概要

トリップ トラップは、ピーター・オプスヴィックが1972年に設計したハイチェアである。座面と足置き板の高さと奥行を変えられるため、子どもの成長に合わせて調整でき、大人になっても使える。ノルウェーのストッケが製造している。

特徴・コンセプト

座面と足置きを別々に動かす

背もたれの高さはテーブル天板に合わせて固定される一方、座面と足置き板は使う人の体格に応じて位置を変えられる。座面だけを上げると足が届かなくなり、姿勢が不安定になる。両方を独立して調整できることで、どの体格でも足が足置き板に着いた状態を保てる。足裏が支えられていれば、座位は安定する。

動けることを前提にする

オプスヴィックは、最良の座位姿勢とはしばらくすると次の姿勢である、という考えを持っていた。トリップ トラップの足置き板が大きくとられているのは、子どもが座ったまま姿勢を変えたり、自分で上り下りしたりできるようにするためである。身体を拘束して安全を確保するのではなく、動ける範囲を用意したうえで安定を保つという設計方針をとっている。

目線の高さを合わせる

この椅子の出発点は、子どもと大人が同じテーブルに着けるようにすることにあった。座面を大人と同じ高さまで上げられるため、食卓での目線が近くなる。子ども用の低い椅子では、会話に加わりにくい。高さを調整できることは、姿勢の問題であると同時に、同じ食卓に着くための条件でもある。

構造と素材

主材はヨーロッパ産のブナ材で、一部の仕様ではオーク材も用いられる。左右の側板が斜めに立ち上がり、座面と足置き板を渡した構成は、部材の数を抑えながら曲げに耐える形になっている。塗装は水性のものが用いられ、汚れを拭き取れる。

側板はZ字を描く。脚を垂直に立てれば接地部が座面の真下に来るが、Z字なら床に接する部分が後方へ張り出す。子どもが机を押して身体を後ろへ倒しても、接地の範囲内に重心が留まる。

塗装には水性のものを用いる。子どもが口に触れる可能性を踏まえた選択にあたる。木材はFSC認証林などから調達され、各国の安全基準の認証を受けている。

エピソード

設計のきっかけは、オプスヴィック自身の子育てにあった。息子のトールが従来のハイチェアを卒業したものの、大人用の椅子にはまだ小さすぎるという状況に直面し、適切な椅子が市場にないことに気づいたことから開発が始まっている。

発売から50年が経過した2022年には、50周年を記念したモデルが限定で発売された。別売りのアクセサリーとして新生児用のニューボーンセットやベビーセットが加わり、使用開始年齢が生後間もない時期まで広がっている。

評価と影響

成長に応じて高さを調整できるという考え方は、今日では多くの子ども用家具に採用されている。パリのポンピドゥー・センターでは、子ども向けデザインを扱う展示において、成長に合わせて変化する椅子の例として紹介された。

美術館コレクション

ニューヨーク近代美術館は、ラッカー塗装のブナ材による1972〜73年のトリップ トラップを収蔵番号778.2011で登録している(2011年、製造元からの寄贈。寸法787 × 457 × 495mm)。ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は1972年の個体を収蔵番号B.209:1 to 4-1999で、1979年の個体を収蔵番号W.37-2016で登録している。

基本情報

名称 トリップ トラップ / Tripp Trapp
デザイナー ピーター・オプスヴィック(Peter Opsvik)
ブランド ストッケ(Stokke)
発表年 1972年
デザインの成立国 ノルウェー
分類 キッズチェア/ハイチェア
サイズ 幅460 × 奥行490 × 高さ790mm
重量 約7kg
耐荷重 136kg
主要素材 ヨーロッパ産ブナ材(一部仕様でオーク材)、水性塗装
調整 座面と足置き板の高さ・奥行を個別に調整可能
使用年齢 生後6か月頃〜大人(アクセサリー使用で新生児から)
収蔵 ニューヨーク近代美術館(778.2011)、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(B.209:1 to 4-1999、W.37-2016)

Reference

Tripp Trapp Chair | MoMA
https://www.moma.org/collection/works/150067
Tripp Trapp | Victoria and Albert Museum
https://api.vam.ac.uk/v2/objects/search?q=B.209-1999