イームズ ハングイットオールは、1953年にチャールズ&レイ・イームズによってデザインされた壁掛けコートラックである。鮮やかな色彩の木製ボールとホワイトのスチールワイヤーフレームが織りなす造形は、機能性と遊び心を見事に融合させたミッドセンチュリーモダンの傑作として、今日においてもなお世界中のインテリア愛好家から高い支持を得ている。

特徴・コンセプト

ハングイットオールは、子どものためのデザインというイームズ夫妻の探求から生まれた作品である。当時、夫妻はティグレット・エンタープライズ社のプレイハウス・ディビジョン向けに、子ども用家具や玩具のデザインを手掛けており、本作もその一環として誕生した。

白く塗装されたスチールワイヤーのフレームに、赤、黄、青、オレンジ、緑など多彩な色に塗られた木製の球体が14個取り付けられている。各ボールはフックとして機能し、コートや帽子、バッグなどを掛けることができる。この構成は、子どもの目線に立った親しみやすさと、大人の空間にも馴染む洗練されたフォルムを両立させている。

イームズ夫妻は「最良のものを、最多の人々に、最小の価格で」という理念のもと、工業生産技術を活用したデザインを追求した。ハングイットオールもまた、シンプルな素材と製造工程によって生み出される量産可能な製品でありながら、その造形美は芸術作品としての価値を有している。

エピソード

ハングイットオールは当初、子ども部屋のための製品として企画された。しかし発売後まもなく、そのポップで明るいデザインは大人たちの心をも捉え、オフィスや玄関、リビングルームなど、あらゆる空間で愛用されるようになった。イームズ夫妻のデザインが持つ普遍的な魅力を象徴するエピソードといえよう。

オリジナルの製品は、ティグレット・エンタープライズ社によって製造・販売されていたが、同社の事業撤退後、一時期は生産が中断された。その後、ハーマンミラー社およびヴィトラ社がイームズ夫妻のデザインを正式に継承し、現在に至るまで忠実に再生産を続けている。

2013年には発表から60周年を記念し、ヴィトラ社から限定カラーバリエーションが発売されるなど、時代を超えて新たな解釈が加えられ続けている。

評価

ハングイットオールは、20世紀を代表するデザインアイコンとして国際的に高く評価されている。ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界各国の美術館やデザインミュージアムにおいて、その収蔵品として永久保存されている。

デザイン史において本作は、ミッドセンチュリーモダンの精神を体現する作品として位置づけられている。工業デザインにおける機能主義と、生活に彩りをもたらす装飾性の調和という、イームズ夫妻が生涯をかけて追求したテーマが、このシンプルなコートラックに凝縮されているのである。

また、子どものためのデザインという視点から生み出されながら、世代を超えて愛される普遍性を獲得した点も、本作の特筆すべき功績である。

受賞歴・認定

  • ニューヨーク近代美術館(MoMA)パーマネントコレクション収蔵
  • ヴィトラ・デザイン・ミュージアム コレクション収蔵
  • 各国デザインミュージアムにおける展示・収蔵多数

基本情報

デザイナー チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames)
デザイン年 1953年
メーカー ハーマンミラー(Herman Miller)/ ヴィトラ(Vitra)
オリジナル製造 ティグレット・エンタープライズ社(Tigrett Enterprises)
素材 スチールワイヤー(パウダーコート仕上げ)、メープル材(ラッカー塗装)
サイズ 幅508mm × 高さ368mm × 奥行152mm
フック数 14個
カテゴリー 壁掛けコートラック / ウォールハンガー