概要
ヘリット・リートフェルト(1888-1964)は、オランダの家具製作者・建築家である。家具工房で修業したのち、1917年にユトレヒトで独立した。部材を接合部で交差させ、それぞれの端を切り落とさずに突き出させる構成をとる。この方法では、どの部材がどこまで伸びているかが外から読み取れる。レッド・ブルー・チェア、ジグザグ・チェア、シュレーダー邸が代表にあたる。
バイオグラフィー
1888年6月24日、オランダのユトレヒトに家具製作者の子として生まれた。11歳で学校を離れ、父の工房で修業を始めている。夜間の学校で製図を学び、宝飾品の下絵も手がけた。
1917年、ユトレヒトに自身の家具工房を開く。同年、のちにレッド・ブルー・チェアとして知られる椅子の最初の形が作られた。当初は着色されておらず、木地のままだった。
1919年、テオ・ファン・ドゥースブルフが主宰する雑誌『デ・スティル』の同人に加わった。1918年から1931年まで、この運動と関わっている。
1924年、トゥルース・シュレーダー=シュレーダーの依頼でユトレヒトに住宅を設計した。最初の建築作品にあたる。1930年代は建築の依頼が減り、この時期にジグザグ・チェアとクレート家具が生まれている。1964年6月25日、76歳で没した。
デザインの思想と方法
家具の接合部は、通常は部材の端を突き合わせて隠す。リートフェルトはこれを逆にし、部材を交差させたまま端を突き出させた。この操作をとると、一本一本の材がどこから始まりどこで終わるかが外から見える。部材の独立性を保ったまま全体を組むという方針が、家具と建築の双方に通じている。
部材を突き合わせない
レッド・ブルー・チェアは、断面の等しい角材を交差させ、側面で留めて構成する。仕口を彫らないため、木工の技術としてはむしろ簡単になる。加工は容易だが、どの材も他の材に飲み込まれず、それぞれの長さと方向が保たれる。
色で面と線を分ける
着色は1923年以降で、当初の椅子は木地のままだった。骨組みを黒、端部を黄、座面と背を赤と青に塗り分けることで、線としての部材と面としての板が視覚的に区別される。色は装飾ではなく、構成の読み取りを助ける記号として使われている。
一枚の板から立体をつくる
1934年のジグザグ・チェアは、4枚の板をZ字に接合しただけで自立する。脚と座面という部位の区別がなく、折れ曲がった一続きの面が荷重を受ける。部材を交差させる方法とは逆に、部材の数を最小にする方向の解答にあたる。
安価な材料を規格のまま使う
1934年からのクレート家具は、輸送用の木箱に使う松の板をそのまま用いる。板の寸法は規格で決まっており、設計者はその割付だけを決める。購入者が自分で組み立てることも想定されていた。
カッシーナの歴史や他の製品について詳しくはカッシーナ ブランドページをご覧ください。
代表作にみる方法
レッド・ブルー・チェア(1918年)
断面の等しい角材15本と、板2枚で構成される椅子である。角材は交差する位置で側面から留められ、端は切り落とされずに突き出す。仕口を彫らないため加工は単純で、量産も想定されていた。着色は1923年以降で、当初は木地のままである。→レッド&ブルーチェア
ユトレヒト アームチェア(1935年)
アムステルダムの百貨店メッツ&コーのために設計した椅子である。厚みのある詰め物を布で覆い、縁を太い糸で綴じる。木の骨組みを見せる他の設計とは対照的に、体積のある塊として構成されている。→ユトレヒトアームチェア
ジグザグ・チェア(1934年)
4枚の板をZ字に接合しただけの椅子である。脚と座面の区別を持たず、折れ曲がった面が荷重を受ける。接合部には斜めの木栓と蟻継ぎが用いられ、曲げの力に耐える。部材の数を減らす方向の到達点にあたる。→ジグザグチェア
シュレーダー邸(1924年)
トゥルース・シュレーダー=シュレーダーの依頼でユトレヒトに設計した住宅である。壁と屋根の板を互いにずらして配置し、家具と同じく面の端を突き出させる。2階は可動の間仕切りを持ち、日中は一室、夜は複数の個室として使える。2000年にユネスコ世界文化遺産に登録された。
クレート家具(1934-35年)
輸送用木箱の規格材である松の板を用いた家具の系列である。ラウンジチェア、椅子、小型の書架などが作られた。材料の寸法が先に決まっているため、設計は板の割付と接合の位置に限られる。安価に供給することを条件とした構成にあたる。
評価と影響
リートフェルトは一般に、デ・スティルの理念を三次元の物として実現した設計者と評価されている。絵画の平面で行われていた面と線の分割を、家具と建築の構成として扱った点が挙げられる。
部材を交差させて端を突き出させるという構成は、以後の家具設計で繰り返し参照された。仕口を隠さないという処理は、加工の容易さと構成の可読性を同時に満たしている。
