スポークバックソファは、デンマークを代表する家具デザイナー、ボーエ・モーエンセンが1945年にデザインした革新的なソファである。英国の伝統的なノールセティ(Knole Settee)を現代的に再解釈したこの作品は、チェーズロングと対話型ソファの機能を一つの家具に融合させた画期的なデザインとして知られる。
1945年、コペンハーゲン家具職人ギルド展示会において、モーエンセンは親友であるハンス・J・ウェグナーとともに「未来の住まい」と題した展示を行った。その中心的存在として発表されたスポークバックソファは、当時としてはあまりにも洗練されすぎていたため、戦後の控えめな文化には受け入れられず、実際の生産は1963年まで待たなければならなかった。しかし、その後フレデリシア・ファニチャーやフリッツ・ハンセンによって製造が開始されると、デンマークモダンデザインを象徴する家具の一つとして国際的な評価を確立することとなった。
特徴・コンセプト
スポークバックソファの最大の特徴は、革製ストラップによって角度調整が可能な片側のアームレストにある。このアームレストを下げることで、通常のソファからデイベッドへと形態を変化させることができ、使用者のニーズに応じて柔軟に対応する機能性を実現している。この可変機構は、17世紀英国の貴族階級で使用されていたノールセティの伝統を現代的に解釈したものであり、モーエンセンの歴史的家具への深い理解と尊敬を示している。
デザイン哲学において、モーエンセンは「家具は人々に奉仕し、人々を主役にするべきであり、人々を家具に適応させるべきではない」という信念を持っていた。スポークバックソファはまさにこの思想を体現しており、露出した木製構造によって各部材の接合部や製作技術を明らかにし、正直で誠実なものづくりを追求している。クッションさえも目に見えるストラップで固定されており、装飾ではなく機能と構造の美しさを前面に打ち出した、モダニズムの理念に忠実な作品となっている。
無垢材のフレームにジュート織りのシート、取り外し可能なクッションという構成は、長期的な使用とメンテナンスを考慮した設計である。クッションを交換することで常に新しい状態を保つことができ、世代を超えて使い続けられる家具を目指したモーエンセンの実用主義が反映されている。
エピソード
1945年の夏、モーエンセン家とウェグナー家は別荘で共に過ごした。この夏は第二次世界大戦のデンマーク占領が終わった直後であり、天候は雨がちで湿度が高かった。しかし、この不運な天候は幸運にも、モーエンセンに初めての古典的家具作品を生み出す時間を与えることとなった。この別荘での滞在中に、スポークバックソファの基本コンセプトが誕生したのである。
モーエンセンとウェグナーは、1945年の家具職人ギルド展示会に向けて共同で作品を制作した。展示後、二人はデザインの権利を分け合うことに合意し、モーエンセンがスポークバックソファの権利を、ウェグナーが対となるアームチェア(1788チェア)の権利を取得した。この友情に基づく協力関係は、デンマークモダンデザインの黄金時代を象徴する美しいエピソードとして語り継がれている。
1945年の展示会では、このソファは「未来の家具」の提案として発表されたが、当時の観客にとってはあまりにも前衛的であり、商業的な成功には至らなかった。戦後の質素な時代において、露出した構造や大胆なデザインは、人々が求める控えめな美意識とは合致しなかったのである。しかし、1960年代に入り、モダンデザインへの理解が深まると、ついにフリッツ・ハンセンが1963年に生産を開始し、その真価が認められることとなった。
評価
スポークバックソファは、今日ではデンマークモダンデザインを代表する作品の一つとして、世界中の主要なデザインミュージアムに収蔵されている。その歴史的価値は、単なる美的成功を超えて、デザイン思想の転換点を示す作品として評価されている。伝統的な家具形式を近代的な機能主義と融合させたこのソファは、モーエンセンの師であるコーレ・クリントの古典主義的アプローチと、新しい時代の要求との架け橋となった。
デザイン史家たちは、スポークバックソファを「ノールセティの現代的再解釈」として位置づけている。17世紀の英国貴族の家具が持っていた威厳と機能性を、20世紀の民主的な住空間に適応させた点において、モーエンセンの卓越した歴史理解と創造性が高く評価されている。また、このソファは発表から製品化まで18年を要したという事実そのものが、先見的なデザインの証左として語られている。
現代においても、スポークバックソファは数多くの模倣品を生み出すほどの影響力を持ち続けている。その普遍的な美しさと実用性は時代を超えて支持され、デンマーク家具の卓越性を示す象徴的存在として、国際的なデザイン市場において確固たる地位を築いている。
受賞歴
スポークバックソファ自体に対する個別の受賞記録は明確ではないが、デザイナーであるボーエ・モーエンセンは、その生涯において数々の栄誉を受けた。1950年にエッカースベルグ・メダルを受賞し、1971年にはデンマーク家具賞を授与された。1972年、彼の死の直前には、C.F.ハンセン・メダルを受賞し、ロンドンの王立芸術協会から名誉王室デザイナーの称号を授与されている。これらの受賞は、スポークバックソファを含むモーエンセンの作品群全体に対する評価を反映するものである。
基本情報
| デザイナー | ボーエ・モーエンセン(Børge Mogensen) |
|---|---|
| デザイン年 | 1945年 |
| 製造開始年 | 1963年 |
| メーカー | フレデリシア・ファニチャー(Fredericia Furniture)、フリッツ・ハンセン(Fritz Hansen) |
| モデル番号 | BM 1789 |
| サイズ | 高さ86cm × 幅160cm × 奥行76.5cm、座面高40cm |
| 素材 | 無垢材フレーム(ビーチ材)、ジュート織りシート、HR高反発フォームクッション、ファブリックまたはレザー張地、革製ストラップ |
| 特徴 | 革製ストラップによる可変式アームレスト、露出構造デザイン、取り外し可能クッション |