LC20 カジエ・スタンダールが長く愛される理由——100年前に描かれた規格化収納
1925年、ル・コルビュジエとピエール・ジャンヌレは、パリ万博「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」のために設計した「エスプリ・ヌーヴォー館」において、従来の家具概念を根底から覆す収納ユニットを発表した。フランス語で「標準収納棚」を意味する「Casiers Standard(カジエ・スタンダール)」——規格化されたモジュールの組み合わせにより多様な空間ニーズに対応するこのシステムは、「住宅は住むための機械である」という建築理念を、家具の形式に置き換えた作品であった。
アール・デコ全盛の時代に装飾を排した純粋な形態と合理的構成を提示し、当時の保守的な美術界に物議を醸した本作は、後世においてモダニズム・デザインの画期的転換点として再評価されている。カッシーナは1978年からこの収納をコレクションに加え、2016年に仕上げと構成を更新した。18の固定構成、2タイプの脚部から選ぶ現行モデルは、規格化された箱を組み合わせるという発想が現在の住まいでも成立することを示している。本ページでは、正規品の仕様、構成の選び方、類似製品との比較、購入先を整理する。
ル・コルビュジエの設計思想や経歴について詳しくはル・コルビュジエ プロフィールページをご覧ください。
LC20 カジエ・スタンダールのデザインストーリーについて詳しくはLC20 カジエ・スタンダール紹介ページをご覧ください。
正規品の基本情報:仕様・サイズ・素材
LC20 カジエ・スタンダールは、カッシーナ社がル・コルビュジエ財団の正式なライセンスのもとで製造する現行生産品である。1925年のオリジナル設計を基礎に、1984年にシャルロット・ペリアンが再検討を加えた。カッシーナは1978年からコレクションに加え、2016年に仕上げと構成を更新している。
| 正式名称 | LC20 Casiers Standard(カジエ・スタンダール) |
|---|---|
| デザイナー | ル・コルビュジエ(Le Corbusier, 1887–1965 / スイス・ラ・ショー=ド=フォン生まれ)、ピエール・ジャンヌレ(Pierre Jeanneret, 1896–1967)、シャルロット・ペリアン(Charlotte Perriand, 1903–1999 / 1984年に再検討) |
| オリジナルデザイン年 | 1925年(パリ万博 エスプリ・ヌーヴォー館のために設計) |
| 復刻年 | 2016年(カッシーナによる現代的アップデート版) |
| 製造ブランド | カッシーナ(Cassina S.p.A. / イタリア・メーダ) |
| コレクション | Le Corbusier®, Pierre Jeanneret®, Charlotte Perriand® コレクション(I Maestri) |
| 製造国 | イタリア |
| 生産状況 | 現行生産品。カッシーナ正規ディーラーにて受注可能 |
| 基本モジュール寸法 | W750mm × H750mm × D375mm(75 × 75 × 37.5 cm) |
| 構成タイプ | 18の固定構成。2モジュール版と3モジュール版から選択 |
| モジュールタイプ | オープンコンパートメント(棚のみ)、開き扉付き(2枚ヒンジドア)、フラップ扉付き(下開き扉)の3種 |
| 棚板 | 可動式。5段階の高さ調整が可能 |
| 脚部 | 2タイプから選択:① 4本のスリムなクロームメッキ・ピロティ(pilotis)、② 2本の塗装コロール(花冠形)ペデスタルベース |
| フレーム | 塗装スチール |
| 外装 | 塗装仕上げメタルフレーム+木製モジュール |
| 内装(オープン部) | オーク材 |
| 全体寸法 | 選択した構成により異なる。標準モジュールを2連または3連で構成する |
| 仕上げバリエーション | 固定されたカラーコンビネーションから選択(メタルフレームの塗装色と木部のステイン色の組み合わせ) |
| 参考価格帯(税込目安) | 構成・仕上げにより異なる。正規ディーラーへの見積り依頼を推奨 |
構成の選び方
LC20は18の固定構成から選択するシステムである。構成を決定する主な要素は以下の3軸であり、これらの組み合わせにより最適な一台を選ぶ。
- モジュール数:2モジュール or 3モジュール
- 2モジュール版(幅150cm)はコンパクトで、書斎やベッドルームのサイドボードとして適する。3モジュール版(幅225cm)はリビングやダイニングの壁面収納として存在感を発揮する。
- コンパートメントタイプ:オープン / 開き扉 / フラップ扉
- オープンコンパートメントは書籍やオブジェのディスプレイに、開き扉付きは隠す収納に、フラップ扉付きはデスク的な使い方にも適する。複数タイプの組み合わせ(例:オープン+扉+オープン)により、見せると隠すを両立できる。
- 脚部タイプ:ピロティ or コロール
- 4本のクロームメッキ・ピロティは、ル・コルビュジエの建築に見られるピロティ(柱脚)を直接的に引用した意匠であり、軽快で建築的な印象を与える。2本の花冠形コロールペデスタルベースは、より彫刻的で重厚な表情を持つ。
類似商品・競合との比較
LC20にリプロダクト品は存在しない。ル・コルビュジエ財団公認のカッシーナ正規品のみが唯一の選択肢である。同じカッシーナ I Maestriコレクションおよび同時代のモダニズム収納家具との比較を整理する。
| 比較項目 | LC20 カジエ・スタンダール(ル・コルビュジエ / カッシーナ) | 526 Nuage(シャルロット・ペリアン / カッシーナ) | USMハラー |
|---|---|---|---|
| デザイン年 | 1925年(2016年復刻) | 1950年代(カッシーナが復刻生産) | 1963年 |
| 設計思想 | 「住むための機械」。装飾を排し、エキップマン(装備)として収納を捉える | 非対称のユニット構成。壁面マウントによる浮遊感 | 建築家フリッツ・ハラーによる空間構築。スチールの精密性と無限拡張 |
| 素材 | 塗装スチールフレーム+オーク材。クロームメッキ脚部 | アルミニウム+オーク材。壁面マウント | クロームメッキスチールパイプ+スチールパネル |
| モジュラー性 | 18の固定構成から選択。標準モジュール75×75×37.5cm | コンポーネント自由組合せ。棚板・扉・引出し | ボール&コネクターによる無限組合せ |
| 設置方式 | 自立式(脚部付き) | 壁面マウント(メタルブラケット) | 自立式 |
| サイズ(参考) | 標準モジュール75 × 75 × 37.5 cm。構成により可変 | 構成により可変 | 構成により可変 |
| 参考価格帯 | 構成・仕上げにより変動(要見積り) | 構成により変動(要見積り) | 構成により変動(要見積り) |
選び方の指針
- ル・コルビュジエの建築思想を空間に直接取り入れたいなら
- LC20カジエ・スタンダールが最も直接的な選択肢である。ピロティ脚部はコルビュジエ建築の象徴であるピロティを家具スケールで再現したものであり、LC2/LC3ソファやLC4シェーズロングなど同コレクションの名作家具と組み合わせることで、「エスプリ・ヌーヴォー」の空間を現代の住居に再構築できる。標準モジュールに基づく構成は、装飾を持たない機能の形をそのまま示している。
- 壁面を活かした自由な収納を求めるなら
- 同じカッシーナI Maestriコレクションのシャルロット・ペリアン526 Nuageが適している。壁面マウント方式による浮遊感と、棚板・扉・引出しの自由な組合せが、ペリアンならではの「自由な形」を空間にもたらす。コルビュジエの合理性とは異なるアプローチで、モダニズムの収納を体験できる。
- 完全にカスタマイズ可能なモジュラーシステムを求めるなら
- USMハラーが最も柔軟である。ボール&コネクターシステムによる3次元的な無限拡張と500以上のカラーバリエーションは、いかなる空間要件にも対応する。自立式でありながら間仕切りとしても機能し、パーツ追加による拡張も容易。
使用感と暮らしへの取り入れ方
収納力と使い勝手
基本モジュール(75 × 75 × 37.5cm)は、A4判の書類、書籍、食器、リネン類を収めるのにちょうどよい大きさである。棚板は5段階で高さを変えられる。奥行37.5cmは、壁に寄せたときの圧迫感を抑えつつ、必要な深さを確保する寸法といえる。
オープン、開き扉、フラップ扉の3タイプを組み合わせれば、見せる収納と隠す収納の比率を構成段階で決められる。
空間別のコーディネート提案
- リビングルーム——コルビュジエの空間を再現
- 3モジュール版(W225cm)をリビングの壁面に置き、LC2グラン・コンフォールとLC10-Pテーブルを合わせる。ピロティ脚部が床との間に隙間をつくり、家具が軽く見える。オープンの区画に書籍やオブジェを、扉付きの区画に日用品を収める。
- 書斎・ホームオフィス
- 2モジュール版をデスク脇のサイドボードとして使う。フラップ扉は開いたときに書類を一時的に置く面になる。LC7回転チェアやLC6テーブルと合わせやすい。
- ダイニング——サイドボードとして
- 3モジュール版の扉付き構成をダイニングのサイドボードとして使う。食器やテーブルリネンを収め、オープンの区画にワインや花器を置く。コロールペデスタルベースを選べば、脚部が視覚的なアクセントになる。
- パーティションとして
- エスプリ・ヌーヴォー館がそうであったように、LC20を部屋の間仕切りとして置く。3モジュール版を2台並べれば「家具化された壁面」となり、リビングとダイニング、あるいは居住空間と仕事場を分ける。オープンの区画は両面から使える。
経年変化とメンテナンス
素材の特性と経年変化
- オーク材(外装・内装)
- ステイン仕上げの木部は、経年で僅かに色味が深まる。直射日光による褪色を避けるため、窓際に置く場合は紫外線対策を考えたい。
- 塗装スチールフレーム
- ラッカー塗装のスチールフレームは耐久性が高い。ただし衝撃による塗装の欠けには注意したい。
- クロームメッキ脚部(ピロティタイプ)
- クロームメッキは腐食に強い。湿度の高い環境では曇りが出ることがあるが、クロームクリーナーで戻せる。
- 塗装ペデスタルベース(コロールタイプ)
- 手入れはスチールフレームと同じでよい。床との接点にはフェルトパッドを挟みたい。
メンテナンスの方法
- オーク材部分
- 柔らかい布での乾拭きが基本。汚れが気になる場合は硬く絞った布で水拭きし、速やかに乾拭きする。カッシーナ社が提供するケア&メンテナンスマニュアルに記載の木部専用クリーナーの使用を推奨する。
- 塗装スチール部分
- 柔らかい布での乾拭き。中性洗剤を薄めた液での清拭も可能だが、研磨剤や溶剤の使用は塗装を損なうため厳禁。
- クロームメッキ部分
- 柔らかい布での乾拭き。指紋や水滴跡が気になる場合はクローム専用クリーナーを使用する。研磨剤の使用は避ける。
- 扉・蝶番・棚板
- 扉の開閉がスムーズであることを定期的に確認し、蝶番部分に異常がないかチェックする。棚板の高さ変更時は、荷重を降ろしてから調整する。
どこで買うか:正規販売店と購入方法
LC20カジエ・スタンダールは、カッシーナの現行生産品として世界各地の正規ディーラーを通じて購入可能である。ル・コルビュジエ財団公認の正規品であり、カッシーナ以外からの製造は行われていない。
正規販売ルート
- カッシーナ公式サイト(cassina.com)
- 全18構成の仕様書(PDF)、2D/3Dデータ、技術シート、ケア&メンテナンスマニュアルを公開。最寄りのショールーム検索と見積り依頼が可能。
- カッシーナ直営ショールーム
- 東京(青山)をはじめ世界主要都市に展開。実物確認と専門スタッフによるコンサルテーションが可能。日本国内ではカッシーナ・イクスシー(Cassina ixc.)が正規販売を行う。
- カッシーナ正規ディーラー
- twentytwentyone(ロンドン)、Ciat Design(アメリカ)、Mohd(イタリア)、Deplain(イタリア)、Allmyhome(イタリア)等。構成・仕上げ・価格については各ディーラーに見積りを依頼する。
- 1stDibs
- カッシーナ正規品のLC20が出品される場合がある。サイズ・カラー・素材により価格が変動。真贋保証プログラム対応。
購入時チェックリスト
- カッシーナ正規品であることの確認(ル・コルビュジエ財団公認、I Maestriコレクション、シリアルナンバー)
- 構成の確認(18構成のうちどれか。モジュール数、コンパートメントタイプ、脚部タイプ)
- 仕上げの確認(固定カラーコンビネーションから選択)
- 設置場所の寸法確認(標準モジュール75 × 75 × 37.5cm。選択した構成の実寸をカッシーナの技術シートで確認)
- 床面の状態確認(水平な設置面、フローリングの場合はフェルトパッド検討)
- 搬入経路の確認(3モジュール版は幅225cmの大型家具。エレベーター・階段・ドア幅確認)
- 保証内容の確認(カッシーナ正規品の保証期間と対象範囲)
- ケア&メンテナンスマニュアルの入手
コーディネート事例
エスプリ・ヌーヴォー——コルビュジエの理想空間
グレーラッカー仕上げのLC20(3モジュール、ピロティ脚部)を白壁のリビングに配し、LC2グラン・コンフォールのブラックレザーアームチェア、LC10-Pテーブル、LC4シェーズロングを組み合わせるスタイル。1925年のエスプリ・ヌーヴォー館が示した、装飾を持たない形と構成を、そのまま現代の住居に置き換える構成である。ピュリスム絵画やレジェの版画を壁面に掛ければ、1925年当時の室内により近づく。
フレンチ・モダニズムの系譜
LC20をジャン・プルーヴェのスタンダードチェアやシテ・アームチェア、ペリアンの526 Nuageシェルフと組み合わせるスタイル。コルビュジエ、ジャンヌレ、ペリアン、プルーヴェが共有した、合理的な構造をそのまま形にする姿勢が一つの空間に集まる。木部の温かみが各作品を繋ぎ、スチールとアルミニウムの精度が全体を引き締める。
コンテンポラリー・ミニマルスタイル
暗色の仕上げでコロールペデスタルベースを選んだ2モジュール版を、現代的なインテリアに置く。カッシーナのパトリシア・ウルキオラやブルレック兄弟による現行コレクションとも並べやすい。
よくある質問
- LC20 カジエ・スタンダールの価格はどのくらいですか?
- カッシーナ正規品の価格は、選択する構成(18種)と仕上げにより大きく異なります。公表された定価はなく、カッシーナ直営ショールームまたは正規ディーラーへの見積り依頼が確実です。
- どこで購入できますか?
- カッシーナの現行生産品として、世界各地のカッシーナ直営ショールームおよび正規ディーラーで購入可能です。日本国内ではカッシーナ・イクスシー(Cassina ixc.)が正規販売を行い、東京・青山のショールームで実物をご確認いただけます。
- 実物を確認できる場所はありますか?
- カッシーナ直営ショールーム(東京・青山、ミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドン等)で実物の確認が可能です。展示構成は時期により異なるため、事前にショールームへお問い合わせください。
- 18構成の中からどれを選べばよいですか?
- 選択の主な軸は3つです。①モジュール数(2モジュール / 3モジュール=サイズ)、②コンパートメントタイプ(オープン / 開き扉 / フラップ扉=収納スタイル)、③脚部タイプ(ピロティ / コロール=デザインの方向性)。用途と設置空間に応じてカッシーナのショールームスタッフにご相談いただくことで、最適な構成をご提案いただけます。
- リプロダクトはありますか?
- LC20のリプロダクト品は存在しません。ル・コルビュジエ財団公認のカッシーナI Maestriコレクションの正規品のみが唯一の選択肢です。正規品には財団公認のライセンスマーク、カッシーナのシリアルナンバーが付属します。
- メンテナンスは難しいですか?
- 日常メンテナンスは柔らかい布での乾拭きが基本です。オーク材、塗装スチール、クロームメッキの各素材に応じたケアを行うことで、長期にわたり美観を維持できます。カッシーナ社が提供するケア&メンテナンスマニュアルに素材別の手入れ方法が詳しく記載されています。
- オリジナル(1925年版)のヴィンテージは入手できますか?
- 1925年のエスプリ・ヌーヴォー館のオリジナル家具は美術館の収蔵品であり、一般市場には流通していません。カッシーナによる2016年復刻版が、オリジナルの設計思想を忠実に再現した正規の入手方法です。
- 他に検討すべきモダニズムの収納家具はありますか?
- 同じカッシーナI Maestriコレクションでは、シャルロット・ペリアンの526 Nuage(壁面マウント式シェルフ)、フランコ・アルビーニの835 Infinito(モジュラーブックシェルフ)および838 Veliero(テンション構造ブックケース)が候補となります。異なるアプローチとしてはUSMハラー(スチール自立式モジュラー)やヴィトソエ606(壁面マウント式)も検討に値します。詳しくは収納家具カテゴリページをご覧ください。