あるいは「自立型ブックケース」という独自の類型を開拓した作品であるが、個性的な構造を持つデザイナーズブックケースとの比較を整理する。
| 比較項目 | Zanotta Joy(カスティリオーニ) | Moormann FNP(アクセル・クフス) | Opinion Ciatti Ptolomeo(ブルーノ・レイナルディ) |
|---|---|---|---|
| デザイン年 | 1989年 | 1989年 | 2004年 |
| 構造の特質 | 逆L字型棚板が関節軸で360度回転 | 板組みのみで自立する工業的構造 | 背表紙を見せるタワー型ブックシェルフ |
| 設置方式 | 自立式 / 壁際・コーナー・室内中央いずれも可 | 自立式 / 壁際設置推奨 | 自立式 / 室内中央推奨 |
| 素材 | MDF + スチール関節軸 | 合板(バーチ等) | スチール |
| 書籍の収め方 | 棚板に横置き(通常の書棚と同様) | 棚板に横置き | 背表紙を見せて縦積み |
| デザインの方向性 | 「発明的オブジェクト」——新しい類型の創出 | ミニマルな構造美、工業的合理性 | 書籍そのものをディスプレイとして見せる |
| ミュージアム収蔵 | トリエンナーレ・ミラノ / FNAC パリ / インディアナポリス美術館 | ピナコテーク・デア・モデルネ(ミュンヘン)他 | — |
| 参考価格帯 | 約45万〜55万円 | 約10万〜25万円 | 約5万〜15万円 |
選び方の指針
- 彫刻的な佇まいと可変性を求めるなら
- Zanotta Joyが候補となる。棚板が回転する機構、1991年のコンパッソ・ドーロ選定、3館への収蔵という履歴を併せ持つブックケースは限られる。壁際にも室内中央にも置ける自立性は、置き場所の自由度をそのまま設計の自由度に変える。
- 構造美とコストパフォーマンスを重視するなら
- Moormann FNPが候補となる。板組みのみで成立する合理的な構造は、ドイツのプロダクトデザインの精髄を示す。組み立て式による輸送効率の高さは価格面にも反映されている。
- 書籍のコレクションを「見せる」ことを重視するなら
- Opinion Ciatti Ptolomeoが適している。背表紙を外に向けて縦積みするスタイルは、書棚そのものが蔵書のディスプレイとなる。スチールのミニマルな構造と手頃な価格も魅力である。
使用感と暮らしへの取り入れ方
回転機構の使用感
Joyの最大の特徴は、各棚板がスチール製関節軸を中心に360度自由に回転する点にある。書籍や雑誌を収納した状態でも、棚板は軽い力で回転させることができ、背面に回った書棚を手前に引き寄せるような直感的な操作が可能である。棚板は円周上の任意の位置に止められるため、螺旋状に開いても、すべてを壁面側に揃えてコンパクトに収めてもよい。
ただし回転する構造であるため、棚板の片側に荷重が偏ると意図せず回ることがある。載せるものの配置とバランスの取り方が、この家具との付き合い方になる。
5段モデルと7段モデルの選択
- 5段モデル(W840×D300×H1320mm / 48.2kg)
- コンパクトなモデル。腰高程度の高さで、ソファやデスクの横に置くサイドシェルフとして、あるいはベッドサイドの読書用棚として使いやすい。重量48.2kgはJoyとしては軽く、模様替えの際の移動も現実的な範囲に収まる。
- 7段モデル(W960×D300×H1900mm / 70kg)
- フルサイズのモデル。人の背丈に近い1900mmの高さがあり、螺旋階段を思わせる立体的なフォルムが最もよく現れる。リビングや書斎の主役として、あるいは間仕切りとしての使用に適する。重量70kgのため、設置場所は事前に決めておきたい。
空間別のコーディネート提案
- リビングルーム
- Zanottaは、Joyを部屋の中央に置いて仕切りとして使うことも想定している。リビングとダイニングの境界に7段モデルを置けば、視線を通したまま領域を分けられる。壁際に置く場合は、棚板を扇形に開いた構成が収まりやすい。タルク(白系)は明るい部屋に、エスプレッソやブラックは落ち着いた部屋に合う。
- 書斎・ワークスペース
- デスクの脇に5段モデルを置き、作業中に参照する書籍を手元にまとめる。必要な段を手前に回し、使い終えたら奥へ送るという使い方ができる。
- 寝室
- 5段モデルをベッドサイドに置き、就寝前の読書用の棚として使う。床面積を取らずに冊数を確保できる。
- エントランス・ギャラリー
- オブジェや花器、写真集を並べる飾り棚として使う。アマランスやバーガンディを選べば、玄関の色のアクセントになる。
生活スタイル別の提案
- デザイン愛好家・コレクター
