概要

ビルゲル・カイピアイネン(1915-1988)は、フィンランドの陶芸家・デザイナーである。1937年からアラビア製陶所の美術部門に所属し、半世紀にわたり制作を続けた。花や果実、真珠を重ねる装飾的な作風をとり、当時の北欧で主流だった装飾を排する方向とは異なる位置にある。1969年に発表した食器「パラティッシ」が広く知られる。

バイオグラフィー

1915年7月1日、フィンランドのポリに生まれた。幼少期に患った病により片脚が不自由となり、生涯にわたって影響が残った。

ヘルシンキの中央工芸学校で学び、1937年にアラビア製陶所の美術部門へ入った。同部門は、量産の食器とは別に、作家による制作を行う部署である。

1954年から1958年まではスウェーデンのロールストランドに在籍した。1958年にアラビアへ戻り、以後1988年に没するまで同所で制作を続けている。

1969年、絵付けによる食器「パラティッシ」を発表した。生産は一度終了したが、2005年から再生産されている。

デザインの思想と方法

1950年代から60年代の北欧では、装飾を排し形と素材で構成する方向が主流だった。カイピアイネンはこれと逆に、絵付けと装飾そのものを制作の中心に置いた。同じ製陶所のなかで、量産の食器とは別の位置にある。

絵付けを主題とする

パラティッシは、白い器に花と果実の絵を全面に施す。形は単純な円形と円筒で、変化はすべて絵付けの側にある。器の形を主題とする方向とは、設計の重心が逆になっている。

陶片を重ねる

制作の分野では、陶の小片や真珠状の粒を面に貼り重ねる方法を用いた。一枚の面を装飾するのではなく、装飾の単位を積み上げて立体をつくる。工程としては手数が多く、量産には向かない。

量産品と制作品を分ける

アラビアの美術部門では、量産の食器と作家の制作が同じ建物のなかで並行して行われた。カイピアイネンは主に後者に属し、パラティッシのような量産品はその例外にあたる。

色の重なりで奥行きをつくる

絵付けでは、複数の色を重ねて塗ることで奥行きを出す。単色の面を並べるのではなく、透過と重なりで濃淡を作る方法をとる。

代表作にみる方法

パラティッシ(1969年)

白い器に花と果実の絵を全面に施した食器の系列である。名称はフィンランド語で「楽園」を意味する。器の形は単純な円形と円筒で、変化は絵付けの側にある。黒と紫の2種の配色があり、2005年から再生産されている。→パラティッシ

陶片を重ねた制作(1950-70年代)

陶の小片や真珠状の粒を面に貼り重ねた作品群である。装飾の単位を積み上げて立体をつくる方法で、手数が多く量産には向かない。アラビアの美術部門での制作にあたる。

ロールストランド在籍時の制作(1954-1958年)

スウェーデンの製陶所に在籍した期間の作品である。フィンランドとは異なる工程と材料のもとで制作を行った。

V&A収蔵の作品(1960年頃)

V&Aは1960年頃の作品3点を収蔵している。うち2点はパラティッシの図柄によるものにあたる。

評価と影響

カイピアイネンは一般に、20世紀のフィンランドの陶芸を代表する制作者の一人と評価されている。装飾を排する方向が主流だった時期に、絵付けと装飾を制作の中心に置いた点が特徴として挙げられる。

アラビア製陶所の美術部門に半世紀にわたり所属した。同部門は量産の食器とは別に作家の制作を行う部署で、制作者が長期にわたって在籍できる体制にあった。

パラティッシは一度生産が止まったが、2005年から再生産されている。器の形ではなく絵付けが主題である製品として、現在も供給が続いている。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。

  • V&A 陶器(1960年頃) 収蔵番号 C.261-1987
  • V&A パラティッシ(1960年頃) 収蔵番号 C.50&A-1988
  • V&A パラティッシ(1960年頃) 収蔵番号 C.50B-1988

MoMA、Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。フィンランド国内の館については照合手段がない。

作品一覧

区分 作品名 ブランド
1937年〜 陶芸 アラビア美術部門での制作 Arabia
1954-1958年 陶芸 ロールストランドでの制作 Rörstrand
1960年頃 陶器 陶片と真珠を重ねた作品 Arabia
1969年 食器 パラティッシ Arabia / Iittala
1970-80年代 陶芸 アラビアでの制作 Arabia

プロフィール

生没年 1915年7月1日〜1988年
出身地 フィンランド・ポリ
国籍 フィンランド
活動拠点 ヘルシンキ
分野 陶芸、食器
主な協働ブランド Arabia、Iittala、Rörstrand

Reference

Iittala
https://www.iittala.com/
Arabia
https://www.arabia.fi/
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/
Designmuseo Helsinki
https://www.designmuseum.fi/en/