概要
バレルチェアは、フランク・ロイド・ライトが1904年に設計したアームチェアである。ダーウィン・D・マーティン邸のために設計された。円筒形の背もたれを角材のスピンドルで支え、円形の座面を組み合わせる。
1937年には、別の邸宅のために寸法を大きくした仕様が設計された。ライトは自邸タリアセンでもこの椅子を用いており、その名でも呼ばれる。
特徴とコンセプト
背もたれは円筒を上へ開いた形をとる。板で囲えば面が閉じるが、角材のスピンドルを並べれば隙間から向こう側が見える。座面は円形で、両面にクッションを持つ。背が円周に沿って回り込むため、正面が定まらない。
ライトはそれまで直線で構成する家具を手がけていた。円筒形の採用は、直線の建築に対して曲面の要素を室内へ持ち込む扱いにあたる。
1986年にカッシーナが復刻した仕様は37の部品からなる。無垢材を蒸して曲げると、乾燥の過程で戻ろうとする力が残る。曲げた材を二つに切断し、背中合わせに接着すれば、互いの力が打ち消し合って形が保たれる。
デザインの進化と歴史的背景
バレルチェアの誕生は、ライトの建築哲学における重要な転換点を示している。1902年のウォード・ウィリッツ邸のための高い背もたれのダイニングチェアや、オークパークの自身のスタジオのための鋭角的な幾何学形態を特徴とする初期作品から、1903年から1905年にかけてのマーティン邸の設計において、ライトはプレイリースタイルの直線的美学に曲線を導入し始めた。この有機的形態への探求が結実したのが、1904年のバレルチェアである。
1937年版のウィングスプレッド仕様は、オリジナルデザインをより洗練させ、ミルウォーキーのギレン・ウッドワーク・コーポレーションによって製作された。この改良版は、サイズを調整し構造的な洗練を加えることで、邸宅の広大な居室空間に相応しい威厳と存在感を獲得した。ライトは生涯を通じてバレルチェアのデザインを何度も改訂し、それぞれの建築プロジェクトの文脈に応じて調和する形を追求し続けた。
評価と影響
正面を持たない円形の座具という点では、背もたれのないメリベルスツールも同じ性質を持つ。バレルチェアは背を円周に沿わせることで、囲いを設けながら向きを固定しない構成をとる。
1986年以降、カッシーナが正規のライセンス品として製造している。マーティン邸では、オリジナルに基づいて復元されたバレルチェアが館内に配置されている。バレルチェアの美術館収蔵は、公開情報の範囲では確認できていない。
フランク・ロイド・ライトの設計思想や経歴について詳しくはフランク・ロイド・ライトプロフィールページをご覧ください。
カッシーナの歴史や他の製品について詳しくはカッシーナブランドページをご覧ください。
基本情報
| デザイナー | フランク・ロイド・ライト |
|---|---|
| デザイン年 | 1904年(初期版)、1937年(改良版) |
| ブランド | カッシーナ(復刻版) |
| モデル番号 | 606 |
| 素材 | アメリカンチェリー無垢材 |
| 張地 | レザーまたはファブリック |
| サイズ(カッシーナ版) | 幅54.5cm×奥行52cm×高さ80.5cm、座面高48cm |
| 製造開始(復刻版) | 1986年 |