概要

ピーター・オプスヴィック(1939-2024)は、ノルウェーの家具デザイナーである。1972年に設計したトリップ トラップは、座板と足板の位置を変えられる子供用の椅子で、成長に応じて同じ椅子を使い続けられる。座る姿勢を一つに固定しないという条件を、以後の椅子にも一貫して適用した。

バイオグラフィー

1939年3月25日、ノルウェーのオーレスンに生まれた。ベルゲンの美術工芸学校で家具の設計を学び、1964年に修了している。

オスロで実務を経たのち、1970年に自身の事務所を開いた。

1972年、息子が食卓で使う椅子を必要としたことからトリップ トラップを設計した。ストッケが1972年から生産している。

以後も座る姿勢を扱う椅子を設計し、1979年のバランス・ヴァリアブル、1984年のグラヴィティなどを発表した。2024年に没している。

デザインの思想と方法

オプスヴィックが繰り返し扱ったのは、人は同じ姿勢を長く保てないという事実である。椅子が一つの姿勢しか許さなければ、身体には負担がかかる。彼が設計したのは、姿勢を変えられる椅子である。

成長に合わせて寸法を変える

トリップ トラップは、座板と足板を側板の溝に差し替えることで高さと奥行きを変えられる。乳児期から成人まで、同じ椅子を使い続けられる。子供用の椅子を買い替えるという前提を外している。

足を床につける

子供が大人用の食卓で座る場合、足が床に届かない。トリップ トラップの足板は、この位置を確保するためのものにあたる。足が支えられていれば、姿勢も安定する。

姿勢を固定しない

1979年のバランス・ヴァリアブルは、膝を載せる台と座面を持つ椅子である。背もたれを持たないため、座る人が自分で姿勢を保つ。動くことを妨げないという方向にあたる。

用途を年齢で区切らない

トリップ トラップは子供用として設計されたが、寸法を変えれば大人も使える。年齢で製品を分けるという前提を持たない。

代表作にみる方法

トリップ トラップ(1972年、ストッケ)

座板と足板を側板の溝に差し替えることで、高さと奥行きを変えられる椅子である。乳児期から成人まで同じ椅子を使い続けられる。足板は子供の足が床に届かない問題への対応にあたる。ニューヨーク近代美術館とV&Aが収蔵している。→トリップ トラップ

バランス・ヴァリアブル(1979年、ストッケ)

膝を載せる台と座面を持つ椅子である。背もたれを持たないため、座る人が自分で姿勢を保つ。動くことを妨げないという方向にあたる。

グラヴィティ バランス(1984年、ストッケ)

4段階に角度を変えられる椅子である。座る、寄りかかる、横になるという複数の姿勢が同じ椅子で成立する。

ガーデン(1985年、ストッケ)

複数の要素を組み合わせて構成する座具の系列である。姿勢を一つに定めないという条件を、別の形式で扱っている。

キャピスコ(1984年、ホーグ)

鞍の形の座面を持つ事務用の椅子である。前傾でも後傾でも座れ、腰の位置を変えられる。長時間の作業で姿勢が固定されることへの対応にあたる。

評価と影響

オプスヴィックは一般に、座る姿勢を一つに固定しないという条件を一貫して扱った設計者と評価されている。人は同じ姿勢を長く保てないという前提が、その根拠にある。

トリップ トラップは1972年の設計で、以後50年以上にわたり生産が続いている。子供用の椅子を買い替えるという前提を外した点が、その持続を支えている。

ストッケとの協働は長く、同社の製品の性格を決めた立場にあたる。事務用の椅子でも同じ方向をとっている。

収蔵

以下の収蔵が確認できる(MoMA=ニューヨーク近代美術館、V&A=ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館)。

  • MoMA トリップ トラップ チェア(1972-73年) 収蔵番号 778.2011
  • V&A トリップ トラップ(1972年) 収蔵番号 B.209:1 to 4-1999
  • V&A トリップ トラップ チェア(1979年) 収蔵番号 W.37-2016

Met、AIC では該当する収蔵は確認できなかった。ノルウェー国内の館については照合手段がない。

作品一覧

発表年 区分 作品名 ブランド
1972年 椅子 トリップ トラップ Stokke
1979年 椅子 バランス・ヴァリアブル Stokke
1984年 椅子 グラヴィティ バランス Stokke
1984年 オフィスチェア キャピスコ HÅG
1985年 座具 ガーデン Stokke
1970-2010年代 家具 椅子・座具の各種 Stokke ほか

プロフィール

生没年 1939年3月25日〜2024年
出身地 ノルウェー・オーレスン
国籍 ノルウェー
活動拠点 オスロ
分野 家具、オフィスチェア
主な協働ブランド Stokke、HÅG

Reference

Peter Opsvik(公式)
https://www.opsvik.no/
Stokke
https://www.stokke.com/
The Museum of Modern Art Collection
https://www.moma.org/collection/works/2325
Victoria and Albert Museum Collections
https://collections.vam.ac.uk/