モデル142ブックケース / FJパネルシステムが長く愛される理由——壁面を収納に変えるシステム
モデル142ブックケース(FJパネルシステム)は、フィン・ユールが1953年に設計した壁掛け式のパネル・シェルビングシステムである。壁面に木製パネルを取り付け、そこに棚板と引き戸付きキャビネットを掛けていく。ユールが目指した「ゲザムトクンストヴェルク(総合芸術)」——家具と空間が一体となる設計思想が、収納という機能にまで及んだ結果と言える。
オリジナルはボヴィルケ社が製造した。現在はOnecollection(ハウス・オブ・フィン・ユール)が、デンマーク・リングコービンの自社工房で生産している。製品には真贋証明書が付属する。
本ページでは、システムの仕様・素材・構成の自由度、類似する壁面シェルフシステムとの比較、暮らしへの取り入れ方、メンテナンス、正規販売店情報、よくある質問までを整理する。
フィン・ユールの設計思想や経歴について詳しくはフィン・ユール プロフィールページをご覧ください。
モデル142ブックケースのデザインストーリーについて詳しくはモデル142ブックケース紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
FJパネルシステムは、壁面に取り付けるパネルを基盤として、棚板やキャビネットを自由に配置するモジュラー構成の収納システムである。エレメントベースの構造により、ほぼ無限の組み合わせが可能であり、6種類の定番コンポジション(1A、1B、2A、2B、3A、3B)が用意されているほか、完全なカスタム構成にも対応する。以下に各エレメントの詳細仕様をまとめる。
| 正式名称 | モデル142ブックケース / FJパネルシステム(FJ Panel System) |
|---|---|
| デザイナー | フィン・ユール(Finn Juhl, 1912–1989 / デンマーク・フレデリクスベア生まれ) |
| デザイン年 | 1953年 |
| オリジナル製造 | ボヴィルケ(Bovirke) |
| 現行製造ブランド | Onecollection / House of Finn Juhl(ハウス・オブ・フィン・ユール) |
| 製造国 | デンマーク(リングコービン自社工房) |
| カテゴリ | 壁掛け式パネルシェルフシステム / モジュラー収納 |
| パネル素材 | チーク、ウォールナット、オーク、アッシュ、オレゴンパイン突板、または塗装仕上げ |
| 棚板素材 | チーク、ウォールナット、オーク、アッシュ、オレゴンパイン突板、または塗装仕上げ |
| キャビネット本体素材 | チーク、ウォールナット、オーク、オレゴンパイン突板 |
| キャビネット引き戸素材 | ホワイト/イエロー、ホワイト/ライトブルー、または木材突板 |
| 棚受け | 焼き入れスチール |
| 付属品 | サーティフィケート・オブ・オーセンティシティ(真贋証明書) |
各エレメントの寸法
| FJ 5550 スタートパネル | W780/800mm × D40mm × H2000mm |
|---|---|
| FJ 5551 ランニングパネル | W780/790mm × D40mm × H2000mm |
| FJ 5552 エンドリスト | W28/56mm × D40mm × H2000mm |
| FJ 5554 棚板(浅型) | W780mm × D220mm × H19mm |
| FJ 5554 棚板(中型) | W780mm × D280mm × H19mm |
| FJ 5555 棚板(深型) | W780mm × D450mm × H19mm |
| FJ 5554 マガジンシェルフ | W780mm × D280mm × H19mm |
| FJ 5556 キャビネット | W1570mm × D450mm × H307mm |
| ブックエンド | W10mm × D253mm × H60mm |
価格について
FJパネルシステムは構成エレメントの組み合わせにより価格が大幅に異なるため、定価の一律表示は行われていない。パネル2枚+棚板数枚のシンプルな構成から、パネル4枚+キャビネット付きの大規模構成まで幅広い選択肢があり、正規販売店を通じた個別見積もりが基本となる。参考として、フィン・ユールの家具はOnecollection正規品として、テーブル類で約28万〜36万円程度(国内正規店価格)の価格帯であり、パネルシステムは構成の規模に応じてこれを上回る価格帯となることが想定される。
類似商品・競合との比較
FJパネルシステムはOnecollection社が製造する正規復刻品のみが流通しており、リプロダクト品は存在しない。1950年代のデンマークにおいて数多く生み出された壁面シェルフシステムの中から、デザイン史的に関連の深い作品との比較を整理する。
