概要
ヨーン・ウッツォン(1918-2008)は、デンマークの建築家である。1957年の国際競技設計でシドニー・オペラハウスの設計者に選ばれ、屋根の殻を球面から切り出すという解法で施工を成立させた。造船技師の父のもとで育ち、船体の造形に親しんでいる。家具と照明の設計も残しており、ペンダントのJU1が知られる。2003年にプリツカー賞を受けた。
バイオグラフィー
1918年4月9日、コペンハーゲンに生まれた。父は造船技師で、幼少期を港町オールボーで過ごしている。1937年から1942年までデンマーク王立芸術アカデミーで建築を学んだ。
1942年から1945年までスウェーデンに滞在し、1946年にはフィンランドでアルヴァ・アアルトの事務所に短期間勤めた。以後、モロッコ、メキシコ、アメリカ、中国、日本を訪れている。
1957年、シドニー・オペラハウスの国際競技設計に当選した。1966年、施工と予算をめぐる対立から設計者を降り、オーストラリアを離れている。
1970年代以降はデンマークとスペイン・マヨルカ島で活動した。1998年にオペラハウスの運営側と和解し、以後の改修の指針を示している。2003年にプリツカー賞を受け、2008年11月29日に没した。
デザインの思想と方法
ウッツォンの設計は、形を先に描いたうえで、それを施工可能な幾何学に置き換えるという順序をとる。オペラハウスの屋根はこの過程が最も明確に現れた例で、当初の自由曲面のままでは施工できなかった。
自由曲面を一つの球面から切り出す
競技案の屋根は自由な曲面で、そのままでは型枠を一つずつ作ることになり、実現できない。ウッツォンは、すべての殻を同じ半径の球面から切り取った面として定義し直した。曲率が共通になるため、型枠を繰り返し使え、部材も規格化できる。形を変えずに施工の条件を満たすという解法にあたる。
基壇と上部を分ける
建物を、水平に広がる基壇と、その上に載る屋根という二つの要素に分ける。基壇は地形の延長として扱い、屋根は独立した形として置く。マヤやイスラムの建築で見た構成を、この分割の根拠として説明している。
規格化した部材を組み合わせる
1960年代の住宅群では、標準化した部材を組み合わせて多様な平面をつくる方式を試みた。工場で作る部材の種類を限りながら、敷地ごとに構成を変えられる。オペラハウスの屋根と同じく、繰り返し可能な単位から全体をつくる考え方にあたる。
船の造形を参照する
造船技師の父のもとで育ち、船体の形に親しんだ経緯を自ら述べている。曲面をどう定義し、どう分割して作るかという問題は、造船で日常的に扱われるものである。
代表作にみる方法
シドニー・オペラハウス(1957-1973年)
1957年の国際競技設計に当選した。屋根の殻は、当初の自由曲面から、同じ半径の球面を切り取った面へ定義し直された。曲率が共通になることで型枠が繰り返し使え、施工が成立している。ウッツォンは1966年に設計者を降り、内部は別の設計者が担当した。2007年にユネスコ世界文化遺産に登録されている。
バウスヴェア教会(1976年、コペンハーゲン)
白い外壁と、内部の折れ曲がった天井で構成された教会である。天井は打放しのコンクリートで、雲を思わせる形をとる。外形は単純な箱に近く、内部の空間だけが複雑という構成にあたる。
キンゴー住宅群(1958-1960年、ヘルシンオア)
63戸のL字形の住宅を、それぞれ中庭を持つ形で配した集合住宅である。同じ平面型を敷地の地形に合わせて配置し、各戸に囲われた外部空間を確保している。規格化した単位から多様な配置をつくる方式の例にあたる。
カン・リス(1972年、マヨルカ島)
自邸として設計した住宅である。地元の石を用い、複数の棟に分けて配置する。既存の地形と樹木を残し、建物をその間に置く構成をとった。
JU1 ペンダント(1947年)
金属の板を組み合わせた吊り照明である。板が重なることで光源が直接見えず、隙間から光が漏れる。曲面を分割して組み立てるという建築での方法が、照明の寸法でも用いられている。&トラディションが再生産している。→ウッツォン ペンダント JU1
評価と影響
ウッツォンは一般に、20世紀後半の建築を代表する設計者の一人と評価されている。シドニー・オペラハウスの屋根を球面から切り出すという解法は、複雑な曲面を施工可能な形に置き換えた例として繰り返し言及される。
1966年に設計者を降りた経緯は、建築の実現をめぐる設計者と発注者の関係の例としても論じられる。1998年に運営側と和解し、以後の改修の指針を示した。
2003年にプリツカー賞を受け、2007年にはオペラハウスがユネスコ世界文化遺産に登録された。設計者の存命中に登録された例としては数が少ない。
受賞・収蔵
受賞
- 1978年 RIBA ロイヤル・ゴールドメダル
- 2003年 プリツカー建築賞
- 2007年 シドニー・オペラハウスがユネスコ世界文化遺産に登録
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。
- MoMA シドニー・オペラハウスの資料(1961年頃) 収蔵番号 1265.1964
- V&A 資料(1967年) 収蔵番号 CIRC.333:1-1970
Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。
作品一覧
| 年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1947年 | 照明 | ウッツォン ペンダント JU1 | &Tradition |
| 1958-1960年 | 集合住宅 | キンゴー住宅群 | ヘルシンオア、デンマーク |
| 1957-1973年 | 建築 | シドニー・オペラハウス | シドニー、オーストラリア |
| 1963年 | 集合住宅 | フレーデンスボー住宅群 | フレーデンスボー、デンマーク |
| 1972年 | 住宅 | カン・リス(自邸) | マヨルカ島、スペイン |
| 1976年 | 宗教建築 | バウスヴェア教会 | コペンハーゲン、デンマーク |
| 1982年 | 建築 | クウェート国民議会議事堂 | クウェート市、クウェート |
| 1994年 | 住宅 | カン・フェリス(自邸) | マヨルカ島、スペイン |
プロフィール
| 生没年 | 1918年4月9日〜2008年11月29日 |
|---|---|
| 出身地 | デンマーク・コペンハーゲン |
| 国籍 | デンマーク |
| 活動拠点 | コペンハーゲン、マヨルカ島 |
| 分野 | 建築、家具、照明 |
| 主な協働ブランド | &Tradition、Fritz Hansen |
Reference
- Jørn Utzon | The Pritzker Architecture Prize
- https://www.pritzkerprize.com/laureates/2003
- Sydney Opera House | UNESCO World Heritage Centre
- https://whc.unesco.org/en/list/166/
- Utzon Center, Aalborg
- https://utzoncenter.dk/en/
- Jørn Utzon | &Tradition
- https://www.andtradition.com/designers
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325