- 1991年のコンパッソ・ドーロ選定と3館への収蔵という履歴は、Joyをデザイン・コレクションの中核に置く根拠となる。カスティリオーニのArco(フロス)、Mezzadro(ザノッタ)、Toio(フロス)などと組み合わせれば、イタリアン・デザインで統一した空間になる。
- コンパクトな住空間にお住まいの方
- 奥行き300mmの棚板が軸のまわりに立ち上がる構造のため、床面積あたりの収納量が大きい。一人暮らしの書斎やワンルームで、部屋を狭めずに蔵書を置きたい場合に向く。
- クリエイティブな職業の方
- 棚板を回すだけで見え方が変わるため、アトリエやデザインオフィス、ショールームで、書籍とオブジェの見せ方を随時組み替えられる。
経年変化とメンテナンス
素材の特性と経年変化
- MDF(中密度繊維板)+耐傷性エンボス塗装
- 棚板はMDFを基材とし、表面に耐傷性のエンボス塗装が施されている。日常の傷や摩耗に強く、天然木のような色味の変化はほとんど起こらない。エンボス加工の微細な凹凸により、マットな質感が保たれる。
- スチール関節軸
- 塗装仕上げのスチール軸は耐久性が高く、回転は長期にわたり滑らかに保たれる。塗装の擦れが気になる場合はZanotta正規販売店に相談できる。
日常メンテナンスの方法
- 棚板・支柱(MDF表面)
- 柔らかい布での乾拭きが基本。汚れが付着した場合は、薄めた中性洗剤を含ませた布で拭き取り、その後乾拭きで仕上げる。研磨剤やアルコール系クリーナーはエンボス塗装を損傷するため使用不可。水気は速やかに拭き取ること。
- スチール関節軸
- 乾拭きで充分。回転機構の動作が重くなった場合は、関節部分の清掃が有効。可動部への注油はZanotta正規販売店に相談の上で実施することを推奨する。
- 設置面
- 7段モデルは70kgあるため、フローリングに置く場合はフェルトパッドを敷きたい。
修理・パーツ交換
Zanotta社は現在もJoyの製造を継続しており、正規販売店を通じてパーツ交換や修理の相談ができる。Zanotta社への問い合わせ先:communication@zanotta.it
どこで買うか:正規販売店と購入方法
国内正規販売店・取扱店
- METROCS(メトロクス)
- Zanotta社の日本国内正規ディーラー。ザノッタのサッコ、ボビーワゴンなど主要製品の取り扱い実績があり、Joyの取り寄せ・見積もりに対応可能。公式サイト:metrocs.jp
- IL DESIGN(イル デザイン)
- 東京デザインセンター内のイタリア家具直輸入専門店。Zanotta製品を現地正規代理店から直輸入する。張り地サンプル・資料の用意あり。公式サイト:italia-kagu.com
- DOPA(ドーパ)
- Zanotta製品を取り扱うインテリア家具専門店。見積もり・コーディネート相談に対応。公式サイト:dopa.co.jp
- CASE STUDY NAGOYA
- 名古屋のデザイン家具専門店。Zanotta製品の取り扱い実績あり。公式サイト:casestudynagoya.jp
海外正規販売店
- Zanotta公式サイト(zanotta.com)
- Joyの詳細仕様、カラーバリエーション、3Dデータのダウンロードが可能。Store Locatorから世界各国の正規販売店を検索可能。本社所在地:Via Vittorio Veneto 57, 20834 Nova Milanese (MI), Italy / TEL:+39-0362-4981
- Barthome(barthome.shop)
- イタリアのデザイン家具オンラインストア。Joy参考価格:€2,750〜。カラー・サイズ選択のうえ注文可能。納期約5〜6週間。
- Milia Shop(miliashop.com)
- イタリアのデザイン家具専門オンラインショップ。Zanotta Joy正規品の取り扱いあり。
- Tomassini Arredamenti(tomassini.com)
- イタリアのインテリアショップ。見積もり依頼に対応。
中古・ヴィンテージ市場
1989年の発表以降、継続して製造されているため、中古市場にも一定の流通がある。Deesup(欧州のデザイン家具中古マーケット)などで取引されることがある。購入にあたっては、軸の回転の滑らかさ、エンボス塗装の傷や剥がれ、棚板の反りを確認したい。
購入時チェックリスト
- 正規品であることの確認(Zanotta社の製品タグ・保証書の有無)
- モデルの選択(5段 / 7段)——設置空間の天井高と用途に応じて決定
- カラーの選択(タルク / ヘンプ / アマランス / エスプレッソ / ブラック / バーガンディ)
- 設置場所の床面強度確認(7段モデルは70kg)
- 搬入経路の確認(7段モデルはH1900mmの完成品出荷)
- フローリング保護パッドの手配
- 納期の確認(受注生産のため約5〜6週間)