| 比較項目 | FJパネルシステム(フィン・ユール) | Stringシェルフ(ニルス・ストリニング) | Royal System(ポール・キャドヴィウス) |
|---|---|---|---|
| デザイナー | フィン・ユール | ニルス・ストリニング | ポール・キャドヴィウス |
| デザイン年 | 1953年 | 1949年 | 1948年 |
| 製造国 | デンマーク(Onecollection) | スウェーデン(String Furniture) | デンマーク(dk3) |
| 構造方式 | 木製パネル壁面取付+焼き入れスチール棚受け | ワイヤーラダー(はしご型フレーム)+棚板 | 金属レール壁面取付+木製棚板・キャビネット |
| 壁面との関係 | パネルが壁面を覆い、空間全体のデザインに統合される | ワイヤーフレームで壁面を透かす軽やかさ | 金属レールを壁面に固定し、木製エレメントを吊り下げる |
| 素材の特質 | 銘木突板パネル(チーク・ウォールナット・オーク等)+カラー引き戸 | MDF・金属・木材 各種 | スモークドオーク・ウォールナット等の無垢材 |
| デザインの方向性 | 総合芸術(ゲザムトクンストヴェルク)としての壁面デザイン | 軽やかさと透明感を重視したミニマル構成 | 重厚な北欧木工の伝統と壁面構成の自由度 |
| 参考価格帯 | 構成による個別見積もり | 約5万円〜(小規模構成) | 約30万円〜(構成による) |
選び方の指針
- 壁面そのものを設計の対象にするなら
- FJパネルシステムが適している。木製パネルが壁を覆うため、収納であると同時に壁の仕上げ材にもなる。チーク、ウォールナット、オークの突板パネルと、ホワイト/イエローやホワイト/ライトブルーの引き戸を組み合わせられる。
- 軽やかさと導入しやすさを重視するなら
- Stringシェルフが候補となる。ワイヤーラダーの細い構造は視覚的に軽く、小規模な構成から段階的に足していける。
- 無垢材の質感と大きな壁面構成を求めるなら
- dk3のRoyal Systemが適している。スモークドオークやウォールナットの無垢材と、金属レールによる自由な配置が組み合わさる。
使用感と暮らしへの取り入れ方
収納力と実用性
焼き入れスチールの棚受けはパネル上の任意の位置に取り付けられる。書籍が増えたとき、飾るものが変わったとき、住まい方が変わったときに、その都度構成を組み替えられる。
棚板は奥行き220mm、280mm、450mmの3種類。450mmの棚板は小さなデスクとしても使える。キャビネット(W1570×D450×H307mm)はパネル2枚分にわたる横長の構造で、引き戸を閉じれば中身が隠れる。引き戸の色は、閉じた面をそのまま壁の色として扱えることを意味する。
空間別のコーディネート提案
- リビングルーム
- 主要な壁面にパネル3〜4枚を展開し、書籍やオブジェ、花器を並べる。下部にキャビネットを置けば、AV機器やリモコンといった生活用品を隠せる。ウォールナットのパネルは落ち着いた部屋に、オークのクリアオイル仕上げは明るい部屋に合う。
- 書斎・ライブラリー
- 奥行き280mmの棚板は一般的な書籍に合う。マガジンシェルフを組み合わせれば、雑誌を表紙を見せて置ける。ブックエンドは棚板上で書籍を支える。
- ダイニング
- キャビネットに食器やグラス、テーブルリネンを収め、上部のオープン棚にワインボトルや花器を置く。フィン・ユールのダイニングテーブルや109チェアと揃えられる。
- エントランス・ホール
- パネル2枚の構成で、鍵や郵便物を置く棚板と、帽子やスカーフを収めるキャビネットを組む。奥行きの浅い220mmの棚板を選べば、狭い玄関でも通行の邪魔にならない。
生活スタイル別の提案
- デンマーク・モダン愛好家
- フィン・ユールの45チェア、チーフテンチェア、ポエットソファ、ジュダステーブルと同じ工房の製品であり、樹種と仕上げを揃えやすい。家具と壁面を同じ設計思想でまとめたい場合の選択肢となる。
- 建築家・インテリアデザイナー
- パネルの樹種、棚板の配置、引き戸の色を個別に指定できるため、空間全体の設計意図に合わせ込める。住宅からホスピタリティ空間まで対応する。
- コレクター
- 1950年代のボヴィルケ製オリジナルは、デンマーク・モダンのヴィンテージ市場で扱われる。Onecollectionの現行品は真贋証明書付きの正規品として、フィン・ユール・コレクションの一角を成す。
経年変化とメンテナンス
素材ごとの経年変化
- チーク
- 初期の金褐色から、時間とともに飴色へと深まる。フィン・ユール自身がチークを多用した素材でもある。
- ウォールナット
- 深い茶褐色がやや明るい方向へ落ち着き、木目が読み取りやすくなる。
- オーク
- クリアオイル仕上げは時間とともにわずかに飴色が深まり、艶が出る。ダークオイル仕上げは初期の濃い色調をおおむね保つ。
