Directional(ディレクショナル)
Directionalは、1949年にニューヨークで設立された米国の家具ブランドである。設計者のPaul McCobbと家具販売業のB. G. Mesbergが組んで始めたもので、自社工場を持たず、設計を外部の製造業者に委ねて生産する方式を採った。1960年代前半にMcCobbの製品が終了したのち、1964年からPaul Evansを中心とする金属加工の家具へ性格を変えた。現在は米国ノースカロライナ州のTomlinson Companiesの一部門として存続している。
事業と製造の実体
Directionalは設立当初から自社工場を持たず、製品ごとに外部の製造業者へ生産を委託する方式を採った。McCobbの時代には、Furnwood、H. Sacks and Sons、Calvin Furnitureといった複数の企業が同じブランド名のもとで製品を作っている。設計と流通を担い、製造を外に置くこの構成は、一つのブランドに性格の異なる製品が併存する状態を生んだ。
1964年以降のPaul Evansの製品は、この方式のなかで例外的な位置にある。Evansはニュージャージー州ランバートヴィルに自身の工房を構え、金属の加工と仕上げを自ら監督した。銅、青銅、ピューター、クロム、アルミニウムといった金属を溶接し、表面を焼き付けや研磨で処理する工程は、家具工場の設備ではなく金工の技法に近い。同じ型を用いても表面の表情が個体ごとに異なるため、量産品と一点物の中間にあたる製品群となった。
販売は室内設計者や装飾業者を対象とする流通経路を主軸とし、一般消費者への直接販売を主としない構成が採られた。
沿革
Paul McCobbの時代
1949年、マサチューセッツ出身の設計者Paul McCobbと、ニューヨークの家具販売業B. G. Mesbergが Directional Furniture Companyを設立した。最初の製品は、Martin Feinmanが設計した組み合わせ収納Multiplexに合わせる張り地の椅子だった。McCobbはその後、収納、食卓、座具、机など幅広い品目を設計し、革張りの天板やトラバーチンの天板といった素材を用いている。
Directionalの名称は複数の製造業者による製品群を束ねるもので、傘下には数百点の設計が含まれた。McCobbの設計による製品の生産は、1960年から1962年ごろに終了している。
Paul Evansの時代
1964年、彫刻と家具の双方を手がけていたPaul Evansが Directionalの中心的な設計者として参加した。クランブルック美術アカデミーで銀細工を学んだEvansは、金属を主材とする家具を展開する。
Evansが Directionalのために手がけた製品群には、パッチワーク・コッパー、ピューター・アンド・ブラス(1960年代半ば)、スカルプテッド・ブロンズ(1960年代半ば以降)、アルジェンテ(1968年以降)、スカルプテッド・アンド・ペインテッド・スチール、そしてシティスケープ(1970年代)がある。シティスケープは真鍮とクロムの板を継ぎ合わせて塊状の形を作る構成で、1970年代後半の室内において広く用いられた。1987年3月、Evansは事業を閉じ、同月に死去している。
Tomlinson Companiesへの統合
Directionalは、ノースカロライナ州の家具企業Tomlinson/Erwin-Lambethに取得され、同社の一部門となった。同社は1898年にJames Erwin Lambeth Sr.が設立したStandard Chair Companyを起点とし、1946年創業のErwin-Lambeth、1987年に取得されたTomlinson Furniture Companyを含む複数の系統からなる。
現在、DirectionalはTomlinson Companiesの4部門(Tomlinson、Erwin-Lambeth、Directional、Carter)の一つとして、ノースカロライナ州トマスヴィルの工場で受注生産の家具を製造している。
デザイナーとの協働
Directionalの製品開発は、設計者との契約と外部の製造業者の組み合わせによって進む方式を採ってきた。設計と流通を自社が担い、製造を外に置く構成のため、起用する設計者が変われば製品群の性格も大きく変わる。McCobbの時代とEvansの時代で製品の様相が異なるのは、この構造に由来する。
主な協働相手は、設立者でもあるPaul McCobb(1949年〜1960年代初頭)、Paul Evans(1964年〜1987年)、および1960年代から関わったVladimir Kaganである。Milo Baughmanもこのブランドの製品を手がけた。
Paul McCobbの設計思想や経歴について詳しくはPaul McCobbプロフィールページをご覧ください。
Paul Evansの設計思想や経歴について詳しくはPaul Evansプロフィールページをご覧ください。
Vladimir Kaganの設計思想や経歴について詳しくはVladimir Kaganプロフィールページをご覧ください。
主な製品群
現在まで参照されるのは、Paul Evansによる金属加工の製品群である。シティスケープの系統にはシティスケープ・クレデンザとシティスケープ・ウォールスカルプチャー(パッチワークメタル)があり、真鍮とクロムの板を継ぎ合わせた表面を持つ。
アルジェンテの系統では、アルミニウムを溶接して表面を削り出すアルジャント・キューブテーブルがある。溶接した鋼を用いる系統にはPE-128 スタラグマイト・コーヒーテーブル(円形ガラス天板)とスタラグマイト・ベース・ダイニングテーブル(溶接鋼鉄ベース)、収納ではファセテッド・フロント・キャビネット(シティスケープIIシリーズ)とスカルプテッド・ブロンズ・フロント・キャビネットがある。
基本情報
| ブランド名 | Directional(ディレクショナル) |
|---|---|
| 設立 | 1949年 |
| 設立者 | Paul McCobb、B. G. Mesberg |
| 設立地 | アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市 |
| 現在の所属 | Tomlinson Companiesの一部門(ノースカロライナ州トマスヴィル) |
| 事業内容 | 家具の企画および販売(生産は委託・受注生産) |
| 公式サイト | https://www.tomlinsoncompanies.com |
Reference
- Tomlinson Companies - Our Story
- https://www.tomlinsoncompanies.com/our-story/
- 1stDibs - Directional Seating(ブランド沿革)
- https://www.1stdibs.com/creators/directional/furniture/seating/
- Paul McCobb - Directional catalogs and brochures
- http://paulmccobb.blogspot.com/p/directional-catalogs-and-brochures.html