シュレーダー邸は2000年にユネスコ世界文化遺産に登録された。レッド・ブルー・チェア、ジグザグ・チェア、ユトレヒト アームチェアはカッシーナが生産を続けている。
収蔵
以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、Met=メトロポリタン美術館、AIC=シカゴ美術館)。
- MoMA レッド/ブルー・チェアの試作(1917-18年) 収蔵番号 462.1983
- MoMA サイドボード(1919年設計) 収蔵番号 259.1979
- MoMA 吊り照明(1920年設計) 収蔵番号 377.1982
- MoMA ベルリン・チェア(1923年設計) 収蔵番号 13.1980
- MoMA ミリタリー サイドチェア(1923年) 収蔵番号 158.1958
- MoMA ピアノスツール(1923年) 収蔵番号 404.1988
- MoMA サイドテーブル(1923年) 収蔵番号 370.1985
- MoMA 子供用手押し車(1923年) 収蔵番号 168.1993
- MoMA ボイゲル 子供用椅子(1927-30年) 収蔵番号 365.1993
- MoMA ジグザグ・チェア(1934年) 収蔵番号 349.1966
- MoMA シュレーダー邸の模型(1924年/模型1965年) 収蔵番号 361.1966
- V&A ボルダーワーゲン(1918年) 収蔵番号 CIRC.85-1975
- V&A レッド・ブルー・チェア(1918年) 収蔵番号 CIRC.367-1970
- V&A ジグザグ・チェア(1934年) 収蔵番号 CIRC.368-1970
- V&A クレート・チェア(1934年) 収蔵番号 W.30-1987
- V&A クレート家具の図面(1934-35年) 収蔵番号 E.1760-1991 ほか
- Met ジグザグ・チェア(1937-40年頃) 収蔵番号 2007.11
- Met サイドテーブル(1923年設計/1981年製作) 収蔵番号 2021.142
- AIC レッド・ブルー・チェア(1918年設計) 収蔵番号 1988.274
- AIC ジグザグ・チェア(1934年) 収蔵番号 2017.524
作品一覧
| 発表年 | 区分 | 作品名 | ブランド / 場所 |
|---|---|---|---|
| 1918年 | 椅子 | レッド&ブルーチェア | Cassina |
| 1919年 | 収納 | サイドボード | — |
| 1920年 | 照明 | 吊り照明 | — |
| 1923年 | 椅子 | ベルリン・チェア | — |
| 1923年 | 椅子 | ミリタリー・チェア | — |
| 1924年 | 建築 | シュレーダー邸 | ユトレヒト、オランダ |
| 1927年 | 椅子 | ボイゲル・チェア | — |
| 1934年 | 椅子 | ジグザグチェア | Cassina |
| 1934-35年 | 家具 | クレート家具 | Metz & Co. |
| 1935年 | 椅子 | ユトレヒトアームチェア | Cassina |
| 1963年 | 椅子 | ステルトマン・チェア | ハーグ、オランダ |
プロフィール
| 生没年 | 1888年6月24日〜1964年6月25日 |
|---|---|
| 出身地 | オランダ・ユトレヒト |
| 国籍 | オランダ |
| 活動拠点 | ユトレヒト |
| 分野 | 家具、建築 |
| 主な協働ブランド | Cassina、Metz & Co. |
Reference
- Rietveld Schröder House | Centraal Museum Utrecht
- https://www.centraalmuseum.nl/en/visit/locations/rietveld-schroder-house
- Rietveld Schröderhuis | UNESCO World Heritage Centre
- https://whc.unesco.org/en/list/965/
- Gerrit Thomas Rietveld | Cassina
- https://www.cassina.com/ww/en/maestri/gerrit-thomas-rietveld.html
- The Museum of Modern Art Collection
- https://www.moma.org/collection/works/2325
- Victoria and Albert Museum Collections
- https://collections.vam.ac.uk/