概要

イシマル(株式会社イシマル)は、東京・六本木に本社を置く建築・内装の施工会社である。M+(香港)の作家記録では1969年に設立されたとされ、代表取締役は石丸隆夫が務める。店舗や商業施設の内装工事を本業としながら、設計者の求める素材や加工を実現する製作の担い手として、とくに倉俣史朗のアクリル樹脂による家具の製作元として知られる。

自社で製品を企画して量産する家具メーカーではなく、設計者の図面と意図を受けて工事と製作を行う会社である。倉俣のミス・ブランチをはじめ、その製作物は国内外の美術館に収蔵されている。

事業と製造の実体

事業の中心は内装仕上工事である。建設業の登録上は建築一式工事と内装仕上工事を扱い、店舗の内装や什器、家具工事を請け負う。表参道のコム デ ギャルソンの店舗工事を手がけたことが、デザイン誌AXISの記事で挙げられている。

製作の性格を決めているのは、社内の設備よりも、素材ごとの専門職人との関係である。倉俣の妻である倉俣美恵子は、石丸がアクリル、金属、塗装といった分野で高度な技術をもつ職人のネットワークを持ち、それによって倉俣のデザインを実現してきたと述べている。2011年に21_21 DESIGN SIGHTで行われたトークでは、石丸自身が、素材の探索を設計者と互いに持ち寄って進める関係だったと語っている。

アクリルの仕事はこの体制の中心にある。アクリル樹脂を型に流し込んで固める工程で内部に物を封じるといった、量産品では成り立たない加工を一点ずつ実現してきた。ガラスについては三保谷硝子店、金属についてはそれぞれの専門工場と組み、施工会社としての調整能力で複数の職人の仕事を一つの製品にまとめる。

2000年代以降は社内に設計室を置き、素材の研究を自ら行っている。2010年に発表したカーボンファイバー製の椅子は、AXISの記事によれば他の構造材を用いずCFRPだけで構成したもので、発表と展示にはコクヨが協力している。

沿革

石丸隆夫と倉俣史朗の関係は、会社の設立より前にさかのぼる。2023年から2024年にかけて巡回した倉俣の回顧展の年譜は、1963年に竣工した銀座の三愛ドリームセンターの仕事で、倉俣が石丸と出会ったとしている。21_21 DESIGN SIGHTのトーク記録によれば、石丸は東京・竹橋のパレスサイドビルの看板を図面なしで製作したことを機に、以後、倉俣のプラスチックによる作品のすべてを担当したという。

会社としての設立は1969年である。以後、倉俣の店舗内装の施工と、アクリルを主とする家具・オブジェの製作を並行して担った。1988年のミス・ブランチでは、生花を樹脂に封じる実験が色と形の両面で失敗したのち、樹脂と相性のよい造花を探し、製作に至っている。

1991年に倉俣が没した後も、製作された個体がある。ブリュッセルのデザイン美術館が収蔵するミス・ブランチは、1998年の製作と記録されている。イシマル自身も倉俣の作品を所蔵しており、2023年から2024年の回顧展には《01チェアー》《01テーブル》《アクリルサイドテーブル #2》《カビネ・ド・キュリオジテ》を貸し出している。

2009年、建築家の鈴木清巳が設計室のチーフデザイナーに就き、2010年にカーボンファイバーの椅子を発表した。2016年には六本木のアクシスギャラリーで、この一連の家具を展示する「CARBONE LUMIÈRES」展を主催している。鈴木は2017年に独立した。

デザイナーとの協働

協働の相手は、製品ごとに公募や契約で選ばれるのではなく、施工の現場で長期にわたって続く関係から生まれている。倉俣との仕事は、店舗の内装工事を請け負う関係を土台に、そこで試した素材や加工を家具へ展開する形をとった。倉俣が没するまでのおよそ30年、プラスチックの作品はイシマルの手を経て形になっている。

倉俣の没後は、社内の設計室を通じて自社発の素材研究に取り組む方向へ移り、カーボンファイバーの家具はその成果として発表された。

主な製品群

製作物は、倉俣の設計によるアクリルの家具と照明が中心である。1988年のミス・ブランチは透明な樹脂の板に造花を封じた椅子で、この製作元として同社の名が広く知られるようになった。1991年に設計されたベッド《ラプータ》も同社の製作である。メンフィスのために1983年に設計されたテーブル《キョート》は、メトロポリタン美術館の収蔵品が同社の製作と記録されている。

2010年以降は、鈴木清巳の設計によるカーボンファイバーの椅子《シェルシュ・ミディ》《ゼフィール》を自社で発表している。

収蔵

同社が製作した倉俣の作品は、ニューヨーク近代美術館(ミス・ブランチ、収蔵番号202.1998)、サンフランシスコ近代美術館(同、91.27.A-E)、メトロポリタン美術館(キョート・テーブル、2017.203a–d)、ブリュッセルのデザイン美術館(ミス・ブランチ、PLAS.1036)が収蔵している。M+(香港)は同社を製作者とする作品を6点収蔵しており、《ラプータ》は収蔵番号2016.762である。

現在の展開

現在も六本木に本社を置き、内装仕上工事を主体に営業している。所蔵する倉俣の作品は、2023年から2024年の回顧展のように、国内の美術館へ貸し出されている。

基本情報

設立 1969年
代表 石丸隆夫
本社所在地 東京都港区六本木
事業内容 建築・内装仕上工事、家具・什器の製作
法人番号 9011301000638

Reference

Ishimaru Co. Ltd. | Makers | M+
https://www.mplus.org.hk/en/collection/makers/ishimaru-co-ltd/
トーク「倉俣史朗と格闘した職人たち」| DOCUMENTS | 21_21 DESIGN SIGHT
https://www.2121designsight.jp/documents/2011/03/post-7.html
「CARBONE LUMIÈRES」展、いよいよ5月13日(金)スタート | Webマガジン「AXIS」
https://www.axismag.jp/posts/2016/05/62563.html
倉俣史朗 | NPO法人建築思考プラットホーム PLAT
https://npo-plat.org/kuramata-shiro.html
倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙 | 京都国立近代美術館
https://www.momak.go.jp/Japanese/exhibitionarchive/2024/459.html
Shiro Kuramata | Kyoto Table | The Metropolitan Museum of Art
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/747429
Laputa (designed 1991) - Kuramata Shiro, Ishimaru Co. Ltd. | Objects | M+
https://www.mplus.org.hk/en/collection/objects/laputa-2016762/
Miss Blanche | Design Museum Brussels
https://collection.designmuseum.brussels/en/miss-blanche
ABOUT | ATELIERS NÉ UN
https://neun-design.com/about/
株式会社イシマル | Gビズインフォ
https://info.gbiz.go.jp/hojin/ichiran?hojinBango=9011301000638