配送・設置に関する注意事項
Joyは完成品として出荷されるため、組み立て作業は不要である。ただし、7段モデル(H1900mm、70kg)は相当な大きさと重量があるため、搬入経路(エレベーター、階段、扉幅)の事前確認が必須である。自立式で壁面固定工事は不要であるが、安定した水平面に設置すること。海外からの個人輸入の場合は、国際配送料、関税・消費税の負担を考慮いただきたい。
コーディネート事例
イタリアン・ラディカルデザインスタイル
同じZanotta社のSacco(サッコ、ガッティ・パオリーニ・テオドーロ)、Mezzadro(メッツァドロ、カスティリオーニ兄弟)、Shanghai(シャンハイ、デ・パス・ドゥルビーノ・ロマッツィ)と組み合わせる。いずれも既存の家具の形式を問い直した作品で、Joyと並べると設計の系譜が見えてくる。
コンテンポラリー・ミニマルスタイル
タルク(白系)またはブラックのJoyを、白を基調とした部屋に置く。形だけが際立ち、色は棚板に並ぶ書籍やオブジェが担う。B&B ItaliaやCassina、Molteni&Cなど、イタリアの現代家具と合わせやすい。
エクレクティック・ミックススタイル
アマランスやバーガンディのJoyを、北欧ヴィンテージやミッドセンチュリーの家具と混ぜる。木の家具が並ぶなかに、彩度の高いスチールとMDFの立体が一つ入ることで、部屋の重心がずれる。
設置場所の目安
- 5段モデル(W840×D300×H1320mm)
- 棚板を全開に広げる場合、目安として直径1700mm程度の円形スペースを見込む。壁際で半円状に広げるなら、壁からの出幅約850mm×幅約1700mm。6畳程度から設置できる。
- 7段モデル(W960×D300×H1900mm)
- 棚板を全開に広げる場合、目安として直径1900mm程度。室内中央に置くなら周囲に動線を確保する。8畳以上が望ましい。天井高は2100mmあれば設置できるが、上部に余白を取るなら2300mm以上。
よくある質問
- Zanotta Joyの価格はどのくらいですか?
- 海外の正規販売店における参考価格は€2,750〜で、カラーやモデル(5段 / 7段)により異なります。日本国内での購入価格は、関税・消費税・配送料を含めて約45万〜55万円程度が税込目安となります。正確な価格は国内正規販売店への見積もり依頼を推奨します。
- どこで購入できますか?
- 国内ではMETROCS(メトロクス)、IL DESIGN(東京デザインセンター)、DOPA、CASE STUDY NAGOYAなどのZanotta正規取扱店で購入・取り寄せが可能です。海外ではZanotta公式サイトのStore Locatorから世界各国の正規販売店を検索できます。
- 実物を確認できる場所はありますか?
- 国内正規取扱店の店頭に展示されている場合がありますので、来店前に展示状況をお問い合わせください。海外ではZanotta社のショールーム(ノーヴァ・ミラネーゼ本社)およびミラノ市内のZanotta取扱店にて確認できます。ミラノサローネ期間中にはZanottaブースでの展示も行われます。
- リプロダクトはありますか?
- Zanotta Joyのリプロダクト品は存在しません。Zanotta S.p.A.が製造する正規品のみが入手可能です。
- 棚板はどのくらいの重さに耐えられますか?
- 棚板の内部にはスチール補強コーナーエレメントが組み込まれており、一般的な書籍や雑誌の収納に充分な耐荷重を有します。ただし、極端に重い書籍や物品を片側に集中して載せると回転のバランスに影響するため、適度な分散配置を心がけてください。Zanotta社は具体的な数値を公表していないため、詳細は正規販売店にお問い合わせください。
- 組み立ては必要ですか?
- Joyは完成品として出荷されるため、組み立て作業は不要です。開梱して設置場所に置くだけで使用開始できます。ただし、7段モデルは高さ1900mm、重量70kgあるため、搬入と設置には2名以上での作業を推奨します。
- 日常のメンテナンスはどのようにすればよいですか?
- 柔らかい布での乾拭きが基本です。汚れが付着した場合は薄めた中性洗剤で対応してください。研磨剤やアルコール系クリーナーは塗装を傷めるため使用不可です。回転機構の動作不良時は、Zanotta正規販売店にご相談ください。
- 他に検討すべきカスティリオーニの名作はありますか?
- アキッレ・カスティリオーニは、照明のArco、Taccia、Toio(いずれもフロス)、スツールのMezzadro、Sella(いずれもザノッタ)など、数多くの作品を遺しています。Joyとこれらを組み合わせれば、彼の設計を軸にした空間が組み立てられます。詳しくはアキッレ・カスティリオーニ プロフィールページをご覧ください。