- 焼き入れスチール(棚受け)
- 焼き入れ処理により耐久性が高く、経年での変化はごくわずかである。
日常メンテナンスの方法
- 木製パネル・棚板
- 柔らかい布での乾拭きが基本。オイル仕上げの場合は、年に1〜2回、家具用オイルの塗布で木肌の潤いと美しさを維持できる。水気は速やかに拭き取ること。直射日光の長時間照射は色ムラの原因となるため、カーテンやブラインドでの調整が望ましい。
- 塗装仕上げのパネル・引き戸
- 柔らかい布で乾拭き、または薄めた中性洗剤で拭き取り後に乾拭き。研磨剤や溶剤系洗剤は塗膜を傷めるため使用不可。
- 焼き入れスチール棚受け
- 乾拭きで充分。汚れが付着した場合は薄めた中性洗剤で対応する。
修理・パーツ交換
Onecollectionは現在もFJパネルシステムの製造を継続しており、正規販売店を通じてエレメントの追加注文やパーツ交換ができる。棚板の追加、パネルの交換、棚受けの補充のほか、将来的な構成変更の相談にも応じている。
どこで買うか:正規販売店と購入方法
国内正規販売店
- KONDO(コンドー)
- Onecollection / House of Finn Juhlの正規取扱店。フィン・ユールのペリカンテーブル、FJ4850コーヒーテーブルなどの取り扱い実績があり、FJパネルシステムの取り寄せ・見積もりにも対応可能。公式オンラインショップ:e-kondo.jp
- 北欧デザイン専門店各社
- 国内の北欧デザイン家具を扱うインテリアショップにおいて、Onecollection / House of Finn Juhl製品の取り扱い・取り寄せに対応している店舗がある。FJパネルシステムは構成の個別設計が必要なため、事前の問い合わせを推奨する。
海外正規販売店
- House of Finn Juhl 公式サイト(finnjuhl.com)
- Onecollectionが運営するフィン・ユール作品の公式ブランドサイト。パネルシステムの詳細仕様、6種類の定番コンポジション、素材選択のシミュレーションが可能。販売店の検索機能あり。本社所在地:デンマーク・リングコービン
- Smink Inc.(sminkinc.com / ロサンゼルス)
- 米国におけるHouse of Finn Juhlの正規ディーラー。FJパネルシステムの取り扱いおよびコンサルティングに対応。
- Naharro Furniture(naharro.com / マドリード)
- スペインにおけるHouse of Finn Juhlの正規ディーラー。ショールームでの展示および配送・設置サービスに対応。
- Aram Store(aram.co.uk / ロンドン)
- 英国を代表するデザイン家具店。Onecollection製品の取り扱い実績あり。
フィン・ユール体験施設(日本国内)
- House of Finn Juhl Hakuba(長野県白馬村)
- フィン・ユールの家具を配したデザインホテル。ペリカンチェア、45チェア、ポエットソファなどを実際に使いながら滞在できる。展示状況は事前に確認されたい。
- フィン・ユール邸(飛騨高山)
- コペンハーゲン近郊のフィン・ユール自邸を再現した施設。家具と建築を一体で見られる。公開日程は事前に確認されたい。
中古・ヴィンテージ市場
1950〜60年代のボヴィルケ製オリジナルは、デンマーク・モダンのヴィンテージ市場で扱われる。1stDibsではローズウッド突板やチーク突板の個体が取引されており、構成と状態により価格は大きく異なる。国内でもDECO-BOCO等の北欧ヴィンテージ家具専門店で、フィン・ユール作品が扱われることがある。
ヴィンテージ品の購入に際しては、パネルの反りや割れ、突板の剥がれ、スチール棚受けの錆や変形、壁面取付金具の状態を慎重に確認いただきたい。
購入時チェックリスト
- 正規品であることの確認(Onecollection / House of Finn Juhlの真贋証明書の有無)
- 設置壁面の寸法測定(幅・高さ・壁面の材質と強度の確認)
- 壁面の耐荷重確認(石膏ボードのみの壁面では追加補強が必要な場合あり)
- 構成の決定(パネル枚数、棚板の枚数・奥行き・配置、キャビネットの有無)
- 素材・仕上げの選択(パネル・棚板・キャビネットの樹種、引き戸のカラー)
- 正規販売店を通じた個別見積もりの取得
- 壁面取付工事の手配確認(専門業者による壁面固定工事が必要)
- 納期の確認(受注生産品のため、数か月の納期を見込むこと)
配送・設置に関する注意事項
FJパネルシステムは壁面固定型の収納システムであり、設置には壁面への取付工事が必要となる。石膏ボード壁の場合は下地補強が必須であり、コンクリート壁やレンガ壁の場合は適切なアンカーの選定が求められる。正規販売店では、設計から設置工事まで一貫したサポートを提供している場合が多い。パネル(H2000mm)の搬入経路も事前に確認が必要である。
コーディネート事例
デンマーク・モダン正統派スタイル
チーク突板のパネルを基調に、フィン・ユールの45チェア、ジュダステーブル、ポエットソファを合わせる。キャビネットの引き戸はホワイト/ライトブルーを選び、木材で覆われた壁面に一色だけ差し込む。フィン・ユール自邸(1942年設計、コペンハーゲン近郊オードロップ)の内装を参照した構成である。
コンテンポラリー・スカンジナビアンスタイル
オークのクリアオイル仕上げパネルに、ブラックペイントのアッシュ棚板を組み合わせる。明るい壁面に棚板の水平線だけが黒く走る構成で、HAYやMuutoなど現代の北欧ブランドの家具とも合わせやすい。
和モダン・融合スタイル
フィン・ユールは1957年に「ジャパンシリーズ」を発表しており、日本の意匠への関心が知られている。ウォールナットのパネルを和室の壁面に据え、書籍や茶器、花器を並べる構成は、パネルの水平線と和室の直線が呼応する。House of Finn Juhl Hakuba(白馬)の内装が参考になる。
広さ別の配置ガイド
- 6〜10畳程度の空間
- パネル2枚の構成(コンポジション1A / 1B相当)。壁面の一角に書斎コーナーや飾り棚を設ける用途に適する。キャビネットを省き、棚板だけで組んでもよい。
- 10〜16畳程度の空間
- パネル3枚の構成(コンポジション2A / 2B相当)。キャビネットを組み込めば、隠す収納と見せる収納の割合を調整できる。
- 16畳以上の広い空間
- パネル4枚以上の構成(コンポジション3A / 3B相当以上)。リビングとダイニングにまたがる大壁面に展開すれば、壁面全体が一続きの収納となる。
よくある質問
- FJパネルシステムの価格はどのくらいですか?
- 構成エレメント(パネル枚数、棚板数・奥行き、キャビネットの有無)と素材選択により価格は大幅に異なります。定価の一律表示はなく、正規販売店を通じた個別見積もりが基本です。フィン・ユール作品のOnecollection正規品として、相応の価格帯となります。詳細は国内正規取扱店または海外正規ディーラーへお問い合わせください。
- どこで購入できますか?
- 国内ではKONDO(コンドー)をはじめとするOnecollection / House of Finn Juhlの正規取扱店にて購入・取り寄せが可能です。海外ではHouse of Finn Juhl公式サイト(finnjuhl.com)から正規販売店を検索できます。Smink Inc.(ロサンゼルス)、Naharro(マドリード)などの主要ディーラーでも取り扱っています。
- 実物を確認できる場所はありますか?
- 国内では、House of Finn Juhl Hakuba(長野県白馬村)にてフィン・ユール作品を体験できます。また、飛騨高山のフィン・ユール邸再現施設でも統合的インテリアデザインを鑑賞可能です。海外ではOnecollection本社(デンマーク・リングコービン)のショールームおよび各国の正規ディーラー店舗にて確認できます。
- 壁面の工事は必要ですか?
- はい、FJパネルシステムは壁面固定型の収納システムであり、設置には壁面への取付工事が必要です。石膏ボード壁の場合は下地補強が必須となります。正規販売店では設計から設置工事まで一貫したサポートを提供しています。
- リプロダクトはありますか?
- FJパネルシステムのリプロダクト品は存在しません。Onecollection / House of Finn Juhlがフィン・ユールの未亡人ハンネ・ヴィルヘルム・ハンセンより独占的な製造権を取得しており、デンマーク・リングコービンの自社工房で製造される正規品のみが入手可能です。すべての製品に真贋証明書が付属します。
- 日常のメンテナンスはどのようにすればよいですか?
- 木製パネル・棚板は柔らかい布での乾拭きが基本です。オイル仕上げの場合は年1〜2回の家具用オイル塗布で美しさを維持できます。塗装仕上げ面は乾拭きまたは薄めた中性洗剤で対応。研磨剤や溶剤は使用不可です。直射日光による色ムラを防ぐため、カーテンやブラインドでの調整を推奨します。
- 構成を後から変更・追加できますか?
- はい、モジュラーシステムの特性上、棚板の追加やキャビネットの追加注文が可能です。パネルの追加によるシステムの拡張も対応できます。正規販売店を通じてOnecollectionに追加エレメントを発注できます。
- 他に検討すべきフィン・ユールの収納家具はありますか?
- フィン・ユールは本パネルシステムのほかにも、France & Son社のためにデザインしたCrescoシェルフシステム(1960年代)などの壁面収納を手がけています。また、Baker社のためにデザインしたキャビネットシリーズも高い評価を受けています。フィン・ユールの椅子やソファとの統合的なコーディネートについては、収納家具カテゴリページおよびフィン・ユール プロフィールページをご覧ください。