概要

ファセテッド・フロント・キャビネットは、ポール・エヴァンスが1970年代前半に手がけた収納家具である。シティスケープII(PE300シリーズ)に属する。前面をクロムめっきスチールの多面体で構成し、木の突板と組み合わせる。ディレクショナル向けに製作された。

特徴・コンセプト

面を折って光を分ける

前面は平らな一枚ではなく、角度の異なる面を組み合わせて構成される。鏡面のクロムめっきを平面で使うと、周囲がそのまま映り込む。面を細かく分けて角度をばらけさせると、映り込む対象が分散し、面ごとに明るさが変わる。

結果として、正面から見ても位置によって陰影が生じる。光源や見る角度が変われば、明るい面と暗い面の配置も変わる。

金属と木を混ぜる

クロムめっきスチールの板と木の突板を不規則に組み合わせる。反射する面と反射しない面が隣り合うため、両者の差が際立つ。バール材の突板を含む仕様もある。

型で成形して金属で覆う

前面の部材は、ガラス繊維の型に高密度の発泡材を詰めて成形し、その表面をクロムめっきスチールや木で覆う。部材は組み立て前に仮組みして位置を合わせ、一つずつめっきを施したのち、元の配置どおりに組み直す。工房での手作業を前提とした構成にあたる。

エピソード

シティスケープは、エヴァンスが1971年から1981年にかけて展開した一連の製品である。マンハッタンの高層建築の輪郭から着想し、矩形を積み重ねる構成をとった。前半のシティスケープが平坦な面を主としたのに対し、シティスケープIIでは面を折って立体感を出す方向へ進んでいる。

評価と影響

金属の表面処理で表情をつくるという方法は、エヴァンスが金属工芸家として制作していた時期から続く。サンバースト・ウォール・スカルプチャーでは酸化被膜と金箔を用い、シティスケープ・クレデンザでは平坦な面の分割で構成した。本作はその延長で、鏡面の反射を扱っている。

ディレクショナルは現存せず、参考にできる一次資料が限られる。寸法や仕様はモデルごとに異なる。

基本情報

名称 ファセテッド・フロント・キャビネット / Faceted Front Cabinet
デザイナー ポール・エヴァンス(Paul Evans)
ブランド ディレクショナル(Directional)
制作年 1970年代前半
分類 収納家具(キャビネット)
シリーズ シティスケープII(PE300シリーズ)
主要素材 クロムめっきスチール、木の突板(バール材を含む)、ガラス繊維強化樹脂
構造 角度の異なる面を組み合わせた前面。発泡材を詰めた型の部材を金属または木で覆う。扉は折れ戸
寸法 モデルにより異なる

Reference