USM Haller Table/Deskは、1963年にスイスの著名な建築家フリッツ・ハラーとエンジニアのパウル・シェアラーによって創造された、モジュラー家具システムの基幹をなすデスクコレクションである。建築における革新的なモジュラー思想を家具デザインへと昇華させた本作は、クロームメッキのスチールチューブフレームと多様な素材の天板によって構成され、時代を超越した機能美と無限の拡張性を実現している。

USM社の創業者ウルリッヒ・シェアラーの孫であるパウル・シェアラー・ジュニアは、1961年に同社の近代化を志し、フリッツ・ハラーに新工場の設計を依頼した。ハラーの開発した「MAXI」システムによって1965年に竣工した工場に隣接する管理棟を整備する過程で、既存の市場に満足できる家具が存在しなかったことから、両者は独自のモジュラー家具システムの開発に着手した。こうして誕生したUSM Hallerシステムは、当初は社内使用のみを想定していたが、その卓越した設計思想が評価され、1965年に特許を取得、1969年にパリのロスチャイルド銀行からの注文を契機として商業生産が開始された。

デザインの特徴とコンセプト

USM Haller Table/Deskの設計思想は、フリッツ・ハラーが建築において確立した「Form follows Function(形態は機能に従う)」という原則を体現している。建築家として100以上のプロジェクトを手がけたハラーは、「MINI」(住宅・小規模オフィス)、「MIDI」(中規模建築)、「MAXI」(産業施設)という三つのモジュラー建築システムを開発し、スイス近代建築を代表する「ゾロトゥルン派」の中心的存在として国際的な評価を確立した。これらの建築システムで培われた構造的知見と工業生産の合理性が、USM Hallerシステムの設計基盤となっている。

デスクの構造は、特許取得済みの球体コネクター、クロームメッキのスチールチューブ、そして天板という三つの基本要素で構成される。この極めてシンプルな構成要素によって、デスクは必要に応じて任意の方向へ拡張・再構成が可能となり、使用者のニーズの変化に柔軟に対応できる。天板には合成樹脂ラミネート、リノリウム、MDF(中密度繊維板)が選択でき、多彩なカラーバリエーションによって個々の空間に調和した統合が可能である。また、USM Haller Table Plusには、USBポートやランプマウントなどのアクセサリーを簡単に取り付けられる適応ポイントが装備され、現代的なワークスペースの要求に応えている。

デザインの本質的特徴は、その時代を超越した普遍性にある。流行に左右されない明快な線と古典的な設計により、半世紀以上にわたって生産が継続されながらも、創造当初と変わらぬスタイリッシュさと先駆性を保持している。モジュラー性と適応性の統合により、デスクは単なる家具を超えて、進化し続ける作業環境のための実用的な道具として機能する。

エピソード

建築から家具への転換

USM Haller Table/Deskの誕生には、建築プロジェクトから派生した特筆すべき経緯がある。1961年、パウル・シェアラー・ジュニアがフリッツ・ハラーに依頼した新工場の設計において、ハラーは自身が開発した「MAXI」システムを採用した。この革新的なモジュラー建築システムは、鋼鉄製のフレームモジュールを用いることで、建物の規模を要求に応じて拡大・縮小できる柔軟性を実現していた。1965年に竣工した工場は、産業建築における新時代の到来を象徴する作品となった。

隣接する管理棟「パビリオン」の完成に際し、シェアラーとハラーは既存の市場に満足できるオフィス家具が存在しないことに直面した。当時としては革新的であった非階層的なオープンプラン・オフィスというコンセプトに適合し、かつハラーの建築思想を反映する家具が必要とされた。両者は、建築におけるモジュラーシステムの原理を家具デザインに応用することを決意し、1963年にUSM Hallerシステムの開発を開始した。建築の規模を縮小し、同じ鋼鉄フレーム構造の原理を家具に適用することで、変化するニーズに適応可能なモジュラー家具システムが誕生したのである。

世界的評価の確立

当初は社内使用のみを想定していたUSM Hallerシステムであったが、その卓越した設計と機能性は瞬く間に注目を集めた。1965年に特許を取得した後、1969年にパリの名門ロスチャイルド銀行から最初の商業注文が舞い込んだことで、本格的な量産体制への移行が決定された。この象徴的な最初の顧客は、システムの品質と信頼性を国際的に証明する役割を果たした。

2001年、USM Hallerシステムはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久コレクションに収蔵されるという栄誉に浴した。この認定は、単なる機能的な家具としてではなく、20世紀モダニズムデザインを代表する芸術作品としての地位を確立した。MoMAの収蔵は、ル・コルビュジエの椅子などの名作と並ぶ評価を意味し、当時のCEOアレックス・シェアラーは「我々の製品に新たな深みと定義をもたらす重要かつ決定的な区別」と述べた。さらに同システムは、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館のコレクションにも加えられ、デザイン史における確固たる地位を築いている。

興味深いことに、MoMAは単にUSM Hallerシステムをコレクションに加えただけでなく、同館のオフィススペース全体においてもこのシステムを実際に使用している。これは、同システムが美術館の審美的基準と実用的要求の両方を満たす稀有な存在であることを示している。

持続可能性のパイオニア

USM Hallerシステムは、現代的な持続可能性の概念が一般化する遥か以前から、環境配慮を設計の中核に据えていた。2000年代初頭、USMは欧州企業として初めてGREENGUARD認証を取得し、製品が低化学物質・低粒子排出基準を満たしていることを証明した。さらにCradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)認証も取得し、製品ライフサイクル全体における環境負荷の最小化に取り組んでいる。

最も注目すべきは、システムの長寿命設計思想である。1960年代初頭に製造された部品が、現在購入した新しい部品と完全に互換性を持ち、統合できるという事実は、真の持続可能性を体現している。使用者は世代を超えて家具を継承し、必要に応じて新しい部品を追加することで、システムを進化させ続けることができる。この「世代を超えた家具」というコンセプトは、大量消費社会への明確なアンチテーゼであり、製品の寿命が長いほど環境への悪影響が少ないという原則を実践している。パウダーコーティングされた鋼鉄とクロームメッキのスチールチューブという高品質で耐久性のある素材の選択は、この長期使用を可能にする基盤となっている。

評価と影響

USM Haller Table/Deskは、機能主義デザインの最高峰として、半世紀以上にわたり専門家と一般使用者の両方から高い評価を受け続けている。デザイン評論家たちは、その明快な形態、卓越した構造的完全性、そして時代を超越した審美性を称賛してきた。また実用面においても、弁護士事務所、医療機関、企業オフィス、そして個人住宅に至るまで、世界中の多様な環境で採用され、その適応性と信頼性が証明されている。

本システムが現代デザインに与えた影響は計り知れない。モジュラーデザインの原理を家具に応用し、その商業的成功を実証したことで、後続する無数のデザイナーや企業に道を開いた。特に、持続可能性と適応性を両立させるというアプローチは、現代の家具デザインにおける重要な規範となっている。フリッツ・ハラーの「形態は機能に従う」という建築哲学を家具デザインへ転換した功績は、建築と家具デザインの境界を曖昧にし、両分野の相互作用を促進した。

興味深いことに、ハラーは建築家としても極めて高い評価を受けていながら、一般的にはUSM Hallerシステムの創造者として最もよく知られている。このことは、優れた家具デザインが建築作品と同等、あるいはそれ以上に文化的影響力を持ち得ることを示している。スイス建築博物館でのハラーの回顧展において、共同キュレーターのゲオルク・ヴラヒリオティスは、「建築家に関する展覧会で家具を展示することの是非」という問いに対し、「USMシステムはハラーの経歴における画期的な業績であり、これを除外することは彼のキャリアにおいて重要かつ決定的な何かを省略することになる」と述べている。

受賞歴と認証

USM Haller Table/Deskを含むUSM Hallerシステムは、その卓越した設計と持続可能性により、数々の栄誉と認証を獲得している。最も重要な認定として、2001年のニューヨーク近代美術館(MoMA)永久コレクションへの収蔵、そしてクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館のコレクションへの選定が挙げられる。これらは、20世紀デザイン史における本システムの不可欠性を公式に認めるものである。

環境面では、欧州企業として初めてGREENGUARD認証を取得し、低化学物質・低粒子排出の厳格な基準を満たしていることが証明されている。さらにCradle to Cradle認証も取得し、製品のライフサイクル全体における環境配慮が評価されている。またスイス国内では、1960年代から現在まで部品の互換性を維持し続けている点が、スイス持続可能性賞の対象となった。これらの認証と評価は、USM Hallerシステムが単なるデザインアイコンではなく、環境的責任を果たす先駆的な製品であることを示している。

基本情報

デザイナー フリッツ・ハラー、パウル・シェアラー
ブランド USM(USM U. Schärer Söhne AG)
デザイン年 1963年
生産開始 1969年(商業生産)
製造国 スイス(ミュンジンゲン)
主要素材 クロームメッキスチールチューブ、パウダーコーティング鋼鉄、ラミネート・リノリウム・MDF(天板)
構造 モジュラーシステム(球体コネクター、チューブ、パネル)
サイズ展開 多様(T59: 150cm×76cm、T69: 175cm×76cm など、カスタマイズ可能)
標準高さ 74cm
特許取得 1965年
MoMA収蔵 2001年
認証 GREENGUARD認証、Cradle to Cradle認証