概要

ポール・ヴォルター(1923-2001)は、デンマークの家具デザイナーである。1950年から1956年までFDBモブラーの設計室を率い、生活協同組合を通じて安価な家具を供給した。1961年のコロナチェアは、鋼の帯に4枚の楕円形のクッションを取り付けた椅子で、エリック・ヨルゲンセンが生産している。

バイオグラフィー

1923年1月2日、デンマークのランゲオーに生まれた。家具職人としての訓練を受けたのち、デンマーク王立芸術アカデミーで学んでいる。

1949年からFDBモブラーに加わり、1950年から1956年まで設計室の責任者を務めた。FDBはデンマークの生活協同組合連合会で、組合員向けに安価な家具を供給する事業を行っていた。

1956年に独立し、自身の設計事務所を開いた。以後、エリック・ヨルゲンセンなどのために家具を設計している。

1961年にコロナチェアを発表した。1968年から生産が始まり、現在も続いている。2001年に没した。

デザインの思想と方法

ヴォルターの仕事は、二つの異なる条件のもとで行われた。FDBでは価格を最優先とする家具を、独立後は形式そのものを問い直す家具を設計している。前者では部材と工程を減らし、後者では既存の椅子の構成から離れた。

価格から部材を決める

FDBでの設計では、木の丸棒と平板だけで椅子を構成することが多い。曲げも複雑な仕口も避け、加工の工程を短くする。組合の販売網を通じて安価に供給するという条件が、この構成を規定している。

座面と背を分割する

コロナチェアは、座面と背もたれを一続きの面とせず、4枚の楕円形に分ける。分割することで一枚あたりの面積が小さくなり、成形が容易になる。同時に、面と面のあいだに隙間が生まれ、背後が透ける。

鋼の帯で支持する

4枚のクッションは、S字を描く鋼の帯に取り付けられる。帯は座面から背へ回り込み、途中の隙間では構造だけが見える。支持部と身体が触れる部分を完全に分離した構成にあたる。

回転する脚部

脚部は十字形で、座面が回転する。位置を変えずに向きだけを変えられるため、共用の空間に置きやすい。

代表作にみる方法

J46 チェア(1956年)

FDBモブラーのために設計した椅子である。木の丸棒と平板で構成され、曲げも複雑な仕口も持たない。組合の販売網を通じて長期にわたり供給され、多数が生産された。価格から部材を決めるという方向が最も明確に現れている。

コロナチェア(1961年)

S字を描く鋼の帯に、4枚の楕円形のクッションを取り付けた椅子である。座面と背を分割することで一枚あたりの成形が容易になり、同時に隙間から背後が透ける。脚部は十字形で回転する。1968年から生産が始まり、エリック・ヨルゲンセンが続けている。→コロナチェア

FDBモブラーのための家具(1949-1956年)

椅子、卓、収納を設計した。いずれも部材の種類を減らし、加工の工程を短くする構成をとる。生活協同組合を通じて供給されるため、価格が最優先の条件だった。

独立後の家具(1956年〜)

エリック・ヨルゲンセンなどのために設計を続けた。FDB時代の価格の制約から離れ、構成の側を試す仕事が増えている。

評価と影響

ヴォルターは一般に、デンマークの家具設計において、価格を条件とする仕事と形式を問う仕事の両方を行った設計者と評価されている。FDBモブラーでの設計は、ボーエ・モーエンセンが同じ組織で行った仕事の後を継ぐものにあたる。

コロナチェアは、座面と背を分割するという構成で知られる。一続きの面で身体を受ける通常の椅子とは異なり、隙間が構成の一部になっている。

J46は生活協同組合の販売網を通じて長期にわたり供給された。設計者の名が意識されずに使われる家具という位置づけにあたる。

収蔵

4館のAPI(MoMA、V&A、Met、AIC)で照合したが、該当する収蔵は確認できなかった。デンマーク国内の館については照合手段がない。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1956年 椅子 J46 チェア FDB Møbler
1961年 椅子 コロナチェア Erik Jørgensen
1949-1956年 家具 FDBモブラーのための椅子・卓・収納 FDB Møbler
1956年〜 家具 エリック・ヨルゲンセンほかのための家具 Erik Jørgensen

プロフィール

生没年 1923年1月2日〜2001年
出身地 デンマーク・ランゲオー
国籍 デンマーク
活動拠点 コペンハーゲン
分野 家具
主な協働ブランド Erik Jørgensen、FDB Møbler